協会ニュース

歯科訪問診療講習会/講師持参の機材に興味津々

歯科訪問診療講習会/講師持参の機材に興味津々

実際の訪問診療の様子を撮影した映像を用いながら解説

協会は728日、協会会議室で「これから始める歯科訪問診療講習会―臨床編―」を開催した。講師は、630日に開催した保険請求編に続き、協会理事の池川裕子氏が務めた。

この講習会は歯科訪問診療を始める上での心配ごとなどをベテラン講師と近い距離でのやり取りで解決するため、少人数制で開催しており、会員のスタッフ1名を含む6名が参加した。

会場には講師が実際に使用している機材などが並べられ、参加者はそれらを手に取りながら、特別な機材を購入しなくても、簡易的な切削器具があれば歯科訪問診療が可能などの解説を受けた。

また、協会への「訪問診療の具体的な形がイメージできない」との問い合わせも多いことから、診療の流れや雰囲気が掴めるよう実際に訪問診療を行っている様子を撮影した映像を用いながらポイントをかいつまんで解説した。

開始前から講師が持参した機材に興味津々の参加者。懇談形式で会員の疑問にも答えた

その後、参加者の疑問点や不安について、講師らを交えて意見交換を行った。「全身疾患のある患者の情報共有はどのように行えばよいか」との質問には、「薬の重複投与を避けるためにも、薬剤師への確認や、必要に応じて医科へ照会状を出すことが望ましい」と回答したほか、義歯製作や観血処置を行う際の臨床上の留意点などについて、アドバイスした。

参加者からは、「来院が途絶えた高齢患者に一度電話をかけ、訪問に行ってみようと思う」との前向きな意見も出され、「訪問を始める一歩になりました」などの感想も寄せられ、盛況のうちに終了した。

▼保険請求編の動画公開中

なお、「これから始める歯科訪問診療講習会―保険請求編―」の動画はデンタルブック内で公開中。

保団連夏季セミナー/国民本位の医療アクセスとは何か

保団連夏季セミナー/国民本位の医療アクセスとは何か

会場の様子

8月2〜3日、全国保険医団体連合会は「第54回保団連夏季セミナー」を開催し、協会から役員、事務局が参加したほか、全国の保険医協会・医会から2日間で計345人が参加した。ここでは、当日参加した協会の早坂美都会長と高山史年理事のレポートを紹介する。

 

 

 

◆歯科医療政策と医療の在り方を見直す契機

会長/早坂美都

8月3日は、歯科医療の現状と医療アクセスをテーマに講座とシンポジウムが行われた。

午前の講座「追いつめられる歯科医師たちと歯科医療から遠ざけられる患者たち」では、保団連副会長の宇佐美宏氏が講演。戦後から現在に至る歯科医療政策の変遷を時系列で解説し、診療報酬制度の変化や歯科医療費の抑制政策により、医療現場が困難に直面している現状を説明した。「歯科医療費が軍事費と同程度に増えるのに29年もかかった」と指摘し、制度上の歪みや歯科技工士不足、大学定員割れなどの構造的問題も浮き彫りにした。歯科技工問題については、参加者から在宅医療で「義歯を作れる技工士が不足している」との声も上がり、深刻さが共有された。

シンポジウムの登壇者

午後は「患者の声から考える医療アクセスの課題と改善策」と題したシンポジウムが開催され、4人が登壇し、それぞれの視点から発言した。保団連副会長の橋本政宏氏は「命を守る医療機関が30分圏内に必要」と述べ、医療の地域格差と「受療権」の確保の重要性を強調。がん患者の水戸部ゆうこ氏は、自身の闘病体験をもとに、高額療養費の上限額が引き上げられると、負担が患者に重くのしかかると、強く訴えた。

社会医療法人社団健生会の蓮池安彦氏は、75歳以上の高齢者は「子や孫のために」と意識し、受診を控える傾向があり、これは「受療権の侵害」であると警鐘を鳴らした。京都大学大学院教授の諸富徹氏は、今後の財源確保として投資課税の必要性を提言し、欧米諸国では企業が精神疾患やがん治療に責任を持つ仕組みがあることを紹介した。

