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患者のための医院譲渡「真心いただいた」協会が“守り神”に(小柳浩子さん)

患者のための医院譲渡「真心いただいた」協会が“守り神”に(小柳浩子さん)

患者のための医院譲渡「真心いただいた」協会が“守り神”に

歯科医師としての“引退”に着目した本企画。すでに歯科医療の第一線を退いた先生らにお話を伺い、引退を決意した理由や医院承継、閉院の苦労などを深堀りする。

今回は、2024年で閉院した小柳浩子先生に、患者のために奔走した医院譲渡について聞いた。

―引退を決めた理由から教えてください。

数年前に自分の好きな義歯中心の治療に変え、患者さんに喜ばれながら楽しく治療して、並行して母の介護をしていました。その頃にコロナ禍で患者さんが激減し、同時に開業から20年が過ぎていたのでコンプレッサーバキュームの入れ替えを勧められ、そんな費用は捻出できない状況でした。その時に母が入院したり、母が入所していた介護施設のミスで大腿骨骨折をしたりと、精神的に沈んでいる状態でした。また、視力の衰え、ひどい痛みの五十肩、膝蓋骨骨折、帯状疱疹と、身体の不調が続き、年配の患者さんにも心配される始末でした。医院は、患者数が激減したままで赤字が続き、そんな時に母も亡くなり、「これ以上、頑張る必要はない」と閉院を決めました。ただ、患者さんの診療を継続して診てくれる優しい先生を探そうと、ネットで情報を集め始めました。

 

―譲渡はどのように進めましたか。

患者さんを不安にさせないよう、譲渡専門の業者さんに後継者を探してもらいました。ただ、昨年9月に依頼をしたものの、12月での閉院を決めていたので現実的には譲渡は難しいかもしれないと考え、医療機器の廃棄業者も同時に探しました。すると、諦めかけていた11月頃に、紹介業者さんが院内の見学を希望する先生を連れてきてくれました。誠実で物腰の柔らかい先生で、1時間ほど院内を見ていただきました。その後も3回ほどいらっしゃり、院内を気に入っていただき、正式に譲渡契約を結びました。私は良い業者さんを見つけられてとても幸運だったと思います。

―患者さんのための譲渡に奔走されたのですね。

これまで患者さんには真心をいただきました。信頼していただき、患者さんたちといろいろな不安なことや、喜び、悲しみを共有してきました。新たにお若い先生のもとで、安心して通っていただければこんなにも嬉しいことはありません。

―譲渡にあたり気を付けていたことはありますか。

業者さんから3年分の確定申告や減価償却に関する書類を求められることが多かったです。準備しておくと、使える場面があるかもしれません。

―これからはどのように過ごされますか?

今まで患者さんたちには、治療に加えて、医科の医療機関を紹介したり、また診療以外の面でも、生活に関わるいろいろな情報をお伝えしたりしてきました。今度は福祉の勉強をして障がいのある方々の手助けをして、将来的にはグループホームを作るのが夢です。

―協会との関わりを振り返っていかがですか。

勤務医をしていた時に、院長から保険医協会を勧められ入会しました。新規指導や、診療報酬改定のたびにわかりやすい解説と書籍「歯科保険診療の研究」(通称「赤本」)をいただき、お世話になりました。また、オンライン資格確認システムの導入やオンライン請求のやり方、支援金の申請方法まで、一人で付いていけずに困った時には協会に相談して、何とか乗り越えることができました。保険医協会が守り神になって23年間無事に診療を終えることができました。また、これから受け取る公的年金としては、国民年金しかなく、若い頃から少しずつ積み立ててきた保険医年金が生活の糧となるので、頼りにしています。これからも保険医協会の皆さまには新しい情報を先生方にわかりやすく教えていただき、歯科医療界が繁栄されますことをお祈りしております。

―ありがとうございました。

過去の連載はこちら<退き際の思考 歯科医師をやめる>

第118回歯科医師国家試験/2,136人が合格  合格率は70.3%に

第118回歯科医師国家試験/2,136人が合格 合格率は70.3%に

厚生労働省は3月14日、第118回歯科医師国家試験(2月1・2日実施)の合格者を発表した。
それによると、受験者数は3,039人で、合格者は2,136人(合格者を男女別で見ると、男性1,114人、女性1,022人)となっている。合格率は70.3%で、前回の66.1%と比べると4.2ポイント増。過去最低の61.6%を記録した第115回以降で見ると、最も高い水準となった。国が歯科医師の減少に対して、方向性を変えたと推察される。これまでの合格率が軒並み60%台で推移していたことを勘案すると、今回の結果は受験者には喜ばしいことといえよう。
◆男女別の合格率
また、男女別合格率で見ると、男性の合格率は64.5%、女性の合格率は78.0%で、女性が男性を13.5ポイント上回っている。
◆新卒者の受験状況
次に、新卒者をみると、受験した1,973人のうち1,657人が合格し、合格率は84.0%となった。既卒者の場合は、1,066人のうち479人が合格、合格率は44.9%で、例年通り、新卒者の合格率が高くなっている。
今回の合格者の詳細は、厚労省ホームページを参照してほしい(下記URLから入れます)。
➜https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/goukaku.html

◆合格基準
なお、歯科医師国家試験の合格基準については、第116回から新たな合格基準が採用され、3つの領域がA・Bの2つになった。第118回歯科医師国家試験の合格基準は、一般問題(必修問題を含む)を1問1点、臨床実地問題を1問3点とし、あとは以下の通りで、領域A・B、および必修問題の3つで得点をクリアすれば合格となる。
⑴領域A(総論)58点以上/97点
⑵領域B(各論)236点以上/363点
⑶必修問題64点以上/80点
※ただし、必修問題の一部を採点から除外された受験者にあっては、必修問題の得点について総点数の80%以上。
◆歯科衛生士・歯科技工士 の国試合格者
3月26日には、第34回歯科衛生士国家試験および第10回歯科技工士国家試験の合格者の発表が行われた。歯科衛生士の合格者数は7,300人、歯科技工士の合格者は684人であった。

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)4月1日号

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)41日号

こちらをクリック▶「東京歯科保険医新聞」2025年(令和7年)4月1日号

【お詫び】本紙「東京歯科保険医新聞」第661号(4月1日号)の7面記事「3つのポイントで全身疾患等回避を/医療安全講習会で雨宮啓氏が強調」にて、以下の表記誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。※ホームページでは、訂正済みの紙面を公開しています。
誤:アドレナリン1.8mlCt
正:アドレナリン含有リドカイン塩酸塩製剤1.8mlCt

 【新聞4月号】

 1面】

  1.高額療養費制度問題 患者を守れ 「生きることを諦めることに」

  2.健康保険証発行終了後も低いマイナ保険証の利用率 窓口業務増大を訴える声も

  3.協会が皆さまの助けに 未入会の先生をご紹介ください 組織部長 福島 崇

  4.東京歯科保険医協会第53回定期総会ご案内

  5.「探針」

  6.ニュースビュー

 2面】

  7.歯科診療報酬/期中改定・4月からの変更点 口腔機能指導加算など引き上げ、算定区分を再編

 3面】

   8.物価・人件費高騰が深刻な問題に/「物価高騰に関する医療機関の緊急調査」集計結果で明らかに

  9.「貯金切り崩し、治療と生活」(1面から続く)

10.東京都 医療機関緊急対策支援金15万円/実績報告期限は44日 お忘れなく!

 4面】

11.経営・税務相談Q&A No.427「歯科医師・歯科衛生士の新規採用の届出と注意事項」

12.書籍「2025年版保険医の経営と税務」会員は1冊無料/2025年度最新の税務対応版を発行!

13.分科会・ポスターセッション演題募集/第40回 保団連医療研究フォーラム

14.4月会員無料相談のご案内

15.デンタルブックPR

 5面】

16.研究会・行事ご案内

17.春の会員優待PR

 6面】

18.家計が厳しい今こそ、患者負担の軽減を/受診抑制打開へ向け青い歯科署名” 420日までにご返送ください

 7面】

19.3つのポイントで全身疾患等回避を/医療安全講習会で雨宮啓氏が強調

20.生産性向上・職場環境整備等支援事業の案内を協会ホームページに掲載

21.施設基準を新規届出するために/歯初診や外安全・口管強など施設基準講習会を開催

22.新版を無料配布中/大好評!「知って得する」パンフ/意外と知らない控除・減免・払い戻しがまる分かり

23.特集は追いつめられる歯科医師たち「月刊保団連」4月号

 8面】

24.教えて!会長!! Vol93/接着カンチレバー装置とは

25.6回メディア懇談会/「時代に逆行」高額療養費制度問題

26.IT相談室/AIとは何か

 9面】

27.症例研究「CAD/CAMインレー修復に対する光学印象法について」

 10面】

28.震災と歯科医師~東北・能登の現状~/能登・被災診療所のいま(後編)「被災1懸念は高齢避難者の口腔機能低下」石川県保険医協会副会長:平田米里(平田歯科医院)「石川県創造復興プラン」提言の賛同へのお願い(協会理事:矢野正明)

29.会員投稿「声」/保険医がワイン審査 売上の一部は紛争地へ「第1回ドクターアワード」

 11面】

30.118回歯科医師国家試験/2136人が合格 合格率は70.3%に

31.神田川界隈「診療報酬の決め方」(理事・松島良次/目黒区)

32.理事会だより

33.通信員便りNo.149

34.協会活動日誌

 12面】

35.退き際の思考 歯科医師をやめる(小柳浩子さん)「患者のための医院譲渡『真心いただいた』協会が守り神に」

36.春の共済募集キャンペーン中!/会員だけの特別な制度にご加入ください!

