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保団連夏季セミナー/国民本位の医療アクセスとは何か

保団連夏季セミナー/国民本位の医療アクセスとは何か

会場の様子

8月2〜3日、全国保険医団体連合会は「第54回保団連夏季セミナー」を開催し、協会から役員、事務局が参加したほか、全国の保険医協会・医会から2日間で計345人が参加した。ここでは、当日参加した協会の早坂美都会長と高山史年理事のレポートを紹介する。

 

 

 

◆歯科医療政策と医療の在り方を見直す契機

会長/早坂美都

8月3日は、歯科医療の現状と医療アクセスをテーマに講座とシンポジウムが行われた。

午前の講座「追いつめられる歯科医師たちと歯科医療から遠ざけられる患者たち」では、保団連副会長の宇佐美宏氏が講演。戦後から現在に至る歯科医療政策の変遷を時系列で解説し、診療報酬制度の変化や歯科医療費の抑制政策により、医療現場が困難に直面している現状を説明した。「歯科医療費が軍事費と同程度に増えるのに29年もかかった」と指摘し、制度上の歪みや歯科技工士不足、大学定員割れなどの構造的問題も浮き彫りにした。歯科技工問題については、参加者から在宅医療で「義歯を作れる技工士が不足している」との声も上がり、深刻さが共有された。

シンポジウムの登壇者

午後は「患者の声から考える医療アクセスの課題と改善策」と題したシンポジウムが開催され、4人が登壇し、それぞれの視点から発言した。保団連副会長の橋本政宏氏は「命を守る医療機関が30分圏内に必要」と述べ、医療の地域格差と「受療権」の確保の重要性を強調。がん患者の水戸部ゆうこ氏は、自身の闘病体験をもとに、高額療養費の上限額が引き上げられると、負担が患者に重くのしかかると、強く訴えた。

社会医療法人社団健生会の蓮池安彦氏は、75歳以上の高齢者は「子や孫のために」と意識し、受診を控える傾向があり、これは「受療権の侵害」であると警鐘を鳴らした。京都大学大学院教授の諸富徹氏は、今後の財源確保として投資課税の必要性を提言し、欧米諸国では企業が精神疾患やがん治療に責任を持つ仕組みがあることを紹介した。

制度の限界と医療提供体制の持続可能性について、現場からの切実な声が多く示された本セミナーは、社会全体で医療の在り方を見直す契機となった。

◆日本とCEDAWそしてジェンダーの変遷

理事/高山史年

8月3日、早稲田大学名誉教授の浅倉むつ子氏を講師に迎えた講座「女性差別撤廃条約と日本のジェンダー平等」に参加し、講義と質疑を通じて日本社会が直面する課題と解決の方向性について深い学びを得た。日本が国連の女性差別撤廃条約(CEDAW)を批准してから約40年が経つが、ジェンダー平等の実現にはなお多くの壁が残されている。世界経済フォーラムによるジェンダー・ギャップ指数では、日本は先進国の中でも下位に位置し、男女の賃金格差、女性管理職の少なさ、政治分野での女性の不在が依然として課題となっている。

浅倉氏は、抜本的な改革の「王道」として憲法第24条の改正を挙げたが、これは憲法第9条など他条文改定への波及リスクもあり、現実には非常に高いハードルが存在すると指摘。そのため現時点では、現行法を最大限活用し、着実な法整備を積み重ねる現実的アプローチが求められているという。

具体的には、選択的夫婦別姓を導入する民法改正、賃金格差是正やハラスメント対策を強化する労働法・均等法の改定、「LGBTQ+差別禁止法の整備」や、政治分野におけるクオータ制の導入などを挙げた。さらに、皇位継承制度の見直しによる女系継承の議論も憲法改正を要しない改革として可能だという。

これらの制度改革を通じて、CEDAWからの勧告に応えるだけでなく、日本の国際的な信頼回復にもつながると強調した。

今後、協会としてもこの視点を踏まえ、医療の現場から社会的課題に向き合い、現実的かつ継続的な取り組みを進めていくことが重要だと感じた。

【連載】退き際の思考/“52年ぶり”涙の再会  同窓の奮闘に活力「パワーもらった」(伊藤 栄子さん × 吉田 真理さん)

”涙の再会 同窓の奮闘に活力「パワーもらった」(伊藤 栄子さん × 吉田 真理さん)

“52年ぶり”涙の再会  同窓の奮闘に活力「パワーもらった」

(伊藤 栄子さん × 吉田 真理さん)

歯科医師としての“引退”に着目した本企画。歯科医療の第一線を退いた先生や、閉院を検討する先生にお話を伺い、引退を決意した理由や、 医院承継、閉院の苦労などを深堀りする

 出席番号は、「13」と「38」。半世紀前、日本歯科大学のクラスメイトとして学生時代を過ごした伊藤栄子先生と吉田真理先生(ともに76歳)は、今回、本企画を通じた縁で実に52年ぶりの再会を果たした。自身のけがや加齢を機に、診療の縮小を考える伊藤先生と、現在も院長として医院経営をする吉田先生。分岐点に立つ伊藤先生は旧友との再会で何を感じたのか

再会の喜びに思わず涙する伊藤先生(左)と寄り添う吉田先生

―久しぶりの再会となりました。

伊藤先生(以下、伊藤):全然変わっていなくて、雰囲気は18歳の時と同じでしたね。亡き父は千葉県出身で、茂原市出身の真理ちゃんのことをモバラちゃんと呼んで可愛がっていました。亡くなる前まで「モバラちゃんはどうしてる?」と言っていたのが懐かしいです。

吉田先生(以下、吉田):昔、栄子さんの実家でステーキをご馳走になったんです。改めてその時のお礼を伝えたくて、今日再会できてとてもうれしいです。

―では、大学卒業後の歩みを教えてください。

伊藤:ビートルズが大好きで、それが興じてイギリスに留学するなど若い頃は自由に生きていましたね(笑)。でも父が亡くなって、30代前半で伊藤歯科医院を引き継ぎ、その後は同じく歯科医師だった母と医院経営をしました。

吉田:卒業後に結婚し、4年ほど勤務医として働き、その後に子どもが生まれ、10年ほど休業した後、同級生の医院で勤務医として復帰しました。以降は他院に勤務し、日本歯科大の非常勤講師として勤めました。2015年に吉田歯科医院を開業しました。

―伊藤先生は現在、診療の縮小を検討しているそうですね。

伊藤:年明け頃に患者さんの難抜歯をした際に、指を痛めてしまいました。そこから思うように診療ができず、今後の診療について考えるようになりました。長年診てきた患者さんが来られなくなったり、お亡くなりになったり、この年になるとそうした変化がありますが、代わりに若い患者さんの診療を始める、というのはなかなか難しいところです。いろいろな悩みの中で今後について迷っているところです。引退も頭によぎりましたが、今は診療所を移転して、訪問診療を中心とした医院にするなど診療の在り方を考えています。

―年齢を重ね、診療や医院経営を続ける難しさを感じているのですね。

伊藤:従業員を雇ったこともありましたが、人間関係に悩んだり、例えば従業員のためのベースアップ評価料のような複雑な仕組みを理解するより、一人で医院経営をした方が楽だと思うようになりました。自分にとってはそれがシンプルイズベストで、診療に集中できる形なんです。

吉田:私も今は健康に恵まれていますが、あとどのくらい続けられるかなと感じます。機器の買い替えなど考えることも多いのでさまざまな兼ね合いによって、退き際を考えるタイミングが訪れるかもしれません。

―歯科医療に関わるお互いの選択について、どのように感じますか。

伊藤:真理ちゃんは昔から勉強熱心だったので、そのまま院長として突っ走ってほしいと思います。お互いにこの年齢だから、何よりもずっと健康でいてほしいと思います。年明けのけがから気持ちが落ち込んでいましたが、今日、真理ちゃんを見たら学生の時と全く変わっておらず、とてもパワーをもらいました。この先どうするかは未定だけど、今日もらった活力で私も頑張りたいです。

吉田:栄子さんも健康に気を付け、やりたいことをやってほしいです。車の運転が大好きということなので、事故には気を付けてね。私も人との触れ合いを大切にして、進化しているデジタルや新技術に少しでも対応できるようになりたいと思っています。

≪患者との思い出「通じ合うものあった」≫

―長い歯科医師人生の中で、思い出深い患者さんもいたとか。

伊藤:ミュージシャンを目指していた患者さんを20年ほど診ていました。お金はないんだけど、必ず1年に何度か来院して、コーラが好きだから口腔内の状況が良くなかったんです。そんな彼が親の面倒を見るために帰郷することになり、「頑張れよ」と思いを込めて、最後にエアロスミスのコンサートに連れて行ったんです。それだけの話なんだけど、お互いロック魂みたいなもので通じ合うものがあって思い出に残っています。不思議なもので、長くお付き合いが続く患者さんは、一目見れば分かり、患者さんも「この先生なら大丈夫」と直感するのかな、と思います。

 ―最後に同世代の先生に向けて、メッセージをお願いします。

伊藤:ビートルズの名曲「Let It Be」の和訳ですが、「あるがままに」ということです。なるようにしかならないから、好きなことをしてほしい。せっかくこの世に生きてきているんだから大いに人生を楽しんでください。

吉田:引退は仕事を始めるよりも難しい決断だと思います。でも最後には「我が人生に悔いなし」と納得して終われるように健康で明るく生きてほしいと思います。

―ありがとうございました。

 

 

 

過去の連載はこちら<退き際の思考 歯科医師をやめる>

社会保障充実に向け秋の運動へ/保険証問題、高額療養費制度、物価高騰…積もる課題の解決へ

社会保障充実に向け秋の運動へ/保険証問題、高額療養費制度、物価高騰…積もる課題の解決へ

7月に行われた参議院選挙は、社会保障制度の在り方を問う契機となった。全国保険医団体連合会(保団連)は、事前に主要各政党へのアンケートを実施。医療・社会保障の充実、高額療養費制度改悪の撤回、健康保険証の新規発行復活、医薬品を保険給付から外さないことなど、医療分野に対する各党の考えを問い、積極的な情報発信のもと世論喚起に努めた。

選挙の結果、与党は6月の東京都議選に続き、参院選でも過半数を割る大幅な議席数減となった。これには国民の不安、不満が浮き彫りになったと見ることができよう。一方で、社会保障制度の縮小を掲げる政党もあり、少なからず今後の社会保障の在り方が問われる選挙となったのではないだろうか。保険医協会・医会としては、医師・歯科医師、医療現場の立場から今後も正しい情報提供を行い、分断や対立を煽るのではなく、社会保障の充実に向けた働きかけを行う必要があるだろう。

こうした情勢を踏まえ、協会でも秋から冬にかけての運動が本格化する。保団連を中心に、医療機関への財政措置や、2026年度診療報酬改定に向けた大幅な引き上げ要求を柱とした運動の議論が進む。資格確認や窓口負担増加など、じかに患者への影響が及ぶ課題については、患者に対する周知も重要な位置付けとなるだろう。