制度の限界と医療提供体制の持続可能性について、現場からの切実な声が多く示された本セミナーは、社会全体で医療の在り方を見直す契機となった。

◆日本とCEDAWそしてジェンダーの変遷

理事/高山史年

8月3日、早稲田大学名誉教授の浅倉むつ子氏を講師に迎えた講座「女性差別撤廃条約と日本のジェンダー平等」に参加し、講義と質疑を通じて日本社会が直面する課題と解決の方向性について深い学びを得た。日本が国連の女性差別撤廃条約(CEDAW)を批准してから約40年が経つが、ジェンダー平等の実現にはなお多くの壁が残されている。世界経済フォーラムによるジェンダー・ギャップ指数では、日本は先進国の中でも下位に位置し、男女の賃金格差、女性管理職の少なさ、政治分野での女性の不在が依然として課題となっている。

浅倉氏は、抜本的な改革の「王道」として憲法第24条の改正を挙げたが、これは憲法第9条など他条文改定への波及リスクもあり、現実には非常に高いハードルが存在すると指摘。そのため現時点では、現行法を最大限活用し、着実な法整備を積み重ねる現実的アプローチが求められているという。

具体的には、選択的夫婦別姓を導入する民法改正、賃金格差是正やハラスメント対策を強化する労働法・均等法の改定、「LGBTQ+差別禁止法の整備」や、政治分野におけるクオータ制の導入などを挙げた。さらに、皇位継承制度の見直しによる女系継承の議論も憲法改正を要しない改革として可能だという。

これらの制度改革を通じて、CEDAWからの勧告に応えるだけでなく、日本の国際的な信頼回復にもつながると強調した。

今後、協会としてもこの視点を踏まえ、医療の現場から社会的課題に向き合い、現実的かつ継続的な取り組みを進めていくことが重要だと感じた。

院内感染防止対策講習会を開催/施設基準の新規届出と継続して届出するために

院内感染防止対策講習会を開催/施設基準の新規届出と継続して届出するために

協会は8月20日にZoomウェビナーで「第2回院内感染防止対策講習会」を開催し、講師は協会理事の濱﨑啓吾氏が務めた。
本講習は歯科点数表の初診料の「注1」に規定する施設基準(歯初診)に対応している。定例報告をきっかけに前回7月開催の同講習会参加者46名より大幅に増えた91名が参加した。当該施設基準は4年に1回、この研修を受けることが義務づけられている。
前回受講から4年の期限を迎える方は、次回の10月15日(水)の講習会をぜひ受講していただきたい。

【連載】退き際の思考/“52年ぶり”涙の再会  同窓の奮闘に活力「パワーもらった」(伊藤 栄子さん × 吉田 真理さん)

”涙の再会 同窓の奮闘に活力「パワーもらった」(伊藤 栄子さん × 吉田 真理さん)

“52年ぶり”涙の再会  同窓の奮闘に活力「パワーもらった」

(伊藤 栄子さん × 吉田 真理さん)

歯科医師としての“引退”に着目した本企画。歯科医療の第一線を退いた先生や、閉院を検討する先生にお話を伺い、引退を決意した理由や、 医院承継、閉院の苦労などを深堀りする

 出席番号は、「13」と「38」。半世紀前、日本歯科大学のクラスメイトとして学生時代を過ごした伊藤栄子先生と吉田真理先生(ともに76歳)は、今回、本企画を通じた縁で実に52年ぶりの再会を果たした。自身のけがや加齢を機に、診療の縮小を考える伊藤先生と、現在も院長として医院経営をする吉田先生。分岐点に立つ伊藤先生は旧友との再会で何を感じたのか

再会の喜びに思わず涙する伊藤先生(左)と寄り添う吉田先生

―久しぶりの再会となりました。

伊藤先生(以下、伊藤):全然変わっていなくて、雰囲気は18歳の時と同じでしたね。亡き父は千葉県出身で、茂原市出身の真理ちゃんのことをモバラちゃんと呼んで可愛がっていました。亡くなる前まで「モバラちゃんはどうしてる?」と言っていたのが懐かしいです。

吉田先生(以下、吉田):昔、栄子さんの実家でステーキをご馳走になったんです。改めてその時のお礼を伝えたくて、今日再会できてとてもうれしいです。

―では、大学卒業後の歩みを教えてください。

伊藤:ビートルズが大好きで、それが興じてイギリスに留学するなど若い頃は自由に生きていましたね(笑)。でも父が亡くなって、30代前半で伊藤歯科医院を引き継ぎ、その後は同じく歯科医師だった母と医院経営をしました。