「能登・被災診療所のいま(後編)/ 被災1年―懸念は高齢避難者の口腔機能低下」

「能登・被災診療所のいま(後編)/ 被災1年―懸念は高齢避難者の口腔機能低下」

 石川県保険医協会副会長  平田 米里/平田歯科医院

 

3月11日、東北地方を中心に甚大な被害をもたらした東日本大震災から14年が経過した。2024年は元旦に能登半島地震が発生し、石川県保険医協会会員の歯科診療所が被災した。地域医療の一端を支える各地の歯科保険医は、こうした災害とどのように向き合ってきたのか。宮城県保険医協会・井上博之理事長、石川県保険医協会・平田米里副会長に綴ってもらい、今回は平田氏の後編を掲載する。

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◆地道な活動で被災会員の傷を

この1年、石川県保険医協会はどのような活動をしてきたのでしょうか?義援金を届けるばかりではなく、政府広報資料の迅速かつ正確な情報提供に努めてきました。それも大事ですが、今、私が思うに、協会事務局による会員の安否確認に始まり、被害状況の聞き取り、その後の状況把握など、何度も現地に足を運び、被災した会員と直接言葉を交わしながら、強い関係性を構築してきたことが最も大切な活動であったのではないでしょうか。こうした地道な活動によって被災した会員の心の傷を少しは癒すことができたのではないかと思っています。

後に、能登総合病院の口腔外科医の危惧を紹介します。彼は言います。「確かに発災直後は歯科診療車に代表されるような緊急対応が必要だった。1年を経過した今、仮設暮らしの通院困難な高齢者の口腔機能低下が心配だ。その分野の歯科需要は、今後の課題として浮上してくる。対応を準備しなければならない」―と。

能登には仮設住宅で暮らす人のほかに、遠方に避難したまま、意に反して帰宅できないでいる人も多い(事実、避難所の多くは既に閉鎖され、現在は仮設住宅に移っている方がほとんど。石川県内では202412月末時点で少なくとも2699人が仮住まいや避難を余儀なくされている)。石川県の創造的復興プランにみられるような抑制的予算に縛られることなく、今こそ、能登に住み続けたいと願う人に、国が本来の責務を果たすべきでしょう。(完)

輪島市の仮設住宅―。現在もなお、多くの人々が仮設住宅での生活を余儀なくされている

2024年9月21日の能登半島豪雨後の輪島市役所前の状況

 

「石川県創造復興プラン」提言の賛同へのお願い

「『石川県創造復興プラン』検討会議」は2024731日、石川県が策定した「石川県創造的復興プラン」に対して「提言」をまとめ、石川県に提出しました。

この提言には「住み続ける権利の保障」=「被災者・地域住民が、どこに、だれと住むか、どのように住むかを自己決定し、自分らしく生き、自己の願い・希望を実現することを人権として保障する」という視点から、県復興プランに対して9項目の提言を行っており、東京歯科保険医協会も団体として賛同しています。同検討会議では、広く賛同者を募集しています。ご賛同いただける方は、下記URLからお申し込みをお願いします。

「石川県創造的復興プラン」に対する提言への賛同はコチラ

<当協会・矢野理事より>

東日本大震災の時と違い、能登半島地震に対して具体的には何もすることができませんでした。1年以上経過しても復興への道は見えてきません。せめて被災地域への一助となればと思い私も復興プランの提言に賛同しました。ぜひ皆さまもご協力ください。

【IT相談室】AIとは何か/医療分野への波及・影響は…

【IT相談室】AIとは何か/医療分野への波及・影響は…

AI」と聞くと何を思い浮かべるでしょうか。本物そっくりのニセ動画?プロも敵わない囲碁や将棋などのボードゲーム?「AIでなくなる仕事ランキング」などの特集記事?

今回は、なんとなくドキドキするけれど、具体的なイメージが定まらないAIと歯科の関わりについて解説していきます。

◆AIは「知能」か

AIは、「人工知能」(Artificial Intell-igence)の略となります。正確で疲れを知らないコンピューターですが、指示した通りの動作しかしない点は機械やロボットと変わらず、人工知能とは呼べません。

例えば、製品などを検品する機械は以前からありましたが、AI出現以前は色や大きさなど、数値化できる基準で良品と不良品を区別していました。

医療の世界では、AIの実用例として読影支援があります。AIは、数値化や数式化できない微妙な違いを読み取り、注意すべきかどうかを「判断」することで、診断を支援します。

◆17年にブレークスルー

2017年に発表された、ビートルズの曲名をもじった「Attention Is All You Need」という画期的な論文により、AIは一気に実用化されました。

AIは何十年も研究されてきましたが、技術的なブレークスルーが起きたことで、大きく進化しました。過去のAIやプログラミングの考え方とは大きく異なり、実用に耐える技術になりました。

◆歯科での応用例

歯科の世界でもAIが取り入れられています。また、診療以外でも活用できるAI関連のサービスも多くあります。

第6回メディア懇談会「時代に逆行」高額療養費制度問題/メディア側は負担引き上げ問題に危機感

第6回メディア懇談会 「時代に逆行」高額療養費制度問題/メディア側は負担引き上げ問題に危機感

「命の選別につながる話」「国際的な趨勢を見ても時代に逆行した制度」と参加者から厳しい言葉が相次いだ。314日、協会が開催した第6回メディア懇談会では高額療養費の患者負担引き上げの問題について、報道関係者と活発な議論が交わされた。

題解説に当たった本橋昌宏副会長は、協会が石破茂総理大臣、福岡資麿厚生労働大臣に宛てた自己負担限度額引き上げ撤回の要請書などをもとに、患者らが厳しい状況に置かれかねないと、危機感を示した。参加者からは、「借金して窓口負担を払わなければならない。ほとんどの人に『治療を受けない』という選択肢が浮かぶ世界になってしまう」との意見や、諸外国の事例と比べても「外すことができない制度」と、高額療養費制度の重要性について触れる意見があった。

一方で、高額な費用がかかる治療が患者にもたらす効果については「追及されていないと思う。その治療が本当に意味があるのかどうか、チェックしてはどうか」との意見もあった。

また、厚生労働省による生産性向上・職場環境改善を目的とした給付金(18万円)や、東京都による物価高騰対策の支援金(15万円)も議題として取り扱った。「医療機関にとって1518万円はどんな意味があるのだろうかと思う。それがなければやっていけないという気持ちも分かるが、こうしたことを毎回繰り返していて良いのだろうか。医療制度の根幹が機能していくのだろうか」と単発的な支援金の在り方を疑問視する声もあがった。

 この日は44名のメディアが参加し、早坂美都副会長が司会を務めた。

教えて!会長!! Vol.93/接着カンチレバー装置とは

教えて!会長!! Vol.93/接着カンチレバー装置とは

Q 2024年度診療報酬改定で新設された「接着カンチレバー装置」とは。

A 新たに保険収載された「接着カンチレバー装置」は、保険では、M017ポンティックの算定留意事項通知(6)のイの(ト)に「隣接歯などの状況からやむをえず、支台歯1歯およびポンティック1歯による接着カンチレバー装置を製作する場合は、切歯(上顎中切歯を除く)の1歯欠損症例において、支台歯を生活歯に求める場合に限り認められる」と記載されました。なお、24426日付け厚生労働省保険局医療課の事務連絡「疑義解釈の送付について(その3)」の中で、「接着カンチレバー装置」は「ブリッジに該当する」と明記されました。この事務連絡前の同年41日に公益社団法人日本補綴歯科学会(以下、補綴学会)が通知した「接着カンチレバー装置の基本的な考え方」では、「いわゆる『ブリッジ』と近似した装置であるが、(中略)ブリッジとは異なる装置として定義する」と示されています。したがって、学術名称と保険用語が異なっていることになり、患者さんに説明する際などには注意が必要です。

また、同年412日の事務連絡「疑義解釈の送付について(その2)」では、「接着カンチレバー装置とは、次の要件を全て満たす補綴装置」とされています。前記と重複する点もありますが、次のように明記しています。

  • 支台装置が接着冠であること

②支台歯及びポンティックがそれぞれ1歯ずつの2ユニット型の接着ブリッジであること

③上顎中切歯を除く切歯の1歯欠損症例において,隣在歯等の状況からやむをえず製作するものであること

なお、「接着カンチレバー装置」の製作にあたっては、公益社団法人日本補綴歯科学会の「接着カンチレバー装置の基本的な考え方」を参考とすること

 

Q 補綴学会の「接着カンチレバー装置の基本的な考え方」とは。

A 補綴学会ホームページの「雑誌刊行物」→「診療ガイドライン」→「1.おしらせ」の中に「接着カンチレバー装置の基本的な考え方」の記載があります。適応症例がありましたら、確認することをお勧めします。以下に、抜粋して紹介します。

・適応症 保険診療における「接着カンチレバー装置」を適用できる症例は、上顎中切歯を除く切歯1歯欠損で支台歯となる隣在歯が健全な症例である。すなわち、装置の欠損部位(ポンティックとなる歯)は上顎側切歯と下顎切歯の計6歯のうちの1歯である。装置の数に制限は設けないが、2歯連続の欠損は本装置の適応症としない。このため、上顎2装置、下顎2装置が一口腔内における最大装置数となる。また、支台歯が歯周疾患に罹患していない症例であること、あるいは支台歯が歯周疾患に罹患している場合であって、歯周基本治療等が終了し、歯周組織検査により動揺および歯周組織の状態等から支台歯としての機能を十分維持しうるとの判断がなされた症例を適応症とする。

・禁忌症 従来の接着ブリッジでは、動揺が顕著である支台歯は、接着界面に剥離応力や回転応力が加わりやすくなるため、禁忌症例とされていた。しかしながら、接着カンチレバー装置では、ポンティックと支台装置が支台歯と共に動くため剥離応力や回転応力が加わりにくく、Ⅰ度程度の動揺度であれば許容しうる。ただし、咬耗が顕著である歯列、咬合が緊密である歯列、ブラキシズムを有する症例では予後不良と思われるため、他の補綴装置を検討するのが望ましい。齲蝕罹患傾向の高い患者は 装着後も口腔内に露出した歯面から齲蝕が発生する可能性があり、避けた方が良い。

・設計の基本原則と留意事項()保険診療における接着カンチレバー装置は支台装置1個とポホンティックからなる2ユニットとする。形成はエナメル質の範囲内を原則とする。形成デザインとしては、 ①可能な限り被着面積を大きくする、②歯質削除量は最小限とし、できるだけエナメル質の被着面とする、③歯肉側フィニッシュラインは歯周組織に悪影響を及ぼさないよう歯肉縁から1㎜程度離す、④切縁側のフィニッシュラインは支台歯の透明感を損なわないよう切縁から1㎜程度離す―などが原則であり、これらは接着ブリッジにおける形成デザインと共通する。

・使用材料 金属材料としては歯科鋳造用12%金銀パラジウム合金を用いる。ポンティックの前装材料としては健康保険適用の間接修復用コンポジットレジンを用いる。

・咬合調整 四接着カンチレバー装置は、咬合に配慮する必要がある。ポンティック部に過大な応力が加わると、支台歯への荷重負担は必然的にブリッジタイプ以上に大きくなる。本装置を咬合に関与させる場合、支台歯の負担が過重とならないよう、下記のような調整を行う。

①ポンティック部に早期接触がないように調整し、安定した咬合接触を与える。ただし無咬合とはしない

②ポンティック部の咬合接触は1点とする

③ポンティック部には偏心運動時の滑走部位をつくらない

④支台歯では、歯質とメタルフレームの双方に咬合接触を与える

以上ですが、抜歯後であれば欠損粘膜の治癒期間や審美性回復を目的とした暫間補綴についての記載がないことが残念です。さらに、レジン歯などを使用した暫間補綴が保険で評価されていないことが問題であることを付記しておきます。

東京歯科保険医協会

会長 坪田 有史

※「東京歯科保険医新聞」2025年4月号掲載

東京歯科保険医協会 第53回定期総会 ご案内

東京歯科保険医協会 第53回定期総会ご案内

第53回定期総会を下記の日程で開催します。参加方法などは本紙や協会ホームページなどで順次お知らせしますので、ご案内までお待ちください。なお、記念講演には、東京新聞記者の長久保宏美氏が登壇し、 「 マイナ保険証と保険証廃止―担当記者の2年間」をテーマにご講演いただく予定です。
◆開催日時◆
・2025年6月15日(日)午後2時30分~7時45分
・総会議事 午後2時30分~4時15分