◆保険証復活・OTC・高額療養費…課題は山積

保団連、全国の保険医協会・医会は従来から健康保険証の存続や併用を求める署名に取り組んできた。保険証廃止による混乱や患者の不安を背景に、全国の医療現場からは健康保険証復活を前提に「資格確認書の全員交付」や「無保険者を生まない仕組み」の整備などを求める声があがっている。自治体や国への働きかけ、待合室での情報提供などを通じ、患者の受診を妨げることのない環境を作らなければならない。また、社会的にも注目されるOTCの保険外しや高額療養費制度について、物価高騰の中でさらなる自己負担の増加は患者にとって大きな痛手となる。

各地で患者団体との連携やオンライン署名が展開されており、医療現場からの声と国民の声を結びつける取り組みが進む。そして、来たる925日には「いのちまもる総行動」が予定されており、社会保障の立て直しを掲げた全国規模の集会が行われる。歯科医師の立場から地域医療を守る役割を再確認し、患者・国民と共に医療現場を守り、未来を築く決意を新たにする場として、会員の先生にもぜひ参加いただきたい。秋の運動は、国会と世論の双方に働きかけ、医療・社会保障の充実を求める重要な局面となるだろう。

戦後80年 伝えたい記憶、戦時の記録―下―

戦後80年 伝えたい記憶、戦時の記録―下―

1945年8月15日、先の大戦が終わり、今年80回目の夏を迎えた。戦前生まれの世代が高齢化していく中で、戦時経験が語り継がれる機会は少なくなっている。

残された時間でいかに後世に語り継いでいくか―。本企画では、会員から寄せられたご本人や家族の戦争体験を投稿いただいた。8月15日に続き、2氏の原稿を掲載する。

◆満州から中央区へ 情熱と自信/藤本 浩平(56歳)

私の家は代々歯科医の家系で、私は祖父の代から数えると3代目となります。祖父は歯科医師として九州歯科大学大学院を卒業後、昭和10年代に満州に渡り、奉天(現在の瀋陽)にて家庭を持ち、現地にて歯科医として終戦まで過ごしました。日本から満州に移民が行われた背景には、昭和7年(1932年)の満州国建国がありました。満州国での資源開発、都市建設は日本の国家的政策の一環として行われました。この為、都市や鉄道沿線のインフラ整備に伴う医療従事者の需要に応えるべく日本政府と南満州鉄道(満鉄)は高額な給与、住居の提供、家族帯同などの便宜を図り、医療従事者を優遇して満州に招致、祖父も歯科衛生の教育を受けた若き歯科医として、九州から大陸に渡りました。

家庭的にも祖父は地方出身の次男であり、地理的に比較的近い満州を新天地として希望を持って捉えていたのではないかと思います。祖父は歯科部門を持つ南満州鉄道奉天病院に勤務しておりました。奉天は拠点都市で、満鉄病院は日本の大学病院並みの設備を備える満鉄の主要病院でした。

祖父は日本人、中国人双方の歯科医療を担っておりました。このような環境の中で祖父は結婚し、昭和14年に父が生まれました。豊かな家庭生活を送っていたものの、4人兄弟の長男であった父親と姉以外の兄妹たちは、幼い時期に亡くなっています。昭和20年(1945年)の敗戦後、ソ連軍の侵攻による、中国東北部の混乱の中、家族4人で逃げるように引き揚げ船を目指し、やっとの思いで九州に戻ってきました。逃げる道のりで敵兵から金品を奪われた話を、祖父がしていたのを覚えております。

帰国後、祖父は小倉、戸畑にて歯科医院を開業し、日本での生活が始まりました。6歳で帰国した父も九州歯科大学を卒業し、大学院教育の後、親子二人で診療室を営んでいました。父は当時から海外志向が強く、1970年代にかけて、若い歯科医の一人としてアメリカで最新の歯科医療を学ぶために渡米。インディアナ大学補綴科大学院に入学しました。大学院卒業後、フロリダ大学補綴科で教鞭をとった後、日本に帰国。やがて、東京都中央区にて開業、藤本補綴臨床研修会を通して多くの日本の臨床家に対して咬合理論、補綴治療に関する教育を行ってきました。

当時6歳だった私も、父親のアメリカ時代に現地の教育を受け、東京歯科大学卒業後、ワシントン大学歯周病科大学院に進み、卒業後は臨床教授として3年勤務した後に帰国、父親の診療と研修会活動を支えました。現在24歳になる我が家の愚息も4代目の歯科医になる予定であります。

満州での戦中、日本での厳しい戦後、高度成長時代を歯科医として懸命に生きた祖父と父親、バブル経済の繁栄と衰退の1990年代、コロナ禍の混乱を経て今に至る私、大きな変革期を迎えている歯科医療の環境の中、生きて行く4代目に、社会からどのような歯科医療を求められるのか見守ってゆきたい。誇りを持って歯科医として活躍した祖父、父親と同様に4代目にも歯科医療を情熱と自信を持って取り組む歯科医として活躍することを願っております。

◆父のうた声/吉田 真理(76歳)

父は、戦争のことを話しませんでしたので私には分かりませんが、この写真を見ますと何も言葉が出ません。陸軍軍医(中尉)として戦地に赴いた父。当時の現地を調べてみますと、激戦地となっており、多くの人が命を失 ったようです。

戦地では、生きて帰国できるかわからない状況で、遥か離れた故郷や父母のことを偲んでいたのではないでしょうか。私の記憶にありますのは、父が「ブンガワンソロ 清き流れ」と口ずさんでいたことです。インドネシアにある大河を歌った曲で、ゆったりした美しいメロディーは人の心を癒してくれ、今も多くの人々に愛されているようです。

父のことを想いますと涙が出てきます。現在、戦争をしている国があり、そこでは多くの尊い命が失われます。ちょうど今年は戦後80年にあたります。恒久平和な世界であってほしいと思います。

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)8月1日号

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)8月1日号

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【1面】

 1.厚生労働省要請を実施/現場の診療行為保険点数の乖離訴え CAD/CAMや口腔機能管理の要件緩和など要求

 2.中医協/10月から医DXのマイナ保険証利用率さらに引き上げ

 3.多くが9月末に有効期限/国保の健康保険証 全加入者に「資格確認書」を 都・区市町村へ緊急要請

 4.要注意/施設基準などの“8月定例報告”829日までに提出を

 5.探針

 6.ニュースビュー

 

【2面】

 7.指導計画と指導実施状況が明らかに/生活保護の個別指導予定は6件 協会の開示請求 により詳細判明

 8.光ディスク等でのレセプト請求/猶予届出は8月末まで!

 9.歯科訪問診療講習会に79名参加/「具体例が分かりやすい」の声 ダイジェスト版動画配信中

10.医療機関等物価高騰緊急支援金(20254月~9月分)/Jグランツ申請は101日開始 書面申請は818日から 歯科診療所の支援金は7.8万円

11.生産性向上・職場環境整備等支援事業/支援金18万円を歯科診療所に支給 申請開始は84()予定

 

【3面】

12.保団連第3回代議員会開催/協会 早坂会長が「資格確認書の一斉送付」要求 施設基準改善執行部は「厚労省要請で訴えたい」

13.後期高齢者の保険証 有効期限終了/8月は「資格確認書」の確認を忘れずに

14.第53回定期総会記念講演/「歯科はマイナ保険証の必要性低い」続く混乱、記者がひも解く 市の窓口整備に22億円計画も

15.厚労省が異例の通知/期限切れの保険証でも診療可能

 

【4面】

16.経営・税務相談Q&A No.431/ご存じですか?「育児・介護休業法」の改正

17.第1回 ドクター・スタッフ講習会/「また会いたい」接遇の“5要素学ぶ

188月会員無料相談のご案内

192025年度第1回東京都歯科医師認知症対応力向上研修

20.東京都歯科衛生士会主催<東京都委託事業>歯周治療の基本研修会「ベーシックSRPコース」

 

【5面】

21.研究会・行事ご案内

22.「夏季休診案内」のご紹介

 

【6面】

23IT相談室/AIとは何か活用上の注意-最後は自分の責任で-

24.「保険でよい歯を」東京連絡会/オーラルフレイルで市民講演会

25.暑中お見舞い名刺広告

 

【7面】

26.新体制後初のメディア懇談会開催/診療報酬への「根本的な政策提言」を

27.通信員便りNo.152

28.理事会だより

29.協会活動日誌

30.共済部だより

31.会員優待

 

【8面】

32.「戦後80年 伝えたい記憶、戦時の記録」 私の戦前と戦中、そして戦後80年(渡辺吉明)、ビルマからの手紙(下田祐里江)、『B』(西田紘一)

33.神田川界隈(理事・濱崎啓吾/練馬区)

新体制後初のメディア懇談会開催/診療報酬への「根本的な政策提言」を/インフレ時代の診療報酬のあり方問う声

新体制後初のメディア懇談会開催/診療報酬への「根本的な政策提言」を/インフレ時代の診療報酬のあり方問う声

協会は711日、第2回メディア懇談会を開催した。議題は、①協会が実施した国会行動、②子ども医療費助成制度の状況、③次期診療報酬改定―などとし、67名のメディア側参加者と懇談した。 

(左から)小林顕部長、早坂美都会長

冒頭、新会長の早坂美都氏、広報・ホームページ部新部長の小林顕氏がそれぞれ挨拶。早坂会長は今後の取り組みについて、歯科医療改善に向けた国会議員や行政への働きかけの強化のほか、保険医の生活を守っていくことなどに力を入れていくと説明した。会長就任前まで広報・ホームページ部長として本懇談会に参加してきたこともあり、参加者からは新体制への期待の声が上がった。

マイナ保険証問題については、「世の中の雰囲気が変わったと思った」と協会や全国保険医団体連合会の活動を評価する声が上がった。また、協会が都内の自治体に資格確認書の一律配布を要請することなどを踏まえ、区市町村への積極的なアプローチの必要性についての意見が目立った。

会場の様子。ほか2名がオンライン参加した

さらに、施行まで1年を切った2026年度診療報酬改定に関しては、インフレ時代の診療報酬の在り方を問う参加者からの提言も。具体的には、建設業界では契約時の金額、条件などに対し、物価変動に合わせて調整するインフレスライド条項が運用されていることを例に、「『毎回、診療報酬を上げてほしい』と要望するのではなく、根本的な政策提言をすべき時代になっているのではないか」と、診療報酬の在り方そのものに言及する発言もあった。早坂会長は材料費、人件費などの高騰を引き合いに、「漫然と訴えていくのではなく、統計学も用いながら『医療機関がこれだけ大変な状態にある』という数値を示していくのは重要だと考える」とした。