吉田:卒業後に結婚し、4年ほど勤務医として働き、その後に子どもが生まれ、10年ほど休業した後、同級生の医院で勤務医として復帰しました。以降は他院に勤務し、日本歯科大の非常勤講師として勤めました。2015年に吉田歯科医院を開業しました。

―伊藤先生は現在、診療の縮小を検討しているそうですね。

伊藤:年明け頃に患者さんの難抜歯をした際に、指を痛めてしまいました。そこから思うように診療ができず、今後の診療について考えるようになりました。長年診てきた患者さんが来られなくなったり、お亡くなりになったり、この年になるとそうした変化がありますが、代わりに若い患者さんの診療を始める、というのはなかなか難しいところです。いろいろな悩みの中で今後について迷っているところです。引退も頭によぎりましたが、今は診療所を移転して、訪問診療を中心とした医院にするなど診療の在り方を考えています。

―年齢を重ね、診療や医院経営を続ける難しさを感じているのですね。

伊藤:従業員を雇ったこともありましたが、人間関係に悩んだり、例えば従業員のためのベースアップ評価料のような複雑な仕組みを理解するより、一人で医院経営をした方が楽だと思うようになりました。自分にとってはそれがシンプルイズベストで、診療に集中できる形なんです。

吉田:私も今は健康に恵まれていますが、あとどのくらい続けられるかなと感じます。機器の買い替えなど考えることも多いのでさまざまな兼ね合いによって、退き際を考えるタイミングが訪れるかもしれません。

―歯科医療に関わるお互いの選択について、どのように感じますか。

伊藤:真理ちゃんは昔から勉強熱心だったので、そのまま院長として突っ走ってほしいと思います。お互いにこの年齢だから、何よりもずっと健康でいてほしいと思います。年明けのけがから気持ちが落ち込んでいましたが、今日、真理ちゃんを見たら学生の時と全く変わっておらず、とてもパワーをもらいました。この先どうするかは未定だけど、今日もらった活力で私も頑張りたいです。

吉田:栄子さんも健康に気を付け、やりたいことをやってほしいです。車の運転が大好きということなので、事故には気を付けてね。私も人との触れ合いを大切にして、進化しているデジタルや新技術に少しでも対応できるようになりたいと思っています。

≪患者との思い出「通じ合うものあった」≫

―長い歯科医師人生の中で、思い出深い患者さんもいたとか。

伊藤:ミュージシャンを目指していた患者さんを20年ほど診ていました。お金はないんだけど、必ず1年に何度か来院して、コーラが好きだから口腔内の状況が良くなかったんです。そんな彼が親の面倒を見るために帰郷することになり、「頑張れよ」と思いを込めて、最後にエアロスミスのコンサートに連れて行ったんです。それだけの話なんだけど、お互いロック魂みたいなもので通じ合うものがあって思い出に残っています。不思議なもので、長くお付き合いが続く患者さんは、一目見れば分かり、患者さんも「この先生なら大丈夫」と直感するのかな、と思います。

 ―最後に同世代の先生に向けて、メッセージをお願いします。

伊藤:ビートルズの名曲「Let It Be」の和訳ですが、「あるがままに」ということです。なるようにしかならないから、好きなことをしてほしい。せっかくこの世に生きてきているんだから大いに人生を楽しんでください。

吉田:引退は仕事を始めるよりも難しい決断だと思います。でも最後には「我が人生に悔いなし」と納得して終われるように健康で明るく生きてほしいと思います。

―ありがとうございました。

 

 

 

過去の連載はこちら<退き際の思考 歯科医師をやめる>

社会保障充実に向け秋の運動へ/保険証問題、高額療養費制度、物価高騰…積もる課題の解決へ

社会保障充実に向け秋の運動へ/保険証問題、高額療養費制度、物価高騰…積もる課題の解決へ

7月に行われた参議院選挙は、社会保障制度の在り方を問う契機となった。全国保険医団体連合会(保団連)は、事前に主要各政党へのアンケートを実施。医療・社会保障の充実、高額療養費制度改悪の撤回、健康保険証の新規発行復活、医薬品を保険給付から外さないことなど、医療分野に対する各党の考えを問い、積極的な情報発信のもと世論喚起に努めた。