・記念講演 午後4時30分~6時00分
      講 師:長久保宏美氏(東京新聞社会部編集委員)
      テーマ:「マイナ保険証と保険証廃止―担当記者の2年間」
・懇 親 会 午後6時15分~7時45分
・開催場所 TKP市ヶ谷カンファレンスセンター
      (住所:新宿区市谷八幡町8番地 TKP市ヶ谷ビル)

医科歯科連携研究会/糖尿病は歯科も含む統括管理が必須

医科歯科連携研究会/糖尿病は歯科も含む統括管理が必須

東京歯科保険医協会と東京保険医協会、千葉県保険医協会の共催による医科歯科連携研究会202422日、「糖尿病診療・歯周病対策の最前線」をテーマに開催。会場とWEB参加合わせ128名が参加した。

医科から栗林伸一氏(医療法人社団三咲内科クリニック理事長)、歯科からは山本龍生氏(神奈川歯科大学歯学部社会歯科学系 社会歯科学講座口腔衛生学分野教授)が講演した。

栗林氏は、「糖尿病診療の現状と対策~治療薬の画期的進歩と咀嚼機能維持を踏まえて~」と題し、最新の糖尿病患者のデータや管理、治療薬の特徴について解説した後、生活習慣病管理料(Ⅱ)の問題点に言及。歯科との関わりとして、咀嚼機能維持の重要性や、歯科の定期受診の有無により、糖尿病腎症の進行度に差があることなどを報告。糖尿病は歯科介入も含む統括的管理が必須とした。

栗原伸一氏

次いで、山本氏は、「歯周病対策の最前線予防の重要性と糖尿病を踏まえた医科歯科連携」と題し、歯周病の病変について解説した後、歯周病治療にはブラッシングが最も重要で有益であることを報告した。また、歯周病と全身疾患の罹患率と糖尿病の関係についてのガイドラインにも触れ、歯周治療の重要性を訴えた。

山本龍生氏

参加者からは、「糖尿病と歯周病の理解が深まった」「積極的な医科との連携が重要と再確認した」などの感想が寄せられた。

★なお、当日の講演は、デンタルブックで公開中。ぜひご覧ください。

https://dentalbook.tokyo-sk.com/member/public/MemberAuth_input

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)3月1日号

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)3月1日号

こちらをクリック▶「東京歯科保険医新聞」2025年(令和7年)3月1日号

【新聞3月号】

【1面】
  1. 東京の〝低い〞保険収益を改善へ 総枠拡大へ現場の訴えを届けよう
  2. マイナ保険証8割が「メリット感じず」 9割が健康保険証廃止に反対
  3. 石破総理・福岡厚労大臣に向け/高額療養費制度の見直し撤回を 要請書提出
  4. 東京歯科保険医協会 第53回定期総会のご案内
  5. 12.2以降のマイナ保険証窓口トラブル調査 ご協力のお願い
  6.「探針」
  7. ニュースビュー

【2面】
  8. 医療DX加算 4月から見直し
  9. 高額療養費制度/引き上げ対象は 全年代の全所得階層
10. 厚生労働省医療指導監査室/2025年度に高点数個別指導実施の公算 事務連絡で「高点数」の運用を明記
11. 歯科用貴金属改定情報(3月~) 金パラは引き上げに

【3面】
12. 総枠拡大には何が必要なのか? 会員調査から考える現制度の問題点
13. 確定申告個別相談会/定額減税、賃上げ促進税制にも解説
14. 確定申告は「定額減税」に注意! 記入を忘れずに

【4面】
15. 経営・税務相談Q&A No.426「採用に関するQ&A~新規採用の定着・解雇・退職~」
16. 東京都の医療機関向け支援金/追加受付の要望書を提出 〝煩雑申請〞で手続き漏れ医療機関も
17. 会員無料相談
18. 東京反核医師の会映画上映会のご案内 「生きて、生きて、生きろ。」
19.『杳かなる』上映情報

【5面】
20. 教えて!会長!! No.92/立憲民主党の「保険証復活法案」について                  
21. 通信員便りNo.148
22.  IT相談室「ステルスマーケティング その規制事例を見る/ネットの口コミとの向き合い方」 
23. 理事会だより
24. 協会活動日誌

【6面】
25. 研究会・行事ご案内
26. デンタルブックPR
27. 会員優待サービス

【7面】
28. 記念講演/東京反核医師の会が第37回総会 ガザ地域での医療支援の現状報告
29. 医科歯科連携研究会 糖尿病は歯科も含む統括管理が必須
30. 神田川界隈「台湾有事で全島避難?」(理事・矢野正明/板橋区)
31. マンガで学ぶ/アラフォーのリスク対策(健康編)

【8面】
32. 震災と歯科医師~東北・能登の現状~/「14回目のありがとう」宮城県保険医協会理事長:井上博之(松島海岸診療所)
33. 震災と歯科医師~東北・能登の現状~/能登・被災診療所のいま(前編)「再建襲った豪雨にも屈せず 地元のため奮い立つ会員」石川県保険医協会副会長:平田米里(平田歯科医院)

【IT相談室】ステルスマーケティング/その規制事例を見る/ネットの口コミとの向き合い方

IT相談室】ステルスマーケティング その規制事例を見る/ネットの口コミとの向き合い方

日本でも2023101日から、通称「ステマ規制」と呼ばれるステルスマーケティング規制が導入されました。2024年の違反事例をベースにご説明します。

ステマを一言で説明すると「やらせ記事」です。インフルエンサーと呼ばれる、いわゆる有名人に依頼して商品やサービスについて有利な記事をSNSなどに投稿させ、依頼したことを隠して、その投稿を宣伝していく手法です。

2024年66日に消費者庁から大森の内科医院に、Googleの口コミについて是正の措置命令が出されました。来院した患者に口コミを依頼すること自体は違法ではありませんが、星5つの投稿をすると予防接種費用を割引することを引き替えに、口コミの投稿内容の決定に関与したことなどが問題とされたようです。このことは、医療広告ガイドラインに抵触する事象です。

本件について消費者庁や大森医師会からは、6月初旬にホームページなどで報告があったにも関わらず、当該医院のホームページでは1216日付けでの報告となり、対応の遅さも目立ちました。

◆信頼性はそれほどないネット投稿の実態

無記名で自由に投稿できるGooleの口コミは、本来それほどの信頼性はありません。見る側もそれを理解して判断するものであり、医療機関となればなおさらです。診療やサービスの結果として現れる多くの反応の一つとして捉えておくべきではないでしょうか。

※次回は歯科とAIの関わ りについて考察します。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞202412月号4面掲載)

【教えて! 会長!!  Vol.92】立憲民主党の「保険証復活法案」について

【教えて! 会長!! Vol.92】立憲民主党の「保険証復活法案」について

Q 立憲民主党が「保険証復活法案」を衆議院に提出したそうですね。

 立憲民主党は2025年1月28日に「医療保険の被保険者証等の交付等の特例に関する法律案」(以下、保険証復活法案)を衆議院に提出しました。これは、従来の「紙の保険証」の新規発行を再開して健康保険証として復活させ、マイナ保険証との併用を可能とすることを目的としています。

当会が取り組んできた請願署名「現行の健康保険証を残してください」の署名にご協力いただいた先生には、心から感謝申し上げます。お手元に署名用紙がある方は、当会までご返送いただくよう、ご協力をお願い申し上げます。集めていただいた署名は、当会活動の重要な柱「国会行動」を通じ、署名に賛同していただける与野党の国会議員に要請を行います。その際、特にご協力いただける議員には、本署名をお渡しし国会に提出していただいています。この活動の模様は、既に本紙などで報告し、ご協力いただいた国会議員も紹介しています。署名の趣旨や内容上、野党議員に国会提出していただいていますが、その野党議員には多くの立憲民主党所属議員がいます。少なからず当会のこれらの活動が背景となり、立憲民主党が「保険証復活法案」を衆議院に提出されたと考えています。

Q 「保険証復活法案」の内容を教えてください。

 立憲民主党は、「医療分野のデジタル化を推進する立場」であることが前提です。協会もデジタル化そのものに反対しているわけではありません。その上で「国民の不安払拭など一定の条件が整うまでは、従来の健康保険証を使えるようにすべき」という内容です。

政府は2412月2日に健康保険証の新規発行を終了し、マイナ保険証への一本化を推進しました。しかし、マイナ保険証の利用率は2412月時点で約25%にとどまっていることから、立憲民主党は「国民の間に浸透していない」と評価しました。そこで本法案は、資格確認の安全性、国民世論、または高齢者や障害者などへの影響を考慮して十分な環境整備が整うまで、従来の保険証の発行を復活させるべきだとしています。したがって、保険証復活法案は、新規発行が終了された健康保険証の再発行を期限を定めて認め、マイナ保険証との併用を可能とする内容となっています。

Q 期限はどのように決めるのですか。

 以下の結果に基づいてその期限を決めるとしています。

①電子資格確認による被保険者などであることの確認が安全かつ確実に行われるための環境整備の状況

②被保険者などが療養を受ける際の保険証の利用の状況

③保険証の廃止が高齢者および障害者をはじめとする被保険者などに支障を及ぼさないようにするための施策の策定および実施の状況

④保険証の廃止に関する国民世論の動向、そのほかの事情を勘案して検討する

本稿執筆時には、通常国会で来年度予算の成立に向けて与野党協議が行われています。したがって、立憲民主党は本法案について、国会会期中の6月までの成立を目指し、野党各党に協力を呼びかけています。

当会は不偏不党の立場を明確に宣言していますが、多くの声を立法府に届ける活動により、賛同して協力していただいた議員らに感謝する意味もあり、当会の主張に沿った法案が提出されたことを紹介させていただきました。

東京歯科保険医協会

会長 坪田有史

※「東京歯科保険医新聞」2025年3月号掲載

震災と歯科医師 —東北・能登の現状②—  「能登・被災診療所のいま(前編): 再建襲った豪雨にも屈せず地元のため奮い立つ会員」/石川県保険医協会副会長  平田 米里/平田歯科医院

震災と歯科医師 —東北・能登の現状②—

 「能登・被災診療所のいま(前編)/ 再建襲った豪雨にも屈せず地元のため奮い立つ会員」

  石川県保険医協会副会長  平田 米里/平田歯科医院

能登半島地震によって、七尾市以北の歯科医療機関は何らかの被害を受け、ある地区では、電気が回復しても上下水道が破壊されたまま。またある地区では、電気の復旧すらできぬ故に長期にわたり機能停止となりました。再開できても周辺人口の減少で診療時間の短縮を余儀なくされたケースも多いです。さらには、地域全域が壊滅的被害を受け、発災から1年を経過しても住民の帰還もままならない中で、たとえ再建を目指しても、将来の見通しが立たず不安だと吐露する方もいます。