保団連第3回代議員会開催/協会 早坂会長が「資格確認書の一斉送付」要求/施設基準改善 執行部は「厚労省要請で訴えたい」

保団連第3回代議員会開催/協会 早坂会長が「資格確認書の一斉送付」要求/施設基準改善 執行部は「厚労省要請で訴えたい」

     早坂美都会長

全国保険医団体連合会(保団連)は6月29日、千代田区の都市センターホテルで2024~25年度第3回代議員会を開催し、全国の協会・医会から代議員や事務局が参加した。当協会からは、代議員として早坂美都会長のほか、加藤開、坪田有史、本橋昌宏の各副会長が代議員として参加した。
当日の討論では、全国から発言通告が145本寄せられた。協会からは、早坂会長が、「健康保険証存続とともに、資格確認書の一斉送付に取り組もう」と発言し、執行部は「国・自治体・保険者に対応を迫る働きかけを引き続き強めたい」と返答した。そのほか、①子ども医療費助成制度の拡充について、②オンライン資格確認システムのスマホ搭載に係る補助金全額を求める、③ベースアップ評価料ではなく診療報酬本体で賃上げを、④都内歯科診療所が直面する経営課題と解決に向けて、⑤実態調査の結果を踏まえた次期診療報酬改定への要望-の5本を文書で発言した。
フロア発言では、加藤副会長が「施設基準の細分化で会員は困っている。8月28日に保団連が行う厚労省要請で、施設基準の簡素化を訴えてほしい」と要望し保団連の考えを質した。執行部は「歯科の施設基準は、大規模な診療所ばかり潤うような改定となっている。また、技術と全く関係ないものが設けられている。これらを厚労省要請で訴えたい」と約束した。
その後、会務報告、24年度決算および監査報告を全会一致で可決し、「医療機関への緊急財政措置、期中改定を強く求める特別決議」を承認し、閉会した。

◆保団連特別決議はこちらから
 ➜hodanren.doc-net.or.jp/info/declaration/2025-06-29-2/

第53回定期総会記念講演/「歯科はマイナ保険証の必要性低い」 続く混乱、記者がひも解く/市の窓口整備に22億円計画も

第53回定期総会記念講演/「歯科はマイナ保険証の必要性低い」 続く混乱、記者がひも解く/市の窓口整備に22億円計画も

53回定期総会(616日)では、「マイナ保険証と保険証廃止~担当記者の2年間」をテーマに、東京新聞社会部編集委員の長久保宏美氏が記念講演を行った。

長久保宏美氏

長久保氏は、まずマイナ保険証の利用率について、20254月時点で全国平均は28.655%である一方、国家公務員共済全体の平均は29.57%、厚生労働省(第一)共済組合が33.0%、厚生労働省共済組合厚生労働本省本部が39.04%、総務省共済組合が33.52%と、国家公務員でも利用率が芳しくない状況を強調。また、東京都における電子処方箋の導入状況は24.7%(全国平均は29.3%)であり、歯科では東京が2%(全国は4%)と非常に低いことを指摘。医科、歯科の双方において、電子処方箋の普及が進んでいない実情を報告し、このまま導入が進まなければ、「政府が説明するようなマイナ保険証の利点を享受することはできない」とし、自らの考えを示した。

 

◆渋谷区・世田谷区 国保加入者全員に資格確認書送付

後期高齢者については、国会で野党議員の追及などもあり、267月まで暫定的に1年間延長して資格確認書を交付する措置が決まったと解説。さらに、渋谷区と世田谷区では、マイナ保険証の有無にかかわらず国保加入者全員に資格確認書を送付する対応を決めたことに言及し、両区長ともマイナ保険証を否定しているのではなく、制度の切り替え時期に受診トラブルがないようにとの配慮から、議会で承認を得たと説明した。その背景として、国保の標準システムの場合、マイナ保険証とのひも付けの有無確認の情報更新が1カ月に1回であるため、ひも付け解除手続き者の把握漏れなど、トラブルを防ぐための措置が必要であったことが挙げられた。

◆電子証明書の失効問題・更新手続きの混乱

マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書の有効期限が5年であり、25年度中に電子証明書の有効期限を迎え失効するケースが1,580万件、10年目のカード本体の更新を迎えて失効するのが1,200万件と予測されていることを説明。既に川崎市では電子証明書やカード本体の更新を希望する市民で窓口が大混雑となり、対応できない状況が発生した。このため、同市では窓口整備に22億円をかける計画があることを紹介した。

また、区市町村に代わり地方公共団体情報システム機構から発送されるお知らせの電子証明書更新当日の注意書き事項に、「健康保険証のサービスを利用できない場合があります」という文言がある点に触れ、「更新日は保険証として使えなくなる可能性がある」ことへの懸念を表明した。

◆「」表示問題「簡単には解決できない」

また、全国保険医団体連合会(保団連)の調査では、回答した医療機関の窓口の9割で何らかのトラブルがあり、一旦10割負担を患者に求めた事例が1,241件あることを挙げ、「資格情報のお知らせ」を単体で使おうとする患者も多いことが指摘された。さらに、技術的な問題として、戸籍の旧字、異体字などを扱う自治体系システムと医療系の中間サーバーの経由する運用では、文字コードの違いによる「」表示の問題があり、「これは簡単には解決できない」と述べた。

◆マイナ保険証の対応が廃業判断に影響

加えて、歯科では患者との関係性が構築されているケースも多く、「マイナ保険証による資格確認の必要性が低い」ことを指摘した。また、帝国データバンクの調査結果をもとに、歯科医院の倒産・廃業・解散件数は過去最多を記録しており、26年には1,000件を超えると予想されているなど、マイナ保険証対応のための出費が、高齢歯科医師の廃業への判断を早めている可能性も示唆した。

質疑では、マイナ保険証導入に関する国の費用対効果の問題などについて、デジタル化による医療費削減効果の試算がないことへの疑義や、電子証明書の失効に伴う更新手続きの負担増、重複診療の削減効果に対する疑問、個人情報の監視目的としての利用についてなど、多数の質問が挙がった。長久保氏は、まだ多くの不明点があるとしつつ、現状のトラブルが数年間続くと予測し、マイナ保険証問題が解決しない状態で、「資格確認書との併用が続くことで医療現場においての混乱はなくならないであろう」と述べた。

第53回定期総会記念講演の会場風景

PROFILE:長久保宏美(ながくぼ・ひろみ)

東京新聞編集局社会部編集委員/1961年、茨城県生まれ。1988年、中日新聞社入社。水戸支局、東京本社社会部、東京都庁キャップ、警察庁など担当後、宇都宮支局長、編集局デスク長を経て選挙調査室長。2018年から福島特別支局長。2020年から編集委員。「マイナ保険証」の問題など取材。

【IT相談室】 AIとは何か④/活用上の注意-最後は自分の責任で-

【IT相談室】 AIとは何か④/活用上の注意-最後は自分の責任で-

AIは、多くの分野に大きな影響をもたらす有益な技術革新です。非常に便利である反面、注意すべきこともありますので、今回はその点についてご説明します。

◆AIは嘘をつく

2024年末、アメリカの弁護士がAIで作成した架空の判例を訴訟資料として提出する事件がありました。AIはインターネット上の膨大な情報をこちらの指示通りにまとめる便利なものですが、間違った情報を提示することがあります。これはAIのハルシネーション(幻覚・妄想)と呼ばれ問題になっています。存在しない医学用語を作り出した例もあります。

◆AIは自信満々

「安定動作する最終安全版」「これなら大丈夫です」「完全防御バージョン」。これらは全て、当社でAIを利用してプログラミングを作った際の返答です。何度繰り返してもエラーがなくならないのですが、それでもAIは毎回このように答えます。

冒頭のようなAIによる架空の判例が問題になったことは初めてではなく、裁判所から警告が出されていたにもかかわらず、発生しました。その弁護士は、「AIに確認したところ、大丈夫だと回答があった」と弁明したそうです。

◆最終責任は自分で持つ

あるホームページにおける特定のページを要約して評価するようAIに指示したところ、回答がおかしいため確認すると、AIはそのページを読み込んでいなかったことがありました。AIの回答はそのまま信用できない面があります。特に、医療は人体・人命に直接関わる行為を含みますので、AIはあくまで参考程度に、最終的には自分で責任を持って確認する姿勢が重要です。

戦後80年 伝えたい記憶、戦時の記録 ―上―

戦後80年 伝えたい記憶、戦時の記録 ―上―

1945年8月15日、先の大戦が終わり、今年80回目の夏を迎えた。戦前生まれの世代が高齢化していく中で、戦時経験が語り継がれる機会は少なくなっている。

残された時間でいかに後世に語り継いでいくか―。ここでは「上巻」として、会員ご本人や家族の戦争体験を投稿いただいた中から3点をご紹介する。「下巻」は改めてご紹介させていただく。

◆私の戦前と戦中、そして戦後80年 渡辺 吉明(90歳)

渡辺吉明氏(90歳)

1941年、私が鶴巻国民学校(現・新宿区立鶴巻小学校)1年生になった年の128日、日本とアメリカの戦争が始まった。

この太平洋戦争開戦の翌春418日、現在も住む自宅周辺が米軍のB25爆撃機により空襲を受け、映画館などが燃えたことを鮮明に覚えている。近くの病院や早稲田大学の校舎にも被害が発生したことを後日知った。日本軍機の応戦は一切なく、当時は首都の制空権すら、まったく奪われていたようだ。

3年生になると、戦局の悪化と共に学童疎開が始まった。私は、父の郷里である熊本県天草郡宮地村切越にあった父の実弟の農家に縁故疎開することになった。父親と疎開する学童2名の行程は、東京・熊本間はEL(電気機関車)の直行列車に乗り車中一泊。熊本市内一泊。さらに、熊本から三角間はSL(蒸気機関車)列車で移動し、三角から天草へは九州商船での船旅となり、移動には二泊三日かかった。当時の天草は完全な離れ小島で、接岸設備がない島には商船から伝馬船に乗り換えて上陸した。

43年、小宮地国民学校に転入。戦時教育や一連の農作業の訓練を受けたが、あまり抵抗感はなかったと記憶している。ただ、天草島上空は、熊本方面に爆撃へ向かう米軍のB29爆撃機の空路であったため、登校しても空襲警報が鳴ると授業は中止、帰宅させられた。

45年815日敗戦。474月、天草郡の宮地新制中学校に入学。新制中学の教科書だった「あたらしい憲法のはなし」を学び、国民主権と戦争放棄に「若い血が沸き立ち」、私の戦後が始まった。ただ、私は戦前から相変わらず、家の前を走る都電ファンで、今でいう「鉄ちゃん」だった。

50年7月、疎開先より帰京。59年東京歯科大学卒業。89年、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)の時、被爆した広島電鉄(650形、現役)に初めて乗車。「運転席の裏には、〝被爆電車〟の説明板があり、原爆を風化させない地道な努力を感じました」「核兵器と人類は、絶対に共存はできません。核廃絶を訴えるのは当たり前」などの声を聞いた。私の趣味としての路面電車と反核への思いが結びついたのが、この広島での被爆電車との出会いだった。そして、被爆の実相を伝える〝語り部〟としての被爆電車に乗って、当時を追体験しながら親子で学ぶことを東京反核医師の会として企画し、原水禁世界大会での「動く分科会」実施を提案。02年に実現させ、24年に11回目を迎えている。

60年代には患者に誘われ、平和行進に参加して以来、「東京反核医師の会」の運動に役員として関わってきた。17年、「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のノーベル平和賞受賞を記念し、翌年11月に第28回「反核医師のつどい」を開催し、全国から194名が参加。「被爆の実相に立ち返り、核なき世界を目指す」ことを確認した。