選挙の結果、与党は6月の東京都議選に続き、参院選でも過半数を割る大幅な議席数減となった。これには国民の不安、不満が浮き彫りになったと見ることができよう。一方で、社会保障制度の縮小を掲げる政党もあり、少なからず今後の社会保障の在り方が問われる選挙となったのではないだろうか。保険医協会・医会としては、医師・歯科医師、医療現場の立場から今後も正しい情報提供を行い、分断や対立を煽るのではなく、社会保障の充実に向けた働きかけを行う必要があるだろう。

こうした情勢を踏まえ、協会でも秋から冬にかけての運動が本格化する。保団連を中心に、医療機関への財政措置や、2026年度診療報酬改定に向けた大幅な引き上げ要求を柱とした運動の議論が進む。資格確認や窓口負担増加など、じかに患者への影響が及ぶ課題については、患者に対する周知も重要な位置付けとなるだろう。

◆保険証復活・OTC・高額療養費…課題は山積

保団連、全国の保険医協会・医会は従来から健康保険証の存続や併用を求める署名に取り組んできた。保険証廃止による混乱や患者の不安を背景に、全国の医療現場からは健康保険証復活を前提に「資格確認書の全員交付」や「無保険者を生まない仕組み」の整備などを求める声があがっている。自治体や国への働きかけ、待合室での情報提供などを通じ、患者の受診を妨げることのない環境を作らなければならない。また、社会的にも注目されるOTCの保険外しや高額療養費制度について、物価高騰の中でさらなる自己負担の増加は患者にとって大きな痛手となる。

各地で患者団体との連携やオンライン署名が展開されており、医療現場からの声と国民の声を結びつける取り組みが進む。そして、来たる925日には「いのちまもる総行動」が予定されており、社会保障の立て直しを掲げた全国規模の集会が行われる。歯科医師の立場から地域医療を守る役割を再確認し、患者・国民と共に医療現場を守り、未来を築く決意を新たにする場として、会員の先生にもぜひ参加いただきたい。秋の運動は、国会と世論の双方に働きかけ、医療・社会保障の充実を求める重要な局面となるだろう。

会員拡大月間 診療に専念できる「安心」を届けます/未入会の先生をご入会 ・ ご紹介ください 東京歯科保険医協会組織部長 福島 崇

会員拡大月間

診療に専念できる「安心」を届けます/未入会の先生をご入会 ・ ご紹介ください

東京歯科保険医協会組織部長 福島 崇

日々、歯科医療に携わり、患者さんの口腔の健康を守っておられる先生方に、心より敬意を申し上げます。私は協会の組織部長として、各部と連携して会員の皆さまが安心して診療に専念できる環境づくりに取り組んでいます。

昨今、歯科医療の現場は大きく変化しています。医療DXの推進などで保険診療のルールは複雑になりました。スタッフの人材不足をはじめ、院長個人の力では解決が難しい課題が山積しているのではないでしょうか。協会はそれらの課題解決に寄与し、先生方が診療に専念できる環境を整えます。

協会は、保険診療に携わる多くの歯科医師が入会している団体です。次々と変わる保険診療のルールを的確に会員の皆さまにお伝えすることだけでなく、電話相談による保険診療・届出・労務管理に関するサポートの実施、施設基準やスタッフ教育、歯科訪問診療の導入に役立つ各種研究会を開催。保険診療や労務管理に役立つ書籍の提供、保険請求解説や症例解説が閲覧できる電子書籍「デンタルブック」の利用、機関紙やメールニュースなどさまざまな形で会員の皆さまの診療と経営を支える活動を行っています。

最近では、東京都の物価高騰緊急支援金など各種支援金・助成金に関する問い合わせも増えており、歯科で活用できる助成金の情報も提供しています。さらに、新規個別指導や集団的個別指導をはじめとする指導対策、患者さんとのトラブル対応の相談ができるのも協会の大きな強みです。

また、会員だけが加入できる3大共済制度として、お手頃な掛金で大きな保障が備えられる「グループ生命保険」、掛け捨てではなく再発時にも給付される「休業保障」、安定した資産形成ができる「保険医年金」で、会員の生活を支えています。これらにより、孤立しがちな歯科医院の経営に「安心」をお届けしています。

また、協会は6千名を超える会員の声を集め、行政や国会議員に診療報酬や各種制度の改善を要望するとともに、意見交換を積み重ねることで診療の現場を守り、患者さんへのより良い医療を届ける活動も行っています。

私を含め役員全員が一会員であり、かつ都内で診療している歯科保険医であることから、会員と同じ目線で診療と生活を守るために活動します。一人では難しくとも、現場の多くの声が集まれば、大きな影響力を持って明るい歯科医療の未来を形作ることができます。