◆生きていたことが奇跡

半島の西にある、重要文化財の總持寺祖院で有名な輪島市門前町。その地で寺の門徒代表でもある後輩の歯科医師が、発災時に2分間にも及ぶ長いトルネードのような激しい振動に襲われ、「前半は神や仏が自分に課した『試練』と思い込もうとしたが、後半はあまりの長さと激しさのあまり、不謹慎にも『怒り』に変わった」と表現しました。それも頷けます。なにせ、彼の自宅はぺしゃんこに潰れ、生きていたことが奇跡と思える有様でした。心に深い傷を負ったにもかかわらず、比較的早く再開に漕ぎつけたのは、自らの生活と地域の医療を守ろうという彼の執念だったのでしょうか。

門前町から少し西に移動した海岸一帯は黒島地区。セメントで造られた堤防らしき囲みの内側は、海水が消え250m沖合まで砂浜となりました。その北には4mの隆起と報道された鹿磯漁港は海底の岩が露出。地震のエネルギーの大きさがいかに巨大なものかと思い知らされます。門前町に隣接する南側は原発のある志賀町。原発は休眠中でしたが、それでも「海にも空にも逃げられなかった」と避難計画の見直しについて町長が発言したのです。松本清張の推理小説「ゼロの焦点」の舞台となった「ヤセの断崖」や「巌門」も近く、崖崩れも発生。一度、観光がてら現地を訪ねてみてください。

半島の東端にある珠洲市ですが、最も甚大な被害を受け、生業再建はおろか、未だに公費解体も半分程度しか進んでいません(今年110日時点で最も進んでいる珠洲市が60.3%、輪島市が34.1%)。住民の帰還は現場の肌感覚では半分と認識されています。珠洲市は上下水道が長く途絶えていた(今でも一部は仮設トイレ)ため、歯科診療所の再開が遅れに遅れた地区。5軒のうち、1軒は頑健な建物だったため配管の一部損傷程度の被害に留まり、上水道の復旧の後には半日診療程度の再開ができました。今年1月にさらに1軒が午前中診療に漕ぎつけました。2月には仮設商店街の一角で、3軒目も再開しましたが、資金に余裕がないため、倒壊した旧診療所から使える機材(ユニット1台に流し台一式程度は使えたものの、レントゲンや滅菌機は壊れました)を業者の協力を得て運び出して 、再出発したのです。今後の設備投資や診療時間延長などは、患者さんの動向を見てからの判断にならざるを得ませんが、3年後には、その仮設店舗さえ退去を強いられることに「理不尽だ」との思いを漏らしています。

◆人口減少による閉院も

輪島の市街と珠洲市の間の山間に輪島市町野町があります。私の友人歯科医師が長く開業してきた地区です。発災直後、テレビに安否不明者として彼の名が流れたときは衝撃を受けました。我々関係者の動揺をよそに、彼は避難所となった寒々とした体育館で、歯科医師としての使命からいち早く口腔ケアを始め、歯科衛生士の奥さんは避難所のトイレの汚物処理を続けていたことを後で知りました。町野町は北前船で栄えた「時国家」の屋敷に近く、土地の地名にもなっている姓を背負った彼は、逃げ出すわけにもいかない、怯むわけにもいきません。早くから再建を目指し動き始めたのです。「石川県なりわい再建支援補助金」の申請に悶絶しながら、家屋や診療所の再建を担う職人の手配に奔走し、しばらくして、もう一歩というところまで漕ぎつけました。

しかしその矢先、921日の集中豪雨に襲われたのです。そばを流れる河川が氾濫し、床上170cmの泥水が真新しい壁を流し、至る所を泥で埋めました。普通なら、ここで挫折してもおかしくない…。だが彼は、地元のために奮い立ちました。ただ同じ地区のもう1軒の歯科診療所は、人口減少などにより昨年12月末で閉院してしまいました。(続く)

震災と歯科医師 —東北・能登の現状① —/「14回目のありがとう」 宮城県保険医協会理事長  井上 博之/松島海岸診療所

震災と歯科医師 —東北・能登の現状① —

≪はじめに≫

3月11日、東北地方を中心に甚大な被害をもたらした東日本大震災から14年が経過した。2024年には元日に能登半島地震が発生し、石川県保険医協会会員の歯科診療所が被災した。地域医療の一端を支える各地の歯科保険医は、こうした災害とどのように向き合ってきたのか。被災当時の様子や、復興への道のりを宮城県保険医協会・井上博之理事長、石川県保険医協会・平田米里副会長に綴ってもらった。なお、両氏ともにお原稿を本年2下旬におまとめいただいた点にご考慮をいただきたい。

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「14回目のありがとう」

  宮城県保険医協会理事長  井上 博之/松島海岸診療所

今年も3.11が近づいてきました。もう14回目になるのですね。忘れっぽい私ですが、14年前のこの日に始まる一連の記憶だけははっきりしています。この日がなければなかったであろう、現在の私を想うときでもあります。

私は、診療中に松島町で被災しました。それでも無事に避難し、その夜は松島湾内の小島に打ち砕ける津波の様子を眺めながら、高台のホテルで過ごしました。その後、徐々に他の地域の被災者の悲惨な状況を知るにつれて、私は大層恵まれていたのだと気付かされました。無事だった私は、診療所のスタッフとともに、翌日から避難所巡りを始めました。その後、県外からの医療支援を受けながら3カ月、県内各地の避難所の歯科医療支援を続けました。松島海岸診療所での歯科診療が再開してからは、外からの支援スタッフに頼ることが多くなりました。

活動地域は、松島町の他、東隣の東松島市とその東の石巻市の避難所でした。県外から来られた支援者たちは、頼れる人たちでした。その中で、とても印象深かったのは、東京歯科保険医協会から派遣されてきた方々でした。避難者への支援の在り方や実際の活動など、多くのことを学ばせていただきました。また、この活動地域が、その5カ月後から今日まで、私が訪問診療専任の歯科医として13年余り活動を続けてきた診療圏となりました。

当初は、「歯科でも往診してもらえるのですか」という声ばかりが聴こえました。被災直後、福祉避難所への支援で繋がりのできた介護施設での歯科診療を皮切りとして、特養などから次々と依頼が来るようにもなりました。医科や介護関係のスタッフとも連携できるようになってきました。3.11があったから、今の私の歯科訪問診療があるのです。

◆県外からの支援が力に

私がパート医として勤める東松島市の歯科医院の院長は、津波で全壊となった診療所の再建を決意された背景について、「東京からのご支援に大きく支えられた」と語っています。あの時、県外からのご支援はとても大きな意義がありました。

現在の被災地は、誰を守るのか分からない巨大な防潮堤がある一方、高台に移住して数年、今では住民が生活に落ち着きを取り戻したこともあり、現段階での復興の評価はさまざまです。その中でも、大震災当時の被災者と支援者の心温まる交流は、無形の財産を築いたのだと思います。被災地の311日は、犠牲者を悼む日であるとともに、「ご支援いただきありがとうございました」と声を挙げたくなる特別な日として今後も続いていくことでしょう。

第5回メディア懇談会/保険証新規発行終了に意見  協会「実調」最終報告に期待の声

第5回メディア懇談会/保険証新規発行終了に意見 協会「実調」最終報告に期待の声

1月17日に行われた第5回メディア懇談会(通算105回)で、健康保険証の新規発行終了の問題に触れた早坂美都副会長は「世の中に誤解が生じている」と強く指摘した。

昨年122日に健康保険証の新規発行が終了して以降、初めての開催となった今回は、発行終了後の患者対応などを議題に懇談を深めた。早坂氏は、「122日以降は健康保険証が使えない」という誤った認識をする患者が多いとし、「正しい情報を周知する必要がある」と訴えた。

参加者からの「マイナ保険証に一本化するという法律はあるのか」との質問に対して早坂氏は、「マイナ保険証に一本化されるというのは大きな間違い。法令上は健康保険証が資格確認書に変わるというのが正しい」と説明した。

加えて、オンライン資格確認の運用上の問題について、早坂氏や司会を務めた川本弘理事が自院の状況を伝えた。依然としてマイナ保険証の読み取り後に「黒丸(●)」が表示されることを報告すると、参加者から驚きの声が聞かれた。

また、診療報酬改定の話題では、期中改定が決まった歯科技工士連携加算12について、参加者から「引き上げられた分の点数は、歯科技工士の収入となるのか」との質問があり、歯科技工士の就労環境を懸念する様子がうかがえた。

その他、「会員の意識と実態調査」の中間報告をもとに懇談。最終結果の公表に期待を寄せる声があがった。なお、この日はメディアから34名が参加した。

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)2月1日

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)2月1日

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【新聞2月号】

 【1面】

 .会員の意識と実態調査/7割が「歯科医師にやりがい」

 2.東京歯科 歯科開業医会員年間増加数/2年連続トップ表彰

 3.診療報酬期中改定 4月実施へ

 4.歯科用貴金属の随時改定 3月から引き上げへ

 5.まもなく国会へ署名提出 お手元に残っていませんか?

 6.53回定期総会 日程のご案内

 7.「探針」

 8.ニュースビュー

 

【2面】

 9.重要懸案 オンライン請求猶予届出を巡り 厚労省が再提出方法示す

10.厚生労働省が通知 歯科薬剤の安定供給を指示/協会の要望が反映・実現

11.保団連2425年度第2回代議員会/協会の「会員の意識と実態調査」を推奨

12.お忘れなく!東京都の緊急対策支援金 交付申請期限は210

13.生産性向上・職場環境改善を目指す/一診療所当たり18万円を給付へ

14.2月会員無料相談のご案内

15.訃報

 

【3面】

16.2024年度 会員の意識と実態調査

 

【4面】

17.経営・税務相談Q&A No.425「利用していますか?減価償却の特例~開業医のための確定申告の基本~」

18.2024年分確定申告のポイント(税理士法人税制経営研究所)

19.書籍 保険医の経営と税務 2025年版/会員は1冊無料!2025年度最新の税務対応版を発行!

 

【5面】

20.教えて!会長!!No.91/期中の診療報酬改定

21.理事会だより

22.協会活動日誌

23.通信員便りNo.147

24.共済部だより

 

【6面】

25.研究会・行事ご案内

26.デンタルブックご案内

27.会員優待ご案内

 

【7面】

28.ALS患者追う映画『杳かなる』/「これは当事者だけの問題でしょうか

29.神田川界隈(副会長/山本鐵雄)

30.5回メディア懇談会/保険証 新規発行終了に意見 協会「実調」最終報告に期待の声

 

【8面】

31.都内歯科診療所 厳しい経営明らかに/会員医業収益の最頻値が医療経済実態調査を下回る/次世代のために求められる診療報酬引き上げ

【教えて会長Vol.91】期中の診療報酬改定

【教えて会長Vol.91】期中の診療報酬改定

Q 期中に診療報酬改定があると聞きましたが?