被爆80年、私たち「東京反核医師の会」は、「日本政府に核兵器禁止条約の署名、批准を求める署名」に協力、賛同しています。

◆ビルマからの手紙 下田 祐里江(57歳)

生前の母は、毎年、桜の咲く頃に、長兄である叔父の供養のためと称して、腹違いの妹の叔母と靖国神社にお花見に出かけていた。その母も一昨年亡くなり、遺品整理をしていた時に、叔父からの軍事郵便はがきのコピーとビルマの土が入った袋が出てきた。叔父は召集令状を受け群馬からビルマに行き、そこで病死した。はがきの字は、教師になることを夢見ていた叔父らしく、とても達筆で、几帳面に整然とした文面であった。実母を3歳で亡くした末っ子の母を案じている内容と、「日本男児としてお国の為に頑張る」と、検閲を気にしている様子がうかがえた。ビルマで病気になり、具合が悪いことも書いてあり、心配させないようにと、明るい文章であったが、「故郷の群馬の利根川は氾濫していないか?」「皆は元気で仲良くしているか?長男なのに、実母の法要ができなくて申し訳ない」「利根川や赤城山を思い出し、やはり故郷は良い」と何度も書いてあった。

叔父の戦死通知書

戦死の通知書と遺骨の代わりの小さな石ころが一粒入った小さな木箱が実家に届けられた。当時、幼かった母は、気丈な祖父が、人目のつかない場所で、がっくりと肩を落とし泣いていた姿を見たと話してくれた。終戦の1年前のことである。もっと早く戦争が終わっていたらと、皆がそう思っていたに違いない。

私が歯学部に入学することが決まった時に、入学金を工面するため、母と一緒に群馬銀行に口座の解約をしに行った。その際、戦死した叔父のお墓(供養塔)にもお参りした。私の両親の世代は、物のない時代であり、青春時代に制約を受けて我慢を強いられてきた年代である。せめて晩年は我慢を強いらないようにと思い、母の希望通り在宅介護で見送った(こちらは、超大変だったが…)。母の出棺の際に、叔父のビルマからの手紙と土、私の歯科医師免許の写しも入れた。きっと、戦死した叔父に報告してくれているかな?

私は、自分が希望する歯科医師になれたことに感謝せずにはいられない。

 

◆『B』/西田 紘一(85歳)

西田紘一氏(85歳)

昭和15年生まれの私は、今年85歳になった。父は歯科医師で、私もその道に入り、60年が過ぎた。幼くして短い戦時下を経験した一人として、当時を振り返ってみた。

4歳の頃、最初に覚えたアルファベットは「B」だった。「B29」の「B」である。意味も分からず、大人たちの会話から拾い覚えたのだろう。焼夷弾の標的にされることを恐れ、灯火管制のもと、電灯を消す生活が日常だった。

私の生家は大阪府堺市の旧市街地にあり、一階が住居、二階が歯科医院の木造二階建てだったが、公共機関への延焼を防ぐため、強制疎開*1で取り壊された。戦火を逃れるように、およそ南へ18キロ離れた岸和田市久米田の里山に身を寄せた。そこから、堺大空襲*2の煙が遠くに上るのを見上げた記憶が残っている。

人的な犠牲も身近にあった。母の弟は東北帝大で冶金を学んだあと、出征した。しばらくして南方で戦死。葬儀の際に、堺市大道を行く私たちの葬列に、自転車を降りて頭を垂れられた人々の姿を今でも鮮明に覚えている。その後、母が中耳炎で亡くなり、さらに妹が栄養失調で命を落とした。サルファ剤もペニシリンも、ましてや食べ物もない時代だった。父と子の二人で寄り添って生きてきたが、その詳細な記憶は定かではない。ただ、まだ袖を通していない妹の小さなセーラー服が、きちんと畳まれて桐箪笥の奥に大切にしまわれていたことは、今でも忘れられない。

夏のある朝、隣組のおじさんが「今日の昼にHさん宅の庭に集まるように」と知らせに来た。玉音放送だった。子どもだった私には内容が正確に理解できず、近くの大人に尋ねた。「戦争終わったんや」との答えに、心がふっと軽くなった気がしたのを覚えている。「もうB29は飛んで来ないんだ」。

戦争は、生き残った父と私から、家や仕事場だけでなく、家族までも奪った。最大の被害者は父である。戦後育ちの私の苦労など、足元にも及ばない。

私は亡き父の年齢を超えたが、なおフリーランスの歯科医師として働ける場をいただいている。ありがたいことであり、墓終いで近くなった我が家の墓に、毎月手を合わせ、感謝の言葉を捧げている。

あれから80年、戦争や争いが未だ絶えない現代ではあるが、世界中の人々が穏やかな心を大切に、楽しく生きる日々が来ることを願うことしきりである。

  *1=建物疎開や学童疎開がある。空襲による被害を受け、民家から周囲の公共建造物への延焼を防ぐために建物を壊したのが建物疎開だった。

  *2=1945710日にあったこの空襲で、1,860人が亡くなった。(堺市ホームページより)

監事の藤野健正氏が勇退/引き続き協会「顧問」として会務協力

監事の藤野健正氏が勇退/引き続き協会「顧問」として会務協力

(左から)坪田有史氏、藤野健正氏

監事の藤野健正氏が、今総会を機に退任を表明した。藤野氏は1981年11月に協会会員となり01年6月に理事、11年6月に副会長、15年6月から再度理事を務め、19年6月から監事に。今後は協会顧問として、これまでの経験を活かしていただくことになった。

【IT相談室】 AIとは何か③/そのメリットは

【IT相談室】AIとは何か③/そのメリットは

AIの利用方法として、マウスピース矯正のようにAIが組み込まれたシステムを利用する方法と、AIサービスをご自分で利用する方法があります。

今回は、主にAIサービスをご自分で利用する場合におけるAIのメリットをご説明します。

◆AIは実現してくれる

例えば、予防歯科のパンフレットを作る時、これまでであれば原稿をまとめ、印刷会社やデザイナーに依頼します。AIを利用する際には、ラフ画像や指示を「ChatGPT」などのLLM(large language model/大規模言語モデル)に入力すれば、パンフレットの原稿が作成できます。できあがった原稿を印刷会社に送って、パンフレットを作成します。また、いくつかのキーワードを用意すれば、医院のブログも作成できます。上手に活用すれば、ホームページの更新頻度が上げられるかも知れません。Microsoft社の「Microsoft365 Copilot」というサービスでは、AIがPowerpointプレゼンテーションを作成する機能もあります。

◆AIはすぐやってくれる

パンフレットを印刷会社に依頼したり、ブログをスタッフに依頼すると、仕上がりまでに時間がかかります。AIは数分という単位で仕上げてくれます。修正を何度でも素早く対応してくれます。スタッフに仕事を依頼する時のような説得も不要です。

◆AIはいつでも助けてくれる

誤字脱字の校正などの簡単な作業から、医院の年間の事業計画のまとめや経営課題の解決まで、AIは幅広い知識で、いつでも、いつまでも相談でき、具体的なアウトプットをしてくれるアシスタントです。言葉で指示が出せること、少しずつ修正しながら仕上げていけることが最大のメリットです。

このように大変便利なAIですが、活用の上で注意すべき点があります。次回は、その点についてご説明します。

退任のご挨拶/8年間の感謝  東京歯科保険医協会前会長  坪田 有史

退任のご挨拶/8年間の感謝 東京歯科保険医協会前会長 坪田 有史

2012年1月に本会に入会させていただき、136月に理事、156月に副会長、176月に会長を拝命しました。会長職を務めさせていただいた8年間、会員の先生方、事務局の方々には大変お世話になりました。会長という責任のある立場で、会員そして患者、国民の視点を常に第一に考えるように心がけてきました。

8年間、さまざまな経験をさせていただき、充実した時間を過ごせたことに心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

新会長所信表明/歯科医療を正しく理解してもらうべき時代

新会長所信表明/歯科医療を正しく理解してもらうべき時代

◆世界に誇る国民皆保険制度を次世代へ

このたび、第53回総会におきまして、東京歯科保険医協会第6代会長に就任いたしました。誠に光栄に存じますとともに、その責務の重大さに身の引き締まる思いでございます。今後は一層の覚悟をもって職責を果たしてまいります。

「保険で安心して、きちんとした診療ができるようにしよう」―これは、1973年に当協会を設立された初代会長・小林昌平先生から受け継がれてきた、協会の根幹をなす理念です。私は、第2代会長・大多和彦二先生の時代に入会し、第3代会長・中川勝洋先生には新規開業時にご指導をいただきました。その後、第4代会長松島良次先生、第5代会長坪田有史先生のもとで理事、副会長と務めさせていただき、協会活動の現場を間近に見てまいりました。

今回、会長に立候補した背景には、いくつかの強い思いがあります。

まず1つ目に、歯科医療は国政と密接に関わっているということ。診療報酬の改定は国家予算に直結し、国会議員への要請活動や厚労省・都への働きかけは、医療を守るために欠かせない活動です。

2つ目に、保険医の先生方の生活を守るという視点も重要です。当協会が提供する休業保障制度や保険医年金、グループ生命保険は非常に優れた制度であり、もっと多くの会員に知っていただきたいと考えています。

3つ目に、メディアとの連携強化も課題です。広報活動を通じて、歯科医師の実情や課題を社会に広く伝えていくため、メディア関係者との関係性を一層深めていきたいと思います。

最後に4つ目として、事務局の働き方改革にも引き続き取り組み、負担軽減と業務の効率化を図ってまいります。

我々の目指す歯科医療は、「人生の最期の日まで自分の口でおいしく食べられること」、すなわち健康長寿社会の実現に貢献することです。近年、口腔環境が全身疾患に及ぼす影響が広く知られるようになり、歯科の重要性が再認識されています。まさに、歯科医療を正しく理解してもらうべき時代です。

一方で、少子高齢化と医療費増加により、1961年に始まった国民皆保険制度がいま、大きな岐路に立たされています。この世界に誇る制度を次世代に引き継ぐためにも、医療の質の向上を目指し、誰もが安心して医療を受けられる環境を守らねばなりません。

「食べることは生きること」、国民の皆さまが安心して歯科医療を受けられる社会をめざし、会員の皆さまと力を合わせて協会活動を一層推進してまいります。今後ともご指導・ご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

東京歯科保険医協会

6代会長  早坂美都

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東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)7月1日号

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)7月1日号

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【1面】
  1.第53回定期総会開催/新会長に早坂美都氏/女性で初 会員のため歯科医療の課題に対処
  2.第53回定期総会「決議」
  3.「骨太の方針2025」閣議決定
  4.「探針」
  5.ニュース・ビュー

【2面】
  6.「アットホームな雰囲気」初参加の会員らも懇談/記念講演はマイナ問題 東京新聞・長久保氏
  7.都議選/第1党・都民ファ 渋谷区・世田谷区の「資格確認書」発送対応に/「先進的な取り組みを横展開」東京歯科アンケートで回答
  8.まもなく施設基準などの“8月定例報告”
  9.東京都支援金情報/物価高騰緊急支援金要綱など公表
10.東京都支援金情報/生産性向上・職場環境整備等支援事業