もし今、「保険請求や施設基準などの情報不足で不安」「医療DXが複雑すぎてついていけない」「労務や患者トラブルの悩みを相談できる相手がいない」と感じている先生がいらっしゃいましたら、ぜひご入会診療に専念できる「安心」を届けます未入会の先生をご入会 ・ ご紹介ください。そして、身の回りにそうした先生がいらっしゃる場合はぜひご紹介ください。

戦後80年 伝えたい記憶、戦時の記録―下―

戦後80年 伝えたい記憶、戦時の記録―下―

1945年8月15日、先の大戦が終わり、今年80回目の夏を迎えた。戦前生まれの世代が高齢化していく中で、戦時経験が語り継がれる機会は少なくなっている。

残された時間でいかに後世に語り継いでいくか―。本企画では、会員から寄せられたご本人や家族の戦争体験を投稿いただいた。8月15日に続き、2氏の原稿を掲載する。

◆満州から中央区へ 情熱と自信/藤本 浩平(56歳)

私の家は代々歯科医の家系で、私は祖父の代から数えると3代目となります。祖父は歯科医師として九州歯科大学大学院を卒業後、昭和10年代に満州に渡り、奉天(現在の瀋陽)にて家庭を持ち、現地にて歯科医として終戦まで過ごしました。日本から満州に移民が行われた背景には、昭和7年(1932年)の満州国建国がありました。満州国での資源開発、都市建設は日本の国家的政策の一環として行われました。この為、都市や鉄道沿線のインフラ整備に伴う医療従事者の需要に応えるべく日本政府と南満州鉄道(満鉄)は高額な給与、住居の提供、家族帯同などの便宜を図り、医療従事者を優遇して満州に招致、祖父も歯科衛生の教育を受けた若き歯科医として、九州から大陸に渡りました。

家庭的にも祖父は地方出身の次男であり、地理的に比較的近い満州を新天地として希望を持って捉えていたのではないかと思います。祖父は歯科部門を持つ南満州鉄道奉天病院に勤務しておりました。奉天は拠点都市で、満鉄病院は日本の大学病院並みの設備を備える満鉄の主要病院でした。

祖父は日本人、中国人双方の歯科医療を担っておりました。このような環境の中で祖父は結婚し、昭和14年に父が生まれました。豊かな家庭生活を送っていたものの、4人兄弟の長男であった父親と姉以外の兄妹たちは、幼い時期に亡くなっています。昭和20年(1945年)の敗戦後、ソ連軍の侵攻による、中国東北部の混乱の中、家族4人で逃げるように引き揚げ船を目指し、やっとの思いで九州に戻ってきました。逃げる道のりで敵兵から金品を奪われた話を、祖父がしていたのを覚えております。

帰国後、祖父は小倉、戸畑にて歯科医院を開業し、日本での生活が始まりました。6歳で帰国した父も九州歯科大学を卒業し、大学院教育の後、親子二人で診療室を営んでいました。父は当時から海外志向が強く、1970年代にかけて、若い歯科医の一人としてアメリカで最新の歯科医療を学ぶために渡米。インディアナ大学補綴科大学院に入学しました。大学院卒業後、フロリダ大学補綴科で教鞭をとった後、日本に帰国。やがて、東京都中央区にて開業、藤本補綴臨床研修会を通して多くの日本の臨床家に対して咬合理論、補綴治療に関する教育を行ってきました。

当時6歳だった私も、父親のアメリカ時代に現地の教育を受け、東京歯科大学卒業後、ワシントン大学歯周病科大学院に進み、卒業後は臨床教授として3年勤務した後に帰国、父親の診療と研修会活動を支えました。現在24歳になる我が家の愚息も4代目の歯科医になる予定であります。

満州での戦中、日本での厳しい戦後、高度成長時代を歯科医として懸命に生きた祖父と父親、バブル経済の繁栄と衰退の1990年代、コロナ禍の混乱を経て今に至る私、大きな変革期を迎えている歯科医療の環境の中、生きて行く4代目に、社会からどのような歯科医療を求められるのか見守ってゆきたい。誇りを持って歯科医として活躍した祖父、父親と同様に4代目にも歯科医療を情熱と自信を持って取り組む歯科医として活躍することを願っております。

◆父のうた声/吉田 真理(76歳)