 昨年1225日に開催された中央社会保険医療協議会総会において、「中間年改定の年に行う期中の診療報酬改定について」が議題として提出されました。議題の一つに「歯科衛生士や歯科技工士のタスクシフト、手間への評価の見直し」が含まれていました。新規技術や材料が、年に4回ある期中のタイミング(36912月)で保険適用されたこと(いわゆる「期中収載」)は、過去に何度も経験してきましたが、今回、歯科で「期中改定」が行われたことには驚きました。今までは1989年に消費税(3%)の導入に伴う改定をはじめ、5%に増税された97年、10%に増税された19年、そして健康保険法等改正に伴う94年に「期中改定」が行われています。当然ですが、財源がなければ「期中改定」は不可能ですから、何らかの理由で財源の確保ができたということなのでしょう。

Q 期中改定の中身は?

 歯科衛生実地指導料(実地指)の口腔機能指導加算(口指導)が10点から2点増点の12点、歯科技工士連携加算1(歯技連1)が50点から10点増点の60点、歯科技工士連携加算2(歯技連2)が70点から10点増点の80点になります。改定は4月に施行されます。なお、これらの評価の目的は、歯科衛生士および歯科技工士の待遇改善であり、賃上げに繋げる意図が背景にあります。そのため算定する際には注意が必要です。

Q 口腔機能指導加算とは?

 口指導は、口腔機能発達不全症、または口腔機能低下症と診断した患者に対して、歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が実地指(月180点)とあわせて口腔機能に関する指導を行った場合に加算します。口腔機能発達不全症の患者には正常な口腔機能の獲得を目的とした実地指導を、口腔機能低下症の患者には口腔機能の回復、または維持・向上を目的とした実地指導を行うことが求められます。なお、歯科口腔リハビリテーション料3(歯リハ3:月21口腔につき50点)を算定した同日には、その指導内容が歯リハ3で行った指導や訓練と重複した場合は、口指導は算定できないので注意が必要です。したがって、歯リハ3と口指導で行った指導内容はカルテ記載が必要です(保団連発行「歯科保険診療の研究20246月版」3233120ページ参照)

Q 歯科技工士連携加算1、2とは?

 歯科技工士連携加算(歯技連1)を算定するには、施設基準(表)を満たし、地方厚生局長へ届出を行う必要があります。

【歯技連1

・レジン前装金属冠、レジン前装チタン冠、CAD/CAM冠の製作において、前歯の印象採得時に、歯科医師と歯科技工士がともに対面で色調採得および口腔内の確認などを行った場合に、印象採得料に加算します。

6歯以上のブリッジの咬合採得時に、歯科医師と歯科技工士がともに対面で咬合関係の確認や口腔内の確認などを行った場合、咬合採得料に加算します。

・有床義歯の場合、9歯以上の部分床義歯または総義歯の製作時に、咬合採得または仮床試適の際に、歯科医師と歯科技工士がともに対面で、咬合採得時には咬合関係の確認など、仮床試適時には人工歯の排列位置などを確認した場合に、歯技連1を咬合採得料または仮床試適料に加算します。

※歯技連1の算定は1口腔単位で、算定は1回のみです。

【歯技連2

・歯技連1と同じ条件に加え、歯科医師と歯科技工士がともに情報通信機器を活用して行った場合に印象採得料や咬合採得料に加算します。

※歯技連2の算定も1口腔単位で、算定は1回のみです。

今回、期中に診療報酬を改定することが可能という実例が示されました。これは、不合理な改定内容の改善と今後の「保険でよりよい歯科医療」を求める視点から注目すべきことと考えます。

東京歯科保険医協会

会長 坪田有史

(「東京歯科保険医新聞」2025年2月号掲載)

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)1月1日

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)1月1日

こちらをクリック▶「東京歯科保険医新聞」2025年(令和7年)1月1日

【新聞1月号】

【1面】

  1.会長「年頭所感」
  2.巻頭写真「嵐のち青天」
  3.「探針」
  4.ニュースビュー

【2面】
  5.東京都 物価高騰で緊急支援金/歯科診療所に15万円/申請にはGビズIDの取得を
  6.2023年度 高点数による個別指導は4年連続実施なし/萎縮診療せずカルテ記載や請求内容を確実に
  7.講師が実体験交え解説/参加者は歯科訪問診療に意欲
  8.施設基準のみなし期間来年5月31日終了/再届出の場合は十分注意を

【3面】
  9.オン資義務化撤回訴訟 原告控訴「納得していない」/棄却理由“不十分” 弁護団が見解
10.改定評価70%が「悪かった」/速報歯科会員アンケート
11.「オンライン資格確認不存在訴訟」原告団副団長として
12.私が見たオン資訴訟/判決受け、今、私たちがすべきこと(原告団 早坂美都)

【4面】
13.経営・税務相談Q&A No.424「オンライン請求システムと電子帳簿保存法~支払基金からの振込通知書が送付されなくなりました‼」
14.「国民健康保険証廃止に伴う“資格確認書”送付等に関するアンケート」
15.経営管理研究会 定額減税と年末調整・確定申告のポイントを解説
16.歯初診・外安全1・外感染2・歯援診・口管強のための施設基準講習会
17.1月会員無料相談のご案内

【5面】
18.研究会・行事ご案内

【6面】
19.保険証の発行終了受け議員〝緊急要請〞有効期限延長・全国民への資格確認書発行求める
20.解説 保険証の発行終了で起きる2025年問題とは/保険証の有効期限終了と更新手続きの留意点

【7面】
21.オン資訴訟判決後 緊急インタビュー/提訴から2年、棄却も意気軒昂/判決がマイナ問題“再議論”のきっかけに
22.「よい歯」連絡会が総会記念講演/参加者を交え健康保険証存続の展望を議論

【8面】
23.教えて!会長!!No.90/「会員の意識と実態調査」の報告
24.被団協がノーベル平和賞を受賞/核兵器使用の可能性に危機感
25.理事会だより
26.12月協会活動日誌
27.共済部だより

【9面】
28.症例研究「口腔管理体制強化加算(口管強)の施設基準を届出していない医療機関でのエナメル質初期う蝕管理料(Ce管)の算定」

【10面】
29.「会員の意識と実態調査」の特徴点/52%経営「苦しくなった」/今次改定には53%が「不満」覚える
30.神田川界隈「人口減少社会と迫りくる歯科医師不足時代」(副会長/馬場安彦)
31.新春pick up/目標は「100歳まで診療」/“御年90歳”歯科の知識で地域貢献も

【11面】
32.保険証存続求め国会内で集会/強い反対招いた保険証の発行終了/登録解除や資格確認書発行の周知徹底要求
33.通信員便りNo.146
34.謹賀新年名刺広告

【12面】
35.連載「マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~」/第10回・完:「楽しい」「便利」を置き去りにした日本のデジタル化(荻原博子氏)
36.新春会員投稿「私の一枚」

オン資義務化撤回訴訟 原告控訴「納得していない」/棄却理由“不十分” 弁護団が見解

オン資義務化撤回訴訟 原告控訴「納得していない」/棄却理由“不十分” 弁護団が見解

オンライン資格確認の義務化にあたり全国の医師・歯科医師が国を訴えた裁判の判決が昨年1128日、東京地方裁判所で言い渡され岡田幸人裁判長は、原告の訴えを棄却した。原告1415人のうち、1366人は1212日、判決を不服とし、控訴を申し立てた。

判決を言い渡された当日、原告団副団長で当会会長の坪田有史氏ほか、原告で同副会長の早坂美都氏、同理事の橋本健一氏、同会員の扇山隆氏ら原告団から44人が集まり、大法廷を埋めた。開廷からわずか1分ほどで主文が読み上げられると、原告団からはため息が漏れ、その後、原告団は地裁前に詰めかけた報道陣に「不当判決」の四文字を掲げた。

司法記者クラブで行われた会見で、須田昭夫原告団長(東京保険医協会会長)は「納得していない」として控訴の意向を伝え、今後、過疎地などで廃業する医師・歯科医師が増えることへの懸念を示した。また、佐藤一樹原告団事務局長(同理事)は、健康保険証の新規発行が終了する122日以降も健康保険証が使用できることを強調した上で、〝健康保険証廃止〞という誤った認識を広めないよう報道陣に呼びかけた。

また、判決文のうち「裁判所の判断」が記載された部分はわずか12ページのみ。これについて、原告向け説明会で喜田村洋一弁護団長は「お手軽判決」と憤りをあらわにした。さらに、原告の主張が退けられる理由が十分ではないとした上で、「原告の主張を論理立てて、間違いであると言えなかった」と分析。控訴審に向けて、「理論では完全に国を凌駕していると思っていますので、そのことが高裁の裁判官にわかるように、しつこくやっていきたいと思います」と決意を新たにした。原告からは、オン資導入が〝医療活動の自由に重大な制限を課するとまではいえない〞とした判決を疑問視する意見が相次いだ。

なお、訴訟の各種資料は、東京保険医協会ホームページで見ることができる。また、佐藤氏を取材した【<オン資訴訟判決後緊急インタビュー>提訴から2年、棄却も意気軒昂 判決がマイナ問題“再議論”のきっかけに】もぜひご覧いただきたい。

【教えて!会長!! No.90】「会員の意識と実態調査」の報告

【教えて!会長!! No.90】「会員の意識と実態調査」の報告

機関紙「東京歯科保険医新聞」2025年1月号10面に、協会が5年ごとに行っている「会員の意識と実態調査」の現時点における特徴点をピックアップし、速報として掲載しました。集計の詳細および統計の結果などは本年2月に公表する予定ですが、本稿ではこれに先立って、過去の結果との比較をいくつかご紹介します。

今回の調査は過去の調査(回答率2019年:17.3%、14年:15.9%)と比較して、回答者数および回答率ともにより多くの会員から回答(1,658名、27.6%)を頂戴しました。この場を借りて御礼申し上げます。なお、関東信越厚生局が公表している24121日現在の「保険医療機関・保険薬局の指定一覧 歯科(東京)」では、歯科医療機関数は10,416医療機関となっています。したがって、都内で開業する歯科医師の約15%が本アンケートに回答していることになり、一定程度の信頼性はあると考えられます。

それでは、回答状況を見ていきましょう。

Q この1年で患者数は増えていますか?

A 前回の19年と比較して「増加した」が21.9%から14.9%と7.0ポイント減少し、反して「減少した」が34.9%から45.2%と10.3ポイント増加していました(図1)。

Q 会員は、現在の歯科医院経営は以前と比較してどのように感じているのでしょうか?

 19年と比較して「苦しくなった」が39.7%から52.1%と12.4ポイント増加、反して「楽になった」が8.8%から5.1%と3.7ポイント減少していました(図2)。

以上、患者数および経営の状況から判断すると、5年前と比較して経営が厳しくなっている原因の一つに、患者数の減少があることがうかがえます。「苦しくなった」との回答は定量的な回答ではないものの、歯科医業面で問題があることが推察されます。しかし、83年からの計8回の調査すべてで「苦しくなった」が「楽になった」を上回り、40年間にわたり、歯科保険医療機関は全体として「苦しくなった」と感じながら歯科医業を行っていることになります。

Q 会員は協会に対してどのように感じていますか?