【3面】
11.新会長所信表明/歯科医療を正しく理解してもらうべき時代
12.退任のご挨拶/8年間の感謝 東京歯科保険医協会前会長 坪田有史
13.今回選出された役員一覧《任期は第55回定期総会まで》
14.はじめまして!! 新理事紹介/小林顕「皆さまのお役に立てるよう」
15.監事の藤野健正氏が勇退/引き続き協会「顧問」として会務協力
16.懇親会参加来賓一覧
17.第53回定期総会祝電・メッセージ等一覧

【4面】
18.経営・税務相談Q&A No.430/従業員の夏季休暇と、有給の計画的付与
19.IT相談室/AIとは何か③ そのメリットは
20.7月会員無料相談のご案内
21.会員優待

【5面】
22.研究会・行事ご案内

【6面】
23.ここが“勘所”/CAD/CAM冠の特性 接着の注意事項も解説
24.第3回施設基準講習会を開催/外安全1・外感染2・口管強など研修要件対応 新規に届出を行う会員を対象
25.保険請求のルールも取り上げ/2025年度新規個別指導の計画概要を解説 新規開業医習会で「知りたいことが理解できた」
26.理事会だより
27.協会活動日誌
28.共済部だより

【7面】
29.医科歯科連携研究会を開催/地域連携のポイントは自ら足を運ぶこと
30.神田川界隈(理事・福島崇/大田区)
31.マイナ保険証でトラブル/オンライン資格確認できず
32.マイナ保険証問題/第1回メディア懇談会「患者への周知不十分」
33.通信員便り №151
34.投稿募集

【8面】
35.良い歯署名提出集会に400名超/保険でより良い歯科医療を求める請願署名19万1216筆を提出
36.一部自治体除き/都全域で所得制限撤廃へ 子ども医療費無償化の進捗
37.地域医療部長談話「子ども医療費助成制度の拡充を全国へ」

【インタビュー】山下 泰子氏(文京学院大学名誉教授・法学博士)/後編

【インタビュー】目標は女性差別撤廃条約“選択議定書”批准/ネパールでの女性教員育成も(後編)/山下 泰子氏(文京学院大学名誉教授・法学博士)

(左から)早坂美都副会長、山下泰子氏

 

「戦後民主主義教育の洗礼を受けた」―。戦中・戦後と歴史的な社会の変化とともに幼少期を過ごす中で、自らの人権意識が醸成されたと語る文京学院大学・山下泰子名誉教授(86歳)。前編に引き続き、女性差別撤廃条約の選択議定書批准の課題ほか、自身が奔走するネパールでの活動について聞いた。聞き手は、協会の早坂美都副会長。

◆ 前編から続く:【インタビュー】山下 泰子氏(文京学院大学名誉教授・法学博士)/前編 はここをクリック )

―選択議定書の批准について、政府による踏み込んだ議論が行われていないのが現状なのかもしれませんね。

2024年10月の国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)での建設的対話の後、「総括所見」が示されました。まず、第9項で、「委員会(CEDAW)は、2020年に採択された第5次男女共同参画基本計画において、締約国(日本)が 『女性差別撤廃条約の選択議定書について真剣な検討を進める』としていることに関心をもって留意する。しかし、この問題に関して省庁間研究会を23回開催したにもかかわらず、締約国が選択議定書の批准の検討に時間をかけすぎていることを遺憾に思う」と懸念を表明しました。その上、第10項で、「締約国に対して、委員会の前回の勧告に沿って、選択議定書の批准に対するいかなる障害にも速やかに対処し、取り除くよう勧告する」「締約国に対し、本条約、委員会の一般勧告および選択議定書の下で委員会が決定した先例について、これらが司法手続きにおいて全面的に考慮されるために、裁判官、弁護士、法執行専門職の能力構築を強化するよう勧告する」と、2つを勧告したのです。私たちは今後、日本政府による勧告の実施をしっかりモニターしなければなりません。

―ジェンダー平等における日本と海外の違いとは。

日本の平等法制は、妥協の産物だといえます。例えば、男女雇用機会均等法は”男女平等法”ではありません。候補者男女均等法も理念法なので、政党を拘束するものではなく、衆議院の女性議員比率は15.7%で、世界185カ国中142*に低迷しています。フランスではパリテ法で政党に候補者数を男女同等とすることを義務づけており、国連組織におけるジェンダー平等の目標も5050です。

ジェンダー平等に向けて、日本に求められているのは、①女性差別撤廃条約選択議定書の批准、②人権侵害を扱う政府から独立した国内人権機関の設置、③包括的反差別法の制定の3つです。

―歯科医療界に置き換えると、近年、女性歯科医師の割合が増えていますが、組織のトップは依然として男性という医療機関が多いと思われます。

確かにそこも変えないといけませんね。第5次男女共同参画基本計画では、指導的地位に就く女性の割合の目標値を30%程度と定めており、そうしたことを念頭に置かなければならないと思います。また、男性歯科医師が出産、育児休暇を取れる環境を作ることも大切です。大谷翔平選手でさえ、父親休暇を取りました。家事、育児、介護、家庭責任は夫婦二人で担わなければなりません。

―女性差別撤廃条約の選択議定書への批准や、所得税法56条の改正などを含むいわゆる「ジェンダー4署名」と、それらと歯科医師との関わりについて教えてください。

1953年に平塚らいてうらが創設した日本婦人団体連合会(婦団連/小畑雅子会長)を中心に取り組む4つの署名が「ジェンダー4署名」です。日本がもっとジェンダー平等で男女ともに生きやすい社会になるために必要な要件を国会に請願するものです。例えば、所得税法第56条の改正は、家族で医院を営む歯科医師にも関係するのではないでしょうか。配偶者や家族が関わっても事業経費として認められず、それが女性の経済的自立を妨げていると女性差別撤廃委員会(CEDAW)が懸念を示しています。2024年の総括所見第45項(a)は、「女性の家族経営企業での労働を認めるよう所得税法第56条を改正すること」を、勧告しました。これは、ジェンダー4署名の1つの成果です。

―山下先生は、ネパールでも活動されているそうですね。

これまでにネパールを65回ほど訪問してきました。1999年には半年間かけて、ネパール全土を調査し、山奥の学校には女の先生がおらず、女の子が学校教育から見放されている現状を目の当たりにしました。女の先生が学校にいれば、女の子が学校に行きやすくなるという考えのもと、女性教員の養成を始めました。山村から学びにくる学生のためにポカラというところに女子学生寮・さくら寮をつくり、ポカラ女子短大と連携して教員養成課程を創設。通算14年間で100人の山村の女性教員を育てました。東京歯科保険医協会の高山史年理事ご夫妻は毎年、ネパール・ポカラで開催する「さくら寮卒業生教員のフォローアップ研修」にボランティアで参加し、女性教員の歯科検診・治療と「歯の大切さ、歯みがきの仕方」を講義していただいています。歯科医師のいない地域に住んでいる女性教員にとって、誠に貴重な機会で大変喜ばれています。私たちも、とっても感謝しています。

ネパールでの活動には、当協会の高山史年理事(前列中央)も参加している

―最後に今後の目標を。

今年は、日本が女性差別撤廃条約を批准して40年目にあたります。なんとかして、“選択議定書の批准”を実現したいと思っています。女性の権利が国際基準になることで、人口減少による労働力不足を緩和することができます。次世代にジェンダー平等な明るい未来を残したいです。

―ありがとうございました。

*=内閣府男女共同参画局「女性活躍・男女共同参画の現状と課題」(20254月)より

Profile

やました・やすこ/東京都生まれ。法学博士、文京学院大学名誉教授、ジェンダー法学会元理事長。国際女性の地位協会名誉会長、日本ネパール女性教育協会理事長、男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰(2015年)、外務大臣表彰(2017年)。

はじめまして!! 新理事紹介/小林顕(こばやし  あきら) 理事

はじめまして!! 新理事紹介/小林顕(こばやし あきら) 理事

◆「皆様のお役に立てるよう」

去る6月15日に開催されました第53回定期総会における役員選挙により、新しく理事に就任いたしました。会員歴37年、広報・ホームページ部員を13年務めさせていただきましたが、協会運営については新参者です。先輩方のご指導の下、皆様のお役に立てるよう精進して参ります。よろしくお願いいたします。

教えて!会長!! Vol.95「マイナンバーカードに関する有効期限」

教えて!会長!! Vol.95「マイナンバーカードに関する有効期限」

Q マイナンバーカードに関する有効期限について注意喚起されているようですが。

 保団連(全国保険医団体連合会)が5月に、マイナ保険証に関する本年24月の調査結果を発表しました。その結果、有効期限切れのトラブルが31%あり、202489月に行った前回調査の14.1%から2倍以上に増えていたことが明らかになりました。

厚生労働省が示した資料を以下に紹介します。

・マイナンバーカードには、①発行時から10年(未成年者は5年)のカード本体の有効期限と、②発行時から5年の電子証明書の有効期限の2種類が設定されている。

・マイナ保険証の利用に当たっては、マイナンバーカードの電子証明書を用いて本人認証を行なっているが、正確かつ電子的な資格確認だけでなく、よりよい医療の提供のためには、電子証明書を期限内に適切に更新していただく必要がある。

※電子証明書の有効期限が切れると、マイナ保険証としてだけでなく、マイナポータルを通じた電子申請や、コンビニ交付などの各種手続でも利用ができなくなる。

・なお、マイナンバーカードの電子証明書の有効期限は、(中略)有効期限切れとともに、医療保険の資格自体が喪失するものではない。

有効期限切れのトラブルが増えた一因としては、25年はマイナンバーカード制度が始まって10年目、さらにマイナポイント事業開始から5年目に当たることがあります。有効期限切れを迎える方は、約2千800万人と報告されています。

 Q マイナンバーカードに関する有効期限は、広く周知されているのでしょうか。

A 私が診療している患者さんにお聞きしたところ、大半の方はご存じではなかったです。マイナ保険証で受診される患者さんと我々医療機関にとって、この問題が日常の保険診療の障害になる可能性は高いといわれています。これらの危惧への対策が一つの理由だと推察していますが、厚労省は43日、マイナ保険証の有無を問わず、75歳以上の全員に「資格確認書」を配布することを決めました。経年的に発生するトラブルからみても適切な判断と評価しますが、そもそも現行の健康保険証を残して徐々に移行することにすれば、無駄な税金を使わなくて済んだのに…。と思わずにはいられません。

さらに世田谷区と渋谷区は、すべての国民健康保険加入者に「資格確認書」を配布することを発表しました。これを受けて、福岡資麿厚労大臣は516日に両自治体の対応に異論を述べました。国は、健康保険証を発行するのと同じ状況になる世田谷区と渋谷区の動きを望ましくないと考えているのでしょう。しかし自治体としては、一斉送付した方が住民の混乱を防ぎ、行政コストが減少すると判断したのでしょう。私は、都内のそのほかの自治体にこの流れが広がることを期待したいです。

◆お知らせ

突然ですが、この「教えて!会長!!」は今回が最終回となります。178月1日発行の本紙第569号に第1回を掲載させていただいてから約8年間、休むことなく会員の先生方、また全国の関係者の方々に向け、歯科医業・医療に役立つ情報を毎月執筆してきたつもりです。最後にこの場をお借りして、御礼をお伝えします。長い間、ご高覧をいただきありがとうございました。そして、今後も東京歯科保険医協会へのご理解・ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