 「大いに頼りにしている」「頼りにしている」は、04年が60.3%、0970.2%、1471.0%、1976.4%、2481.4%と、調査を重ねるごとに増加しており、非常に嬉しい結果となりました(図3)。

今回は結果の紹介はできていませんが、協会活動で評価できた取り組みを伺ったところ、上位の項目(複数回答)は、「診療報酬改定の対応:79.0%」「保険請求の電話相談:49.5%」「施設基準の研究会:43.2%」でした。すなわち、歯科保険医である会員の先生方の要望に沿った活動が行われており、かつ丁寧にアシストできていることなどが評価されているのではないかと思われます。

今回はここまでになります。詳細の公表まで今しばらくお待ちください。

東京歯科保険医協会

会長 坪田 有史

(「東京歯科保険医新聞」20251月号掲載)

新春写真投稿「私の一枚」

新春寄稿「私の一枚」

「東京歯科保険医新聞」20251月号でお写真を募集したところ、複数のご応募をいただきました。ご応募いただき、誠にありがとうございました。以下、各作品をご紹介させていただきます。

「嵐のち青天」(早坂美都先生/世田谷区)

一晩中吹き荒れた嵐の翌日、目が覚めるような青い空が輝いていました。富山県立山室堂平での1枚です。古より「神の山」と信仰されてきた立山連峰を、美しく映し出すみくりが池です。激動の時代、しかし止まない嵐はありません。今年も素晴らしい年になりますように。

 

Sunset in Hilo」(伊藤愛子先生/世田谷区)

10月にハワイ島のヒロで撮影した夕焼けです。丸い木を境に東はピンク色の雲、西はオレンジ色の雲が拡がりその色が海まで染まり、とても美しい景色でした。2025年も素敵な場所に自由に旅ができる年でありますように。

 

「春を待つ」(吉田真理先生/武蔵野市)

新潟旅行の時に撮影しました。雪深い穀倉地帯の厳しい寒さのあとにくる春を人々は待ちわびていることでしょう。

 

「いったんお休み学士会館」(臼井伸行先生/葛飾区)

学会や講習会場として有名な1928年開業で90年以上の歴史を持つ学士会館が、周辺の高層ビルに飲み込まれるようにして、20241229日に閉館(一時休館)することに併せ、撮影記録。

 

「巨大ザメの復元模型」(川本弘先生/足立区)

埼玉県立自然の博物館に展示。サメは何度も歯が生え替わりますが人間はそうはいきません。今年も1本の歯の保存にこだわって診療にあたる所存です。

<オン資訴訟判決後緊急インタビュー>提訴から2年、棄却も意気軒昂 判決がマイナ問題“再議論”のきっかけに(佐藤 一樹×早坂 美都)

<オン資訴訟判決後緊急インタビュー>提訴から2年、棄却も意気軒昂 判決がマイナ問題“再議論”のきっかけに(佐藤 一樹×早坂 美都)

― まずは提訴に至った経緯を教えてください。

骨太方針2022に、翌年4月からオン資義務化、保険証廃止の方針が明記され、電子カルテの標準化により行政と医療界、医学会、産業界が医療情報を利活用する旨が記載されたので注意していたところ、同年8月、厚労省と三師会合同のオンライン説明会で、保険局担当課長が、「療養担当規則が改正され、23年4月1日からオン資が義務化される。導入しない場合、保険医療機関の指定取消し事由になる」旨を発言したことで提訴を決意しました。

― 訴訟の中心を担った東京保険医協会は、当初、訴訟をどう受け止めていましたか。

最高裁判例を研究したところ、本件類似判例で原告が国(担当官庁も厚労省)に勝訴した「医薬品ネット販売権利確認訴訟」があり、訴状の段階からこの判例法理に沿って主張しました。この訴訟の最高裁調査官が偶然、今回の裁判長である岡田幸人判事でした。訴訟の進行も、原告の希望が通ったり、裁判長が被告である国に対して準備書面を書くにあたり、テーマを出したりしていたので、弁護団も原告団も原告有利と考えていました。

― 訴訟の争点は?

(1)健康保険法上、給付の「内容」は保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)に委任しているが、資格確認の「方法」については、条文に委任していると書かれていない。これは、法律(健康保険法)の委任がなければ、省令(療担規則)に罰則を設け、義務を課したり、国民の権利を制限する規定を設けることを禁じた国家行政組織法に違反するか否か。
(2)仮に健康保険法上、委任がされているとしてもオン資確認義務化は、委任の範囲を逸脱しているか否か。

最高裁“逆転勝訴”経験した喜田村弁護士

― 弁護団の弁護士はどのような方たちですか。

自由人権協会の主要メンバーで行政訴訟や人権関連訴訟のスペシャリスト。喜田村洋一弁護士と二関辰郎弁護士は、憲法訴訟・行政訴訟の歴史上に燦然と輝く「在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件」(以下、在外日本人選挙権訴訟)の弁護団長と団員で、最高裁大法廷で逆転勝訴しました。喜田村弁護士は、日本の名誉毀損裁判の基準を創った実力者で、レペタ裁判、ロス疑惑事件、エイズ帝京大事件、ジャニーズ事件、松本人志事件などを担当した日本有数の弁護士です。

― 勝訴した場合、①医療機関、②患者さんにはどのようなメリットが。

①マイナ保険証のためのカードリーダを準備しなくてもよいし、マイナ保険証による資格確認を行わなくてもよいことになります。

②マイナ保険証の義務化で廃業を余儀なくされる医療機関が継続され、患者も安心して従来のかかりつけ医に通院できます。

― 改めて療担規則や、それを違反するとどうなるか教えてください。

療養担当規則は省令(厚生労働省令)なので法令です。各省大臣が担当する行政事務について,法律(健康保険法等)の特別の委任に基づいて定めるルールです。療養担当規則に違反した場合(主に診療報酬に関連した不正など)、最終的には、保険医療機関の取消しの可能性があります。通常は唐突に「取消」ということはありませんが、個別指導から監査を経て、「注意」「戒告」「取消」のどれかの評価を受けることになります。

― 膨大な原告の準備書面は、どのように作られたのでしょうか。

弁護団と原告(主に東京保険医協会理事と事務局や保団連事務局員等)で創設した「訴訟ワーキンググループ」のメーリングリストで、常時さまざまな情報交換をし、弁護団に書面案を作成していただき、医療側で実務関連のチェックをしました。毎月第2月曜日に、東京保険医協会で対面とウェブを併用して会議を開催し、決定しました。二関弁護士は、私の高校2年時のクラスメイトで、カフェで草案の素案を2人だけで練ったこともありました。

― 佐藤先生は医師として診療にあたりながら、原告団の事務局長も担っています。苦労する点も多いのではないでしょうか。

苦労もありますが、医療と法律のはざまで起こるさまざまな課題への対応 は、ライフワークなので積極的に取り組んでいます。日常的に、医療刑事事件、冤罪事件、医療民事事件の意見書を書いたり、法廷に立ったり、個別指導に立ち会って厚生局を監視したり、医療事故調査制度に関係する厚労省の担当者に面会したり、厚労族議員を訪問したり、一緒に医療安全学会の活動をしたりしていますので、この訴訟もその一部です。

― 提訴から判決まで約2年を費やしました。これほど長い期間を要する理由は何だと思われますか。

民事訴訟に輪をかけて行政訴訟の進行は遅いのが一般的で、審理期間は平均15カ月と言われています。今回は、原告が1,415人で、しかも医師と歯科医師、被告が国という大裁判なので、21カ月かかりましたが、それは想定内でした。

― 一審は残念ながら請求棄却となりました。判決を言い渡された時の様子や受け止めを。

弁護団も原告も勝勢と思っていましたので、シーンとした感じでした。岡田裁判長はこれまで、国に対して厳しい指導をして、裁判進行は原告の希望に添って行っていたので、期待していました。裏切られたというか、将来の出世を見越した公務員気質なのか…という残念な気持ちになりました。岡田裁判長は、安倍晋三国葬差止事件、神宮外苑再開発事業認可取消事件、性風俗関連特殊営業持続化給付金支払事件でも国を勝たせていました。

報道陣へ強く呼びかけ…その真意

― 判決後の会見で報道陣に対して“保険証廃止報道”を避けるよう強く呼びかける姿が印象的でしたが、その真意は?

12月2日の法令施行では、「被保険者証」が「資格確認書」に代わりますが、保険証は期限が来るまで使用できます。その後は、資格確認書が保険証の役割を果たしますので、マイナ保険証は不要です。法令では、「廃止」「停止」といった文言はないのに、「保険証廃止」と報道すると、焦ってマイナンバーの取得やマイナ保険証の登録が義務になったと勘違いして申請してしまう人が増えるかもしれません。それを阻止するためです。

― 判決後、周囲の反応はどうでしたか。

患者さんにも、周囲の医師や弁護士にも、当然、控訴するものだと思われていて、励まされています。判決前 に、テレビ局2社、通信社2社、新聞社4社、週刊誌1社からの個別取材を受けましたが、判決後にも改めて取材申し込みがありました。改めてマイナ保険証の問題点を論議するきっかけにもなっています。

― 控訴した際、原告の主張や書類等は一審から変更、修正が加えられるのでしょうか。

まだ主張は検討中ですが、おそらく変更はなく、新証拠や既存の証拠などから角度を変えた主張を追加して修正することになると思います。

― 控訴する際の原告団メンバーは、これまでと同じでしょうか。

一審原告団のうち、亡くなった方や、アンケートで控訴に参加しないと明確な姿勢を示した方を除いた1,366名です。

― 控訴後、勝訴した場合、国は上告することが予想されますが、どのような想定をされていますか。

事実審は二審までなので、上告審は専ら法律論になります。一般に上告が受理されるためには、上告提起(憲法違反または法律に定められた重大な訴訟手続の違反事由が存在する場合)、上告受理申立(最高裁判例違反や法令の解釈に関する違反)を行います。実質上、上告理由は、憲法違反か最高裁判例違反のみとされています。こればかりは、二審判決がでない限り予想は困難です。

― 控訴審に向けた意気込みを教えてください。

喜田村弁護士は、「『在外日本人選挙権訴訟』では、一審も二審も敗訴したのに、最後、大法廷で逆転勝訴した。一審の判決は、「国の主張をそのまま入れた『お手軽判決』と言うしかない。我々の主張がなぜ通らないのかについては、触れていない」とおっしゃっています。また、判決を法廷で聞いた原告44人は、その直後から控訴を決意していますので、意気軒昂です。

― 多くの保険医が訴訟を注目しています。そうした先生方にメッセージを。

一般に行政訴訟の原告勝訴率は一桁と言われています。以前も貴紙に「弁論終結段階で、弁護団も、原告勝勢とみている。しかし、裁判結果は『石が流れて木の葉が沈む』こともある」と書きましたが、現実となりました。これは、二審でも言えることですが、弁護団は法律論争では負けていないと考えています。
東京歯科保険医協会の会員の先生方におかれましては、応援のほど引き続きよろしくお願いいたします。

― 本日はありがとうございました。

※「東京歯科保険医新聞」2025年1月1日号(7面)掲載

【関連記事】
原告の訴え「棄却」/オン資訴訟控訴は今後検討
「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」提訴からの進捗と展望

【2025・年頭所感】変化の一年経て協会のさらなる発展へ

2017年6月の総会で会長を拝命し、8回目の年頭所感として新年のご挨拶をさせていただきます。

一昨年の年頭所感で本会会員数5,951名、昨年は6,030名と6,000名を超え、順調に会員数が増加していることをご報告しました。さらに24年12月1日時点では6,036名の会員数となりました。東京都内の歯科保険医の任意団体として、既会員の先生方からのご紹介を含め、多くの先生が本会の会員になっていただいたことにこの場をお借りして心から御礼申し上げます。また、未入会の先生におかれましては、歯科医業を行ううえで本会入会によって多くのメリットがあると自負しております。ぜひ、ご入会のご検討をよろしくお願いいたします。
会員数は増加していますが、微増という状況です。その内容を見ると多数のご入会がありましたが、その反面、ご退会が多かったことが24年の特徴でした。ご退会された方々に聞き取りをした結果、「高齢」を理由とするものが最多でしたが、「オンライン資格確認システム」「マイナ保険証」「レセプトのオンライン請求」がその背景にあると推察されました。そのうち、すべての前提となる「オンライン資格確認システム」に関しては、義務化撤回を求める訴訟の判決が昨年11月28日に出されました。残念ながら判決の結果は「棄却」でしたが、判決文に多くの疑問が残り、12月12日に控訴の手続きが行われました。なお、「東京歯科保険医新聞」2025年1月1日号(3・7面)に関連記事を掲載していますので、ご一読いただければ幸いです。
昨年は2年ごとの診療報酬改定だけでなく、3年に一度の介護報酬改定、および障害福祉サービス等報酬改定が重なる6年に一度の〝トリプル改定〟でした。そして従来、診療報酬改定は4月1日施行でしたが、今次改定は4月1日に改定、施行は2カ月後の6月1日と、大きな変更がありました。改定は、 65歳以上の高齢者の割合が全人口の約35%に達すると推測されている「2040年問題」を背景に医療費の抑制が意識された改定といえるものです。さらに今般の物価高騰の対策として「賃上げ」、すなわちベースアップ評価料が診療報酬上に設定されたことが特徴といえます。
ベースアップ評価料を始め、新たな項目、算定要件、加算、施設基準や届出などが多数あり、複雑で理解が難しいものでした。会員からの保険請求関連の質問や疑問の電話による問い合わせは、一昨年、昨年と比較して2倍近い数と非常に多く、協会の電話は絶えず鳴り続ける状態でした。これらの対応は、本会の重要な会員サポートの一つですから全事務局員には、丁寧に行うようお願いしました。一方で人員不足、および労働環境整備のため会員に対しては断腸の思いでしたが、昨年9月1日より電話受付時間を、短縮させていただきました。この変更は、会員の先生方にご不便をおかけすることとなり、大変申し訳なく思っております。
そもそも今次改定について行政側は、改定から施行までに2カ月間の時間的な余裕が生じるため、医療機関サイドはさまざまな準備、内容の周知が進むことが期待できると説明していましたが、それに反した結果になったといえます。したがって、歯科保険医療機関の混乱、そして多大な影響が今だに続いている責任は行政側にあること、その対応を本会が少なからず担っていることに対し、遺憾である旨は厚生労働省側に既に伝えております。
政府は昨年12月2日に新たな保険証の発行を終了し、マイナンバーカードの普及のためマイナ保険証を取得させ利用させることに邁進しています。しかし、保険医療機関におけるトラブルは全く解消されていませんし、9種類もの資格確認方法があるため、受付業務が混乱しているとの報告も受けています。これらを受けて本会は、現時点で以下の要望を国会議員に要請しています。

・現行の健康保険証は存続をさせること。少なくとも、健康保険証の有効期限(最長25年12月1日)を延期させること
・患者および窓口業務の混乱解消のため、マイナ保険証ありの患者に紙の「資格情報のお知らせ」を、マイナ保険証なしの患者に「資格確認書」を送付する取り扱いを改め、マイナ保険証の有無にかかわらず「資格確認書」を送付すること

本会設立から51年、多くの会員、事務局員、関係各位に支えていただきました。これからも一層、会員が患者、国民に良質な歯科保険医療を提供するためのお手伝いを心がけ、さらなる発展を目指します。
なお、会長を拝命して以来長きにわたりご理解、ご協力を賜ったことに心から感謝申し上げます。今後も本会に倍旧のご支援をよろしくお願い申し上げます。

東京歯科保険医協会会長 坪田 有史(2025年 年頭所感)

協会事務局休務のお知らせ

協会事務局休務のお知らせ

年末年始につき、以下の期間、東京歯科保険医協会事務局を休務とさせていただきます。あらかじめ、ご了承ください。

2024年12月28日(土)~2025年1月5日(日)

なお、年内の最終業務は2024年12月27日(金)、新年の業務は2025年1月6日(月)から開始となります。

東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)12月1日

東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)12月1日/No.657

こちらをクリック▶「東京歯科保険医新聞」2024年(令和6年)12月1日

【新聞12月号】

【1面】
1.坪田会長ら 健康保険証発行終了「できる状況にない」/当選議員を表敬訪問 歯科医療への理解求める
2.原告の訴え「棄却」/オン資訴訟 控訴は今後検討
3.12月2日発行終了は問題/各方面から訴え「健康保険証は必要」
4.「探針」
5.ニュースビュー

【2面】
6.マイナ保険証トラブル/半数の医療機関で保険証廃止後 受付業務に懸念
7.12月から変更「医療情報取得加算」/マイナ保険証の有無にかかわらず1点に
8.歯科用貴金属改定情報(12月~)金パラは引き下げ

【3面】
9.歯科技工士 5年後に半数が「辞めている」「わからない」/歯科技工所アンケートで窮状明らかに
10.支援金▶15万円(歯科診療所)申請開始▶12月下旬頃/都・医療機関物価高騰支援金 概要公表
11.オン資《資格確認限定型》経過措置対象医療機関も申請開始
12.通知が届いてからでは手遅れ/新規個別指導から保険診療のルールまで網羅
13.マイナ保険証/ひも付け解除申請始まる
14.協会事務局休務のお知らせ

【4面】
15.連載「マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~」/第9回期待したい「資格確認書」の全員配布(荻原博子さん/経済ジャーナリスト)
16.オスプレイが民家と並ぶ日常/台湾有事で高まる沖縄県民の不安にふれる
17.IT相談室「数千本のスマート歯ブラシがネットを攻撃」…というニュースから学べること
18.通信員便りNo.146

【特集①~④】
19.保存版「健康保険証の発行終了。どう対応すればいい?」/新人スタッフでも安心!これからの窓口対応きほんのマニュアル

【5面】
20.教えて!会長!! Vol.89 速報!「2024年度診療報酬に係る歯科会員アンケート調査」について
21.これから始める歯科訪問診療講習会「不安が解消できた!」
22.理事会だより
23.11月協会活動日誌

【6面】
24.研究会・行事ご案内

【7面】
25.経営・税務相談Q&A No.423「年末調整~注意したい2024年の変更点~」
26.オーラルフレイルを見過ごさない/第1回学術研究会を開催
27.12月会員無料相談のご案内
28.共済部だより

【8面】
29.第4回メディア懇談会/歯科技工所の将来に危機感
30.神田川界隈「弱者のつぶやき…地域医療の崩壊か」(理事・呉橋 美紀/大田区)」
31.「イイ歯デー街頭宣伝」in新宿を開催/歯科治療の保険適用拡充を!!
32.会員の「2024今年の漢字」
33.会員の意識と実態調査/調査の回収数1,648件、回収率27.44%
34.年末年始休診ポスターのご案内

第4回メディア懇談会/歯科技工所の将来に危機感

第4回メディア懇談会/歯科技工所の将来に危機感

11月8日に行われた第4回メディア懇談会(通算104回)で、説明にあたった山本鐵雄副会長は「歯科技工の消滅を招く」と、歯科技工業界の厳しい状況を伝えた。

▼歯科技工所の収入改善が急務

この日は、協会が実施した歯科技工所アンケートの結果を公表。歯科技工士の就労環境に触れ、個人経営の歯科技工所の所得改善が急務で、その理由として所得が低いため「機器を導入することができず、新技術に対応できない」ことを挙げた。今後の歯科技工士の減少が、年間1,0002,000人ペースと予測されていることに対し、強い危機感を示した。なお、参加者からは地方のいわゆる〝1人ラボ〞を法人の歯科技工所が買収するケースが増えているという事例が紹介された。

そのほか、「会員の意識と実態調査」や、オンライン資格確認の義務化撤回訴訟の話題をもとに懇談した。

▼参加者もマイナ保険証「使いたくない」

他方、マイナ保険証トラブル調査第4弾については、医療機関で続くトラブルの実態を報告した。これに対し参加メディアからは、医療機関のトラブル対応への負担に理解を示した上で「(マイナ保険証を利用すると)例えば国民にとって『3兆円あるいは4兆円分のメリットが生じる』などそうしたことを具体的に示すことができない限り納得感がなく、マイナ保険証を使いたくない」と指摘した。

当日は、メディア45名が参加し、早坂美都副会長が司会を務めた。

【教えて! 会長!!  Vol.89】 速報! 「2024年度診療報酬に係る  歯科会員アンケート調査」について

【教えて! 会長!! Vol.89】 速報! 「2024年度診療報酬に係る  歯科会員アンケート調査」について

Q 先月行われた「歯科会員アンケート」について。

 今秋、各種のアンケート調査を短い期間で複数行い、お忙しい中、ご回答いただいた先生に御礼申し上げます。

ご質問の「歯科会員アンケート」ですが、こちらは保団連(全国保険医団体連合会)が行った全国調査で、当会会員に対しても、全国調査と同一の内容で回答をお願いしました。111日からの短期間でしたが、FAXならびにWEBフォームでご対応いただいた会員の先生方に感謝いたします。

なお、5年に一度、当会独自で行っている「会員の意識と実態調査」は、101日から回答をお願いし、返信率は過去最多となりました。ご協力いただいた先生方に重ねて御礼申し上げます。結果は現在集計中で、過去のデータとの比較、各項目の推移や統計解析などを行っています。近日中に報告ができると思いますので、少々お待ちください。

Q 「歯科会員アンケート」の結果について。

A 全国調査の結果は、現在、当会会員回答分を含め集計中ですが、1112日までのWEBフォームでの回答(回答数82)のうち、速報として参考になる項目を抜粋して報告させていただきます。

表1に施設基準の届出数、届出率を示します。9月の時点での東京都のデータでは、外安全152.4%、外感染163.4%、口管強が31.3%、光学印象が12.2%、ベースアップ評価料126.5%でしたから、今回の回答による届出率は、明らかにすべてが高い値でした。当会から会員に向けた情報発信が影響した可能性があり、この結果を評価したいと思います。