東京歯科保険医協会

会長 坪田有史

※「東京歯科保険医新聞」2025年5月号掲載

【お知らせ】デンタルブックの復旧について

サーバーの不具合により、デンタルブックにログインできない状況が続いておりましたが7月4日(金)午後2時現在、復旧いたしました。

会員の皆さまにご迷惑をおかけしましたことを深くお詫びいたします。

デンタルブックには以下からログインできます。
▼デンタルブックへログイン


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【お知らせ】デンタルブックの不具合について

【お知らせ】デンタルブックの不具合について

7月4日(金)午前10時現在、サーバーの一部に不具合が発生し、デンタルブックにログインできない状況となっております。
復旧に向けて作業をしており、復旧次第改めてお知らせいたします。

会員の皆さまにはご迷惑をおかけしており、誠に申し訳ございません。

※【7月4日14時 更新】デンタルブックは復旧いたしました。ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫びいたします。(【お知らせ】デンタルブックの復旧について

第53回定期総会開催/新会長に早坂美都氏 女性で初/会員のため歯科医療の課題に対処

第53回定期総会開催/新会長に早坂美都氏女性で初/会員のため歯科医療の課題に対処

協会は615日、新宿区内のTKP市ヶ谷カンファレンスセンターで第53回定期総会を開催し、会員ら47人が参加した。2017年から48年にわたり会長を務めた坪田有史氏が退任し、新たに会長として選出された早坂美都氏(左写真)が抱負を述べた。第6代会長となり、協会設立から約半世紀の中で初めての女性会長となった。

◆各議案が承認/会員からは要望も

役員改選では立候補した23名全員が信任選出。現職の役員に加え、小林顕氏が新理事に就任した。また、これまで副会長や広報・ホームページ部長などを歴任してきた藤野健正監事が退任し、新たに顧問となった。

その後に行われた臨時理事会で早坂新会長ほか、加藤開、坪田有史、馬場安彦、本橋昌宏、山本鐵雄の各氏が副会長に選出された。

当日は併せて、東京新聞編集局社会部編集委員の長久保宏美氏による記念講演が行われた。続く懇親会では、会員や関係者らが交流を深めた。

定期総会の冒頭、坪田氏は会員をはじめ、役員、部員らにこれまでの感謝の意を表し、会長職を退く意向を表明した。その後、池川裕子理事が関係団体などから寄せられたメッセージを読み上げた。また、議長には、島倉洋造氏、橋村威慶氏がそれぞれ選出され、議事を進行した。

1号議案「2024年度の活動報告の承認を求める件」、第2号議案「2024年度決算報告の承認を求める件」「会計監査・会務監査報告」を行い、いずれも賛成多数で承認された。

続いて、第3号議案「2025年度活動計画案の承認を求める件」、第4号議案「2025年度予算案の承認を求める件」が提案され、こちらも賛成多数で承認された。第3号議案には、26年度診療報酬改定に向けた厚生労働省への働きかけや、従業員の雇用確保など歯科医院経営を守る取り組みを盛り込んだ。また、マイナ保険証問題を念頭に、全国民へ「資格確認書」の発行を国などに求めていくことも明記した。

さらに、第5号議案「役員改選の件」では役員選挙で理事、監事が選出されたほか、顧問、事務局長がそれぞれ承認された。

最後に第6号議案として、「決議採択の件」も賛成多数で承認された。

各議案に対し、参加した会員からは、医療機関への支援金の給付を東京都へ要望してほしいという声や、事務局体制や会員サポート体制の維持を求める意見などが出され、それぞれ執行部が返答した。

「アットホームな雰囲気」初参加の会員らも懇親

◆記念講演はマイナ問題 東京新聞・長久保氏

定期総会終了後、長久保氏による記念講演が行われた。テーマは「マイナ保険証と保険証廃止―担当記者の2年間」で、55人が聴講した。

長久保氏はマイナ保険証問題が取り沙汰されて以来、最前線で取材を続けてきた。講演では、多くのマイナンバーカードの電子証明書が2025年に有効期限を迎える問題については、既に川崎市の窓口で対応できない状況が起きていることを説明。一方で全国的にマイナ保険証の利用率は低迷しており、「メリットが十分に活かしきれていない」と指摘した。本講演の模様は本紙8月号で詳報する予定。

◆新旧会長が抱負と謝辞

会員や関連団体、議員らが参加した懇親会には、63人が集った。新会長お披露目となった冒頭の挨拶で早坂氏は「国民の皆さまが、より一層安心して歯科医療を受けることができるよう、さらなる努力を続ける」と抱負を述べた。その後、全国保険医団体連合会の天谷静雄副会長、東京保険医協会の須田昭夫会長らも登壇し、祝辞を送った。

その後、早坂新会長から坪田有史前会長に退任の花束が贈られた。坪田氏は「患者、国民のために思考を巡らせてきた」と会長任期を振り返り、「これからの協会もよろしくお願いします。本当に8年間ありがとうございました」と謝辞を述べた。

◆初参加の会員「協会はアットホーム」

会場には、初めて定期総会に訪れた会員の姿もあった。佐藤洋一先生(豊島区)は、「若手や新規開業の先生によりプッシュ型のPRができれば、より協会が発展していくのではないか」と、さらなる協会活動に期待。定期総会については「アットホームな雰囲気で会員の先生方と気軽に意見交換ができる楽しい時間を過ごせました。また次回も参加したい」と笑みを浮かべた。また、扇山隆先生(江戸川区)は、数年来続く健康保険証廃止問題をきっかけに、協会活動への関心が高まったと明かし、協会活動の報告や今後の見通しがまとめられた議案書を手にし、「活動の様子が詳しく載っているので、これを読むことが大切だと思った。参加してみなければわからないこともたくさんあった」と初めて足を運んだ定期総会を振り返った。

訪問のすゝめ/久しぶりの来院、変わりきった患者…歯科訪問診療を決意/講習会参加で「思い強くなった」

訪問のすゝめ/久しぶりの来院、変わりきった患者…歯科訪問診療を決意/講習会参加で「思い強くなった」

医院の歯科訪問診療パンフレットを手にする久永常義先生

「やってみると、何とかなった」―。久永常義先生(51歳/世田谷区)は昨年夏、歯科訪問診療の一歩を踏み出した。祖父は晩年、歯科訪問診療を受けながら最期を迎え、「いつかは自分も訪問を」という想いを抱いてきた。そんな時、久しぶりに来院した患者の姿を目の前に、ついに歯科訪問診療を決意。歯科訪問診療を始めるまでの経緯や経験について聞いた。

―歯科訪問診療を始めたきっかけを教えてください。

祖父が歯科の訪問診療を受けており、“口腔内をきちっとして旅立つ”という生き方が深く印象に残っていました。「どこから始めよう」と迷っている時に協会の「これから始める歯科訪問診療講習会」に参加したんです。コロナ禍も落ち着き、「そろそろかな」と思い、昨年歯科訪問診療のパンフレットを作成し、医院に置き始めました。

―最初の歯科訪問診療まではどのように。

5年ほど来院していた90歳代の患者さんが、パタリと来院されなくなったんです。その後、1年ほど経ち、久しぶりに来院すると付き添いが必要なほどすっかり変わりきっていました。一人暮らしという状況もあり、歯科訪問診療について説明した。

―事前にどのような準備をされましたか。

「高額な機器を揃えた」という話も聞きますが、協会の講習会では「診療所のような処置はできないことを前提に、少しずつ準備をしていく」とお聞きしていたので、準備の際に意識しました。歯科訪問診療の経験がある歯科衛生士もいたので、助言してもらいましたね。具体的には携帯型マイクロモーターや、簡易的な吸引器などを用意して、クリニックにあるものを持って行こうとすると忘れてしまうので、専用の訪問セットを用意しています。移動は自家用車で、移動が増えれば駐輪しやすい自転車も必要かなと考えています。

市販の保冷バッグを活用した「訪問セット」

◆「孤独なんだ」訪問先での気づき◆

―訪問前に患者さんの周囲の方々と連携はされましたか。

事前にケアマネジャーさんとFAXで2、3回やり取りを重ね、現状の体調などを把握してから診療に臨みました。もともと5年ほど来院していた患者さんだったので、やりやすさはありました。

―最初はどのような診療を。

診療所の昼休みを利用してスタッフと一緒に伺い、口腔内の洗浄と義歯調整を行いました。診療の前後では、プライベートのお話もたくさんしました。自宅には会話できるコミュニケーションロボットが置かれていて、「きっと孤独なんだ」と感じ、処置だけして帰るのはかわいそうだという思いも抱きました。

―初めての歯科訪問診療はいかがでしたか

訪問先でできることには限界があると感じました。それでも、患者さんが喜んでくれるならいいかなと思います。また、顔を見ればお互いに分かる関係ですから、歯科訪問診療をしてみて患者さんが安心して喜ばれていることがよく伝わりました。また、ご家族と一緒に通院されている高齢の患者さんには、「通うのが難しくなったら訪問しますよ」と声をかけるようにしています。遠慮されて「わざわざ来ていただかなくても…」と言われないよう、皆さんへ丁寧に説明しなければいけないと思っています。

◆講習会参加…歯科訪問診療の“同志”を前に意欲◆

―協会の講習会を受講してみて。

歯科訪問診療を志す先生の熱意が伝わり、「自分もやっていくんだ」という思いが強くなりました。手技を深めたり、実際の歯科訪問診療を見学できる機会があればぜひ参加してみたいですね。

―最後に歯科訪問診療を始めようと思っている先生にメッセ―ジを。

「行かなきゃ始まらない」というのが一番の実感です。行ってみなければ患者さんの状況が分からないし、そこで状況が掴めれば「これが必要だ」と、その次に繋がるので、困っている患者さんに何の手立ても打たないよりはいいのではないかと思います。

―ありがとうございました。

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第53回定期総会 新たな役員を選出

今回選出された役員一覧/任期は第55回定期総会まで

6月15日開催の2025年度第53回定期総会では、第5号議案として「役員改選」が行われ、立候補した23名全員が信任選出された。さらに、総会後に開催した第5回臨時理事会で、理事の中から会長、および5名の副会長を互選。会長には、早坂美都氏が協会史上初の女性会長として新任されたほか、副会長には山本鐵雄氏、加藤開氏、坪田有史氏、馬場安彦氏、本橋昌宏氏が選出された。また、顧問と事務局長も承認された。

今回決まった役員は以下の各氏で、任期は第55回定期総会までとなっている。

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)6月1日号

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)6月1日号

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【新聞6月号】

【1面】
 1.議員要請 「歯科医療費の総枠拡大」と「保険証の存続」を/歯科の重要性・保険証発行停止の問題に理解を求める
 2.76%が保険証復活・併用望む/マイナ保険証トラブル調査
 3.知ってトクする!パンフ/ご希望はお早めに
 4.東京歯科保険医協会第53回定期総会ご案内
 5.「探針」
 6.ニュースビュー