歯科医師、事務職員、院外歯科技工士を除く、医療スタッフの賃上げ対応として、新設されたベースアップ評価料の評価を表2に示します。「評価しない」との回答が半数の50.0%でした。

次に、「本来の診療報酬改定の意義が発揮できるよう、初・再診料の引き上げや医療行為の評価を中心とした再改定を求めますか」という設問の結果を表3に示します。92.7%が「再改定を求める」との回答でした。今次診療報酬改定での全体の評価についての回答(表4)は、「どちらかといえば悪かった」と「悪かった」を合わせると、68.3%が「評価していない」との回答でした。

これらはWEB回答のみで、母数が多いとはいえない段階ですが、総じて今次診療報酬改定に対して、評価していない会員が多いとの傾向がうかがえます。今後、集計が終わりましたら、全国ならびに当会会員に限った結果を本紙や当会のホームページで報告します。

東京都の中での当会会員、あるいは全国からみた当会会員、そして他協会会員の傾向などがわかるアンケートは、会員各位にとって有益な情報となります。また、これらのデータを持参して、国会議員、厚生労働省に意見や要望を行います。今後もさまざまなアンケートを実施する機会があります。その際は、何卒ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

東京歯科保険医協会

会長 坪田 有史

(「東京歯科保険医新聞」202412月号掲載)

【IT相談室】 「数千本のスマート歯ブラシがネットを攻撃」…というニュースから学べること

【IT相談室】 「数千本のスマート歯ブラシがネットを攻撃」…というニュースから学べること

2024年4月にヨーロッパのニュースサイトに「数千本のスマート歯ブラシが乗っ取られ、DDoS攻撃をする」というニュースが掲載され、あちこちに転載され話題になりました。

◆内容を分析してみる

スマートフォンアプリと連動して通知を発信できるような高機能なスマート歯ブラシは、乗っ取られる危険性があります。現在ではインターネットにアクセスできる家電や事務機器は多数あり、そのような機器の乗っ取りは一つの脅威として認識されています。

ところで、DDoS攻撃というのは、ある特定のホームページなどに短時間に集中的にアクセスして閲覧不能にする攻撃で、ランサムウエアなどと比べると古典的と呼べる脅威です。

一つの発信元から大量のアクセスをすると簡単に対策を講じられてしまうので、数多くの端末(今回はスマート歯ブラシ)を乗っ取って一斉に攻撃します。

◆情報感度と冷静さの両立が必要

結局このニュースは、仮定だったはずの話が実際に起こった事件として記事になった誤報でした。後日、そのような乗っ取りの可能性自体もほとんどないことが判明。多くのセキュリティ専門家がこのニュースを拡散し、広まったものの、正体がわかってからは火消しに走りました。

このニュースは一種の笑い話で済みましたが、もし運悪く、もっと広く拡散していたら、歯科のイメージやスマート歯ブラシの普及に悪影響があったかもしれません。

情報感度と冷静さを両立することは難しいことですが、まずは経過を観察する余裕を持っていただければと思います。

※なお、次回はGoogleのステマ規制での摘発事例をご紹介します。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞202412月号4面掲載)

【荻原博子さん連載】マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~ 第9回 期待したい「資格確認書」の全員配布

第9回 期待したい「資格確認書」の全員配布

いよいよ、「健康保険証」の新規発行が終了する122日が近づいてきました。

新規発行が終了しても、有効期限内であれば最長1年は保険証が使えることを知らない人は多い。中には、「保険証の新規発行が終了するから、急いで『マイナ保険証』を作らなければ」と思っている人もいるようです。

そういう人には、「保険証の新規発行が終了しても、有効期限までは手持ちの保険証が使えるし、有効期限が来ても、その前に資格確認書という保険証代わりになるものが自動的に送られてくるので、大丈夫ですよ」と教えてあげると、マイナ保険証を持っていない患者さんも安心するのではないでしょうか。

以前、元厚生労働大臣で立憲民主党の長妻昭代表代行と話していた時、保険証も資格確認書も同じ内容を記載しているのだから、保険証の上に「資格確認書」というシールを貼ればいいんじゃないか」とおっしゃっておられました。

その時は「まさか」と思ったのですが、先日、手違いで流出した神奈川・川崎市の「資格確認書」を見ると、名前だけは違いますが、保険証とそっくり。たぶん、これを送られた人は、「新しい保険証が来た」としか思わないことでしょう。

川崎市の「被保険者証」

川崎市の「資格確認書」

◆ 自治体を襲う「マイナ保険証の2025年問題」

国は、マイナ保険証を持たない人には資格確認書を、マイナ保険証を持っている人には資格情報のお知らせを送ることにしています。ただ、マイナ保険証を持っているか否かは、機械的には判断できません。

例えば、マイナ保険証を返納した人は、マイナカードはないけれど登録解除をしていないケースが多い。なぜなら、多くの人が登録解除できるようになったのは1028日からなので、マイナカードは返納したけれど登録はそのままになっているケースが多いからです。

また、これからはマイナカードの電子証明書の有効期限切れという問題も発生してきます。保団連(全国保険医団体連合会)の調べでは、マイナカードの電子証明書の更新は25年度には、なんと23年度の約12倍、約3,000万人が、更新手続きのために自治体窓口に押し寄せる。

ただ、役所が開いている時間帯に働いている人たちなども多く、実際には更新しないまま無保険状態になる人もかなり出てくるでしょう。

◆「資格確認書」を全員に送れば 多くのトラブルを防げる

介護施設の中には、「マイナ保険証は預からない。資格確認書にしてもらっています」というところもあります。なぜなら、マイナカードだけでなく暗証番号も預からねばならず、人手不足の中では、とてもそんなコストをかけてカードの管理はできないから。介護業界では余裕がある事業者が少ないだけに、今後、そうした施設は増えていくでしょう。

いま、「マイナ保険証 使われない理由はコレ」というYou tube動画がバズっています。先日、これを作って自らも出演している大阪府守口市の北原医院・井上美佐医師にお話を聞きました。井上医師いわく「なんで、こんなに不便なんやろ。医療現場はトラブルだらけ」とおっしゃっておられました。

保険証さえ廃止しなければ、こうしたトラブルの多くは解決します。百歩譲って保険証が廃止されたとしても、すべての人に資格確認書を送ることで多くのトラブルを防ぐことができます。

立憲民主党の野田佳彦代表が、1027日の衆院選の開票特番「Live 選挙サンデー 超速報SP」(フジテレビ)で、「まずは紙の保険証を使えるようにする」と政策目標を挙げました。その実現を願うとともに、もしダメでも、せめて資格確認書をすべての人に送ってほしいものです。

【全文を読む】第9回 期待したい「資格確認書」の全員配布

経済ジャーナリスト 荻原 博子

プロフィール:おぎわら・ひろこ/経済ジャーナリスト。家計に根ざした視点で経済を語る。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞・経済誌などに連載。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。近書に「マイナ保険証の罠」(文春新書)、「マイナンバーカードの大問題」(宝島社新書)など。

【荻原博子さん連載】マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~ 第8回 誰も検証せずに突き進む「保険証廃止」

第8回 誰も検証せずに突き進む「保険証廃止」

先日、元厚生労働大臣で厚労省(厚生労働省)に人脈もある、立憲民主党代表代行の長妻昭氏にお会いしました。一番驚いたのが、「週刊新潮」2024620日号が報じた「マイナ保険証」での死亡事例について。

岐阜県内で具合が悪くなって病院を受診した人が、「マイナ保険証」の読み取りができず、受診もできずに帰ったら、心筋梗塞でお亡くなりになってしまったという事例です。

これについて、当時の河野太郎デジタル大臣は、「厚生労働省に聞け」の一点張り。武見敬三前厚労大臣も「そういった事実は、私は確認しておりません」と会見で話していたので、本当に厚労省が確認したのかを長妻氏に聞きました。

「普通は、“マイナ保険証”で診療を受けられなかった人が死亡するというような報道があったら、いの一番に事実関係を確認し、もし誤報だったら記者会見を開いて、その場できっぱり否定すべきです。また、それが事実無根だったら、報道した週刊新潮にも毅然とした態度で抗議すべきですが、厚労省がこの件を調べた形跡がない。もし、命に関わるような事故が起きたら、徹底的に原因を解明しなくては、国民の信頼は得られないというのに、こんな無責任な状況で〝保険証〟を廃止するというのは間違っています」と、怒っておられました。

おっしゃる通り、調べもしないまま、何もなかったように進めて良い話ではないでしょう。

◆「保険証廃止」は過去に前例のない決定

さらにひどい話は、保険証の廃止は厚生労働省が医療状況を見ながら決めたのではなく、ある日突然、医療とは関係ない当時の河野デジタル大臣が、現場を見ずに独断で決めたことです。

長妻氏は、「そういう決め方は、過去に前例がない。それまで、厚労省では現場のデータを集め、それを学者や有識者からなる審議会で議論してきた。ところが、“保険証の廃止”は下から積み上げたデータはなく、審議会での議論もないまま、当時の厚労大臣さえも寝耳に水といった状況で決まってしまった。普通は、ありえないですよ。国民の命に関わる医療の重要案件を、審議会も通さずに管轄外のデジタル庁主導で独断で決めるなど言語道断」。

長妻氏が最も危惧しているのは、来年から“マイナ保険証”に電子カルテ情報がひも付けられること。

「“カルテ情報”は、まさに患者のプライバシーそのもの。これをひも付けるとなれば、患者の医療の個人情報が丸裸にされる恐れがある。しかも、こうした情報は高く売れるので、ハッカーなどに狙われやすい。今の日本政府が、海千山千のハッカー攻撃を100%防げるのか不安です」。

◆残念な首相の「手のひら返し」!!

「マイナ保険証」の病院窓口での利用率は、今年8月で12.43%。なんと8人中7人は「保険証」を使っている。

総裁選への出馬前、石破茂総理は「期限が来て納得しない人がいっぱいいれば、(現行の保険証との)併用も選択肢として当然だ」と話していました。当時の林芳正内閣官房長官も健康保険証の廃止期限を見直す意向を示し、「(関係者からの)不安の声を直接耳にした」と語っていました。

ところが、発足した内閣では、総裁選前の発言はなかったかのように、総理も官房長官も「廃止の方針に変更はない」と発言。福岡資麿厚労大臣や平将明デジタル大臣が「廃止の方針を堅持する」と言ったので、これに歩調を合わせたのでしょう。

実は、前述の長妻氏は、「石破総理が見直すと言うのだから、総理に忠実な平大臣が廃止を主張するのは難しいか」とおっしゃっていたのですが、結果は、“廃止派”に石破総理が押し切られたということ。

一体、誰のための政治かと言いたくなります。

経済ジャーナリスト 荻原 博子

プロフィール:おぎわら・ひろこ/経済ジャーナリスト。家計に根ざした視点で経済を語る。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞・経済誌などに連載。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。近書に「マイナ保険証の罠」(文春新書)、「マイナンバーカードの大問題」(宝島社新書)など。