【2面】
 7.2025年度指導 個別指導が10件増加/協会の開示請求で指導計画明らかに
 8.世田谷区・渋谷区は「資格確認書」の一斉送付を決断 188万筆超/保険証の存続で署名が集まる
 9.6月22日は都議選 都議会の会派は、歯科をどう見ているのか?/歯科関連の予算要望項目から見る会派の主張

【3面】
10.解説 歯科医療費総枠拡大の「壁」/その打開策は署名活動と議員要請に
11.歯科用貴金属改定情報(6月~)/金パラほか全て引き上げに
12.会員寄稿 声「“複雑難解”診療報酬改定を振り返って」扇山隆/江戸川区

【4面】
13.訪問のすゝめ 久しぶりの来院、変わりきった患者…歯科訪問診療を決意/講習会参加で「思い強くなった」久永 常義 先生/世田谷区
14.6月会員無料相談のご案内

【5面】
15.研究会・行事のご案内

【6面】
16.インタビュー 文京学院大学名誉教授・法学博士・山下 泰子さん/目標は女性差別撤廃条約“選択議定書”批准 ネパールでの女性教員育成も(後編)
17.共済部だより

【7面】
18.経営・税務相談Q&A No.429「就業規則の作成」―その流れや注意点―
19.教えて!会長!! No.95/マイナンバーカードに関する有効期限
20.理事会だより
21.協会活動日誌

【8面】
22.退き際の思考 歯科医師をやめる(伊藤栄子さん× 吉田真理さん)/“52年ぶり”涙の再会 同窓の奮闘に活力「パワーもらった」
23.神田川界隈「時の透き間」に(理事・川戸二三江/渋谷区)

【9・10面】
24.共済チラシ

【付録】
25.冊子「知って得する!医療・介護・税金の負担軽減策」

教えて!会長!!  Vol.94「歯科衛生士が行う浸潤麻酔」

教えて!会長!! Vol.94「歯科衛生士が行う浸潤麻酔」

Q1 歯科衛生士が行う浸潤麻酔が話題になっています。

A1 本年2月に開催された厚生労働省の第2回歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会で、「歯科衛生士が行う診療補助としての浸潤麻酔行為について」と題して検討が行われ、資料が公表されました。そこでは「歯科衛生士が浸潤麻酔行為を実施するために必要な研修(事務局案)」として講義、実習の内容が示されました。多岐にわたるその内容は、(一社)日本歯科麻酔学会の認定制度である「日本歯科麻酔学会認定歯科衛生士」あるいは(一社)日本歯科医学振興機構の認定制度である「臨床歯科麻酔認定歯科衛生士」が注目されました。

Q2 歯科衛生士が行う浸潤麻酔の位置付けは。

A2 「歯科衛生士法」では、歯科衛生士が行える業務は、予防処置・診療補助・歯科保健指導です。歯科医師の診療を補助する診療補助は、歯科医師の監督・指示のもとに行います。したがって、歯科衛生実地指導料を算定する際、歯科医師から歯科衛生士への指示内容の要点をカルテに記載しなければならないのです。歯科衛生士の診療補助は、歯科医師のみができる「絶対的歯科医行為」に対して、「相対的歯科医行為」と呼ばれます。

歯科衛生士の局所浸潤麻酔行為は、過去にもさまざまな議論や意見がありましたが、現在の解釈は、診療補助の範囲内であり、歯科医師の監督・指示のもとで行うことは可とされています。具体的な範囲として厚労省は、「歯肉縁上および歯肉縁下の歯石除去(SRP)時の疼痛除去を目的とする場合としてはどうか」と示しています。その際の理由として、「骨に作用させる必要はない」「歯髄に作用させる必要はない」「1.8mlカートリッジ1本以内の傍骨膜注射で対応可能」としています。

Q3 研修の具体的な内容は。

A3 厚労省が示している必要な研修は、歯科衛生士養成施設などで全て履修できることが望ましいです。示されている具体的な研修内容は、講義で合計840分、実習で合計270

分とされ、合わせると18時間30分となります。

検討案の段階ではありますが、講義では、「倫理と法規制」「生理学」「局所麻酔薬の薬理学「局所麻酔のための解剖学」「バイタルサイン」「医療面接」「局所麻酔法」「歯科局所麻酔時の局所合併症と対応」「歯科治療中の全身的偶発症と対応」。実習では、「浸潤麻酔」「バイタルサイン・生体情報モニタリング」「急変時の対応」「シナリオシミュレーション(血管迷走神経反射・アナフィラキシー・過換気症候群)」です。これらは非常に広範囲にわたる充実した内容といえます。換言すると、歯科衛生士が局所浸潤麻酔行為のために学習するボリュームは、なかなかの量だという感想を持ちました。

歯科衛生士の診療補助として対応可能な行為が増えることは、歯科医業面や歯科衛生士のモチベーションアップにつながるなどのメリットがあるでしょう。前述した「日本歯科麻酔学会認定歯科衛生士」、あるいは「臨床歯科麻酔認定歯科衛生士」を取得するのは、患者、歯科医院、指示した歯科医師、さらに歯科衛生士自身にとって安全に浸潤麻酔を行うことの担保となると思います。しかし、これらの資格を得なければSRP時に歯科衛生士の局所浸潤麻酔ができない訳ではありません。また、万一何らかの事故が生じてしまった場合、当該歯科衛生士ならびに指示・監督した歯科医師に責任が生じることは言うまでもありません。

会長 坪田 有史

※「東京歯科保険医新聞」2025年5月号掲載

【IT相談室】 AIとは何か②/歯科医療界での活用

【IT相談室】 AIとは何か②/歯科医療界での活用

AIはここ数年間で大きく進化・進歩し、歯科医療分野でも活用が進んでいます。今回はAIと歯科の具体的な関わりを解説します。

◆歯科CAD/CAMとAI

歯科関連でもAIは広く利用されています。具体例としては、セレックなどの歯科用のCAD/CAMシステムです。CAD/CAMとは、Computer Aided Design/Computer Aided Manufacturingの略称で、コンピューターで制御された工作機械ですが、口腔内をスキャンして修復物を作る過程で、設計などの手順の中でAIが手助けをしてくれます。

◆マウスピース矯正とAI

また、インビザラインなどのマウスピース矯正のシステムでも同様です。マウスピース矯正のシステムでは、そのシステムで矯正が可能かどうかの診断から、診療計画の立案、矯正治療を進める各ステップのマウスピースの設計、矯正の進行によるシミュレーションなど、全般にわたってAII が利用されています。AIを利用してビジュアルに各工程が確認できるシステムが、患者にも歯科医師にもわかりやすかったことが、マウスピース矯正が普及した一因といえるでしょう。

◆自分で利用するAI

このように歯科でもAIは利用されていて、前回ご紹介した読影でも歯科用の診断システムが出てきています。確かにこれはAIの利用ではありますが、特定のシステム内で固定した用途で使うものであり、AIであるという実感が湧きづらいかもしれません。

次回は、皆さまが気軽に利用できるAIサービスを使った身近な活用法をお伝えします。

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)5月1日号

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)5月1日号

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【新聞5月号】

 

1面】

 1.「歯科医療費の総枠拡大を」国会議員へ要請/歯科の諸課題・保険証発行終了後の問題に理解求める

 2.5月末までに再届出をしなければ・外安全1、外感染1 (旧外来環)・口管強(旧か強診)の施設基準が失効してしまいます!

 3.東京歯科保険医協会第53回定期総会ご案内

 4.本会役員の任期満了に伴う役員選挙の公示について/東京歯科保険医協会 選挙管理委員会

 5.「探針」

 6.ニュースビュー

 

2面】

  7.<マイナ保険証>スマホ搭載時期を検討/「」などトラブル対策は進展なし

 8.来年7月まで全ての後期高齢者に資格確認書/アナログ・デジタル併用が1年延長

 9.療担規則義務付けの院内掲示事項/531日までにウェブサイトへの掲載を

10.忘れていませんか?施設基準の再届出

 

3面】

 11.OTC類似薬の見直しで起きる歯科の影響/痛み止め・軟膏・うがい液へ波及必至

12.会員寄稿「声/歯科医師減少時代克服のカギは女性歯科医師の活躍に」船木勝介(ふなき・かつゆき)/練馬区

13.グループ生命保険PR

14.「お詫びと訂正」

 

4面】

 

15.経営・税務相談Q&A No.428「試用期間中の労務の注意点解雇と辞職への対応

16.5月会員無料相談のご案内

17.第40回保団連医療研究フォーラム演題募集

 

5面】

 18.研究会・行事のご案内

 

6面】

 19.保険でより良い歯科医療を/署名提出への“4ステップ

20.教えて!会長!!No.94/歯科衛生士が行う浸潤麻酔

21.歯科用貴金属改定/6月から金パラ引き上げ 3299円へ(+2.1%)

 

7面】

 22.解説/ベア評価料 改善計画書・実績報告書提出期限示される

23.IT相談室「AIとは何か歯科医療界での活用」

24.通信員便りNo.150

25.理事会だより

26.協会活動日誌

 

8面】

 27.インタビュー 文京学院大学名誉教授・法学博士・山下 泰子さん/低迷する日本のジェンダーギャップ解消へ「根本的に転換できる」(前編)

28.神田川界隈「20XX年 歯科技工士がいなくなったら」(理事・森元主税/北区)

 

910面】

 29.共済募集キャンペーン折込

 

1112

 30.運動署名折込

【インタビュー】山下 泰子氏(文京学院大学名誉教授・法学博士)

【インタビュー】低迷する日本のジェンダーギャップ解消へ 「根本的に転換できる」(前編)/山下 泰子氏(文京学院大学名誉教授・法学博士)

 「戦後民主主義教育の洗礼を受けた」―。戦中・戦後と歴史的な社会の変化とともに幼少期を過ごす中で、自らの人権意識が醸成されたと語る文京学院大学・山下泰子名誉教授(86歳)。社会に出た時の経験をきっかけに、ジェンダー法の道を歩むようになり、現在も女性差別撤廃条約の選択議定書批准を目指し、精力的に活動する。2回にわたり、日本のジェンダー問題や課題解決に向けた取り組みについて聞いた。聞き手は、協会の早坂美都副会長。

―ご自身の生い立ちやジェンダー問題に関心をもったきっかけを教えてください。

1945年に国民学校に入学し、終戦を迎えた8月15日を境に教科書を墨塗りして使うようになり、小学生ながらに価値観の転換を体感しました。1947年に日本国憲法が施行され、基本的人権や男女平等についてしっかり学びました。そんな中、中央大学法学部を卒業しても、4年制大卒の女性の就職は厳しく、ようやく採用された貿易会社も、社員教育から男女差別がありました。毎日、お茶くみと社長のお昼のお運びに明け暮れて、1年で退職。大学院に戻って国際人権法を学ぶことにしました。

戦時中の教科書―終戦とともに価値観の変化が訪れた

―社会の変遷やご自身の原体験が今の活動に通じているのですね。その後はどのような歩みを。

1979年に国連で女性差別撤廃条約が採択されたのを機に、条約に関する研究を始めました。1985年5月、国会で女性差別撤廃条約批准案件の審議中に、国際法学会で「女子性差別撤廃条約における男女平等」を報告。同年7月、ケニアのナイロビで開催された第3回世界女性会議NGOフォーラムに参加し、圧倒的な女性たちのエネルギーに接し、「女性の力が社会を変える」と確信したことから、女性差別撤廃条約を研究テーマに決めました。振り返ると、人生のターニングポイントで社会的な矛盾を感じたことが、私を女性差別撤廃条約の研究に向かわせたのだと思います。

―改めてジェンダーについて教えてください。
ジェンダーとは、「生物学的な性・セックス(sex)」に対する、「社会的・文化的に構築された性別(gender)」とされています。ジェンダーの概念は、日常生活の中に組み込まれ、考え方や振る舞い方の中に潜む性差別=男性優位の考え方を形成し、家父長制の基盤となっているものだと考えます。しかし、これは人間が生み出したものなので、根本的に転換できるはずです。国際社会におけるジェンダー平等に向けた取り組みの加速に反して、日本は取り残され、世界経済フォーラムの「Global Gender Gap Report」2024年版で、世界146カ国中118位と低迷しています。

―日本の課題はどこに。

2024年10月、日本における女性差別撤廃条約の実施状況の審議が、国連女性差別撤廃委員会(CEDAW、於ジュネーブ)で行われました。その結果、60項目の「総括所見」が日本政府に示されました。総括所見には、2年以内に勧告を実施するための措置を取り、CEDAWに報告しなければならない項目が4つあります。
1つ目は、選択的夫婦別姓の導入。夫婦の姓については、総括所見で民法の改正を要請されるのが今回で4回目です。1996年には、法制審議会の改正要綱までできていますが、それからでも29年が経過しており、対応が遅すぎます。約95%もの女性が旧姓を失って困難に直面している事実に向き合うべきです。
2つ目は、暫定的特別措置として女性の立候補時の供託金の減額。ずばり「女性が国会議員に立候補するために必要な300万円の供託金を減額すること」を勧告しています。
3つ目は、緊急避妊を含む安価で近代的避妊法へのアクセス。16、17歳の少女が避妊薬を入手するために親の同意を得るという要件を撤廃することを含め、すべての女性と少女に、緊急避妊薬を含む安価な近代的避妊法への適切なアクセスを提供することを勧告しています。中絶の方法にも問題があります。
4つ目は、妊娠中絶における配偶者の同意要件の削除。世界203カ国・地域のうち、配偶者の同意が法的要件とされているのは、日本ほか11カ国のみ、G7では日本のみです。国際基準から遅れている日本の状況を変えなければなりません。

―女性差別撤廃条約に関する運動の展開を。

これまでに「女性の権利を国際基準に」という点を念頭にNGO団体を3つ設立しました。まず1997年設立の「国際女性の地位協会」。条約の研究・普及を目指して条文のコンメンタール(法律文書に対する注釈書)2冊とその英訳他、研究成果の出版、年報の発行、シンポジウムの開催などを通じ、国際的な動向を周知するよう努めてきました。2つ目は2002年に結成した「日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク」。CEDAWにNGOレポートを提出し、日本の実施状況についての審議がある時には、ニューヨークやジュネーブに傍聴に行き、その結果の総括所見を政府が実行しているかをウォッチし、評価表を作成してCEDAWに提出するなど、差別を受けている女性とCEDAWをつなぐ役割を担っています。3つ目は2019年結成の「女性差別撤廃条約実現アクション」で、「選択議定書の批准」をシングルイシューにしています。日本が女性差別撤廃条約を批准してから40年経過しますが、条約の実効性を高めるための「選択議定書」は批准していません。批准により「個人通報制度」「調査制度」が有効になります。条約上の権利が侵害されて、最高裁まで行っても救済されない場合には、個人通報制度を利用して、直接、個人がCEDAWに申し立てをすることができるようになります。CEDAWは裁判所ではないので、出される「見解」(勧告)に法的拘束力はありませんが、各国政府によって65%ほどは実行されています。

2024年10月、ジュネーブで行われた国連女性差別撤廃委員会を傍聴した日本女性差別撤廃条約NGOネットワークの一団(写真提供:JNNC)

―日本が長らく選択議定書に批准しないのはなぜでしょうか。

最大の要因は、ポリティカル・ウィル(政治的意思)がないことです。2024年10月のCEDAWでの日本報告審議の際、選択議定書の批准について、日本政府の対応状況やタイムライン(見通し)について尋ねられた外務省の担当者は、「23回にわたり、個人通報制度関係省庁研究会を開催するとともに、諸外国における個人通報制度の導入前の準備や準備の実態などについて調査などを行っています。(中略)引き続き政府として各方面から寄せられる意見を踏まえつつ、早期締結について真剣に検討してまいりたいと考えてございます」と回答しました。ここ数年の国会答弁とまったく変わらず、NGO席から失笑が漏れました。タイムラインについては、2020年の事前質問事項で聞かれているのに、4年経っても進展がなく、真剣に検討しているとはいえません。
(後編へ続く)

Profile
やました・やすこ/東京都生まれ。法学博士、文京学院大学名誉教授、ジェンダー法学会元理事長。国際女性の地位協会名誉会長、日本ネパール女性教育協会理事長、男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰(2015)、外務大臣表彰(2017)。

▼過去のインタビュー記事を読む

患者のための医院譲渡「真心いただいた」協会が“守り神”に(小柳浩子さん)

患者のための医院譲渡「真心いただいた」協会が“守り神”に(小柳浩子さん)

患者のための医院譲渡「真心いただいた」協会が“守り神”に

歯科医師としての“引退”に着目した本企画。すでに歯科医療の第一線を退いた先生らにお話を伺い、引退を決意した理由や医院承継、閉院の苦労などを深堀りする。

今回は、2024年で閉院した小柳浩子先生に、患者のために奔走した医院譲渡について聞いた。

―引退を決めた理由から教えてください。

数年前に自分の好きな義歯中心の治療に変え、患者さんに喜ばれながら楽しく治療して、並行して母の介護をしていました。その頃にコロナ禍で患者さんが激減し、同時に開業から20年が過ぎていたのでコンプレッサーバキュームの入れ替えを勧められ、そんな費用は捻出できない状況でした。その時に母が入院したり、母が入所していた介護施設のミスで大腿骨骨折をしたりと、精神的に沈んでいる状態でした。また、視力の衰え、ひどい痛みの五十肩、膝蓋骨骨折、帯状疱疹と、身体の不調が続き、年配の患者さんにも心配される始末でした。医院は、患者数が激減したままで赤字が続き、そんな時に母も亡くなり、「これ以上、頑張る必要はない」と閉院を決めました。ただ、患者さんの診療を継続して診てくれる優しい先生を探そうと、ネットで情報を集め始めました。

―譲渡はどのように進めましたか。

患者さんを不安にさせないよう、譲渡専門の業者さんに後継者を探してもらいました。ただ、昨年9月に依頼をしたものの、12月での閉院を決めていたので現実的には譲渡は難しいかもしれないと考え、医療機器の廃棄業者も同時に探しました。すると、諦めかけていた11月頃に、紹介業者さんが院内の見学を希望する先生を連れてきてくれました。誠実で物腰の柔らかい先生で、1時間ほど院内を見ていただきました。その後も3回ほどいらっしゃり、院内を気に入っていただき、正式に譲渡契約を結びました。私は良い業者さんを見つけられてとても幸運だったと思います。

―患者さんのための譲渡に奔走されたのですね。

これまで患者さんには真心をいただきました。信頼していただき、患者さんたちといろいろな不安なことや、喜び、悲しみを共有してきました。新たにお若い先生のもとで、安心して通っていただければこんなにも嬉しいことはありません。

―譲渡にあたり気を付けていたことはありますか。

業者さんから3年分の確定申告や減価償却に関する書類を求められることが多かったです。準備しておくと、使える場面があるかもしれません。

―これからはどのように過ごされますか?

今まで患者さんたちには、治療に加えて、医科の医療機関を紹介したり、また診療以外の面でも、生活に関わるいろいろな情報をお伝えしたりしてきました。今度は福祉の勉強をして障がいのある方々の手助けをして、将来的にはグループホームを作るのが夢です。

―協会との関わりを振り返っていかがですか。

勤務医をしていた時に、院長から保険医協会を勧められ入会しました。新規指導や、診療報酬改定のたびにわかりやすい解説と書籍「歯科保険診療の研究」(通称「赤本」)をいただき、お世話になりました。また、オンライン資格確認システムの導入やオンライン請求のやり方、支援金の申請方法まで、一人で付いていけずに困った時には協会に相談して、何とか乗り越えることができました。保険医協会が守り神になって23年間無事に診療を終えることができました。また、これから受け取る公的年金としては、国民年金しかなく、若い頃から少しずつ積み立ててきた保険医年金が生活の糧となるので、頼りにしています。これからも保険医協会の皆さまには新しい情報を先生方にわかりやすく教えていただき、歯科医療界が繁栄されますことをお祈りしております。

過去の連載はこちら<退き際の思考 歯科医師をやめる>

第118回歯科医師国家試験/2,136人が合格  合格率は70.3%に

第118回歯科医師国家試験/2,136人が合格 合格率は70.3%に

厚生労働省は3月14日、第118回歯科医師国家試験(2月1・2日実施)の合格者を発表した。
それによると、受験者数は3,039人で、合格者は2,136人(合格者を男女別で見ると、男性1,114人、女性1,022人)となっている。合格率は70.3%で、前回の66.1%と比べると4.2ポイント増。過去最低の61.6%を記録した第115回以降で見ると、最も高い水準となった。国が歯科医師の減少に対して、方向性を変えたと推察される。これまでの合格率が軒並み60%台で推移していたことを勘案すると、今回の結果は受験者には喜ばしいことといえよう。
◆男女別の合格率
また、男女別合格率で見ると、男性の合格率は64.5%、女性の合格率は78.0%で、女性が男性を13.5ポイント上回っている。
◆新卒者の受験状況
次に、新卒者をみると、受験した1,973人のうち1,657人が合格し、合格率は84.0%となった。既卒者の場合は、1,066人のうち479人が合格、合格率は44.9%で、例年通り、新卒者の合格率が高くなっている。
今回の合格者の詳細は、厚労省ホームページを参照してほしい(下記URLから入れます)。
➜https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/goukaku.html

◆合格基準
なお、歯科医師国家試験の合格基準については、第116回から新たな合格基準が採用され、3つの領域がA・Bの2つになった。第118回歯科医師国家試験の合格基準は、一般問題(必修問題を含む)を1問1点、臨床実地問題を1問3点とし、あとは以下の通りで、領域A・B、および必修問題の3つで得点をクリアすれば合格となる。
⑴領域A(総論)58点以上/97点
⑵領域B(各論)236点以上/363点
⑶必修問題64点以上/80点
※ただし、必修問題の一部を採点から除外された受験者にあっては、必修問題の得点について総点数の80%以上。
◆歯科衛生士・歯科技工士 の国試合格者
3月26日には、第34回歯科衛生士国家試験および第10回歯科技工士国家試験の合格者の発表が行われた。歯科衛生士の合格者数は7,300人、歯科技工士の合格者は684人であった。