父は、戦争のことを話しませんでしたので私には分かりませんが、この写真を見ますと何も言葉が出ません。陸軍軍医(中尉)として戦地に赴いた父。当時の現地を調べてみますと、激戦地となっており、多くの人が命を失 ったようです。

戦地では、生きて帰国できるかわからない状況で、遥か離れた故郷や父母のことを偲んでいたのではないでしょうか。私の記憶にありますのは、父が「ブンガワンソロ 清き流れ」と口ずさんでいたことです。インドネシアにある大河を歌った曲で、ゆったりした美しいメロディーは人の心を癒してくれ、今も多くの人々に愛されているようです。

父のことを想いますと涙が出てきます。現在、戦争をしている国があり、そこでは多くの尊い命が失われます。ちょうど今年は戦後80年にあたります。恒久平和な世界であってほしいと思います。

【特集】これからの資格確認/期限切れの保険証?受付対応はどうすれば?

【特集】これからの資格確認/期限切れの保険証?受付対応はどうすれば?

2025年7月末に後期高齢者などの健康保険証の有効期限が切れましたが、有効期限切れの健康保険証でも資格確認ができることなどを明記した通知が厚生労働省より出され、医療機関の窓口で資格確認の方法に苦慮しているのではないでしょうか。協会では多岐にわたる情報を整理するべく特集記事「これからの資格確認」を作成しました。

健康保険証の期限などだけでなく、マイナ保険証のスマホ搭載やPMH(Public Medical Hub)についても機能紹介や問題点を指摘していきます。今後の資格確認の参考にしていただければ幸いです。(「東京歯科保険医新聞」2025年9月1日号(第666号)6-7面より)

【特集】これからの資格確認…紙面をチェック

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保存版【これからの窓口対応きほんのマニュアル】 新人スタッフでも安心! 保険証発行終了。どう対応すればいい?

2024年12月2日、健康保険証の新規発行が終了しました。東京歯科保険医協会では、医療機関向けに「これからの窓口対応 きほんのマニュアル」を作成しました。協会に寄せられる質問や疑問についてイラストを用いてわかりやすく解説しています。資格確認の方法を簡易的に説明した「<ポケット版>これからの窓口対応 きほんのマニュアル」もあります。あわせてご覧ください。(※2024年12月1日時点の情報です

第1回 ドクター・スタッフ講習会/「また会いたい」接遇の“5要素”学ぶ

第1回 ドクター・スタッフ講習会/「また会いたい」接遇の“5要素”学ぶ

7月11日、歯科衛生士で歯科臨床コンサルタントの濱田智恵子氏を講師に招き、第1回ドクター・スタッフ講習会(接遇講習会)「『また会いたい』と言われるスタッフになる〜歯科医院の信頼を作る接遇力〜」を開催した。診療所の接遇力向上を目指す歯科医師、歯科衛生士、スタッフほか64名が参加し、歯科医療現場に必要な〝安心感〟や〝信頼〟を築くための対応や言葉遣いについて学んだ。

         濱田智恵子氏

           会場内の様子

講演では「笑顔を作るのではなく、自然に笑顔になれる心構えを持つ」「患者さんの表情や動作から気づく力」「言葉遣いや振る舞いは、センスではなく訓練で身につけられる技術である」など、自らの技術や主観だけではなく、相手から「何か感じが良い人」と思ってもらえる“心の通った接遇”の大切さを説明。そして、表情・挨拶・ふるまい・言葉遣い・態度の5要素を中心に、患者さんが最も不安を感じやすい初診時や治療前の場面では、どのような接し方が安心感や信頼につながるかを具体的な事例を取り上げながら紹介。さらに、ロールプレイにより自らの接遇を振り返る時間もあり、参加者の意識を高める講習となった。参加者からは、「言葉選び一つで印象が大きく変わる」「患者さんに“安心した”と思ってもらえる対応をしたい」「患者さんの立場を改めて考えるきっかけになった」など、前向きな感想が寄せられた。スタッフ一人ひとりが、「また会いたい」と思われる存在になることを目指し、行動目標が分かりやすく示された講習会となった。

歯科訪問診療講習会に79名参加/「具体例が分かりやすい」の声/ダイジェスト版動画配信中

歯科訪問診療講習会に79名参加/「具体例が分かりやすい」の声/ダイジェスト版動画配信中

     池川裕子理事

協会は6月30日、「これから始める歯科訪問診療講習会保険請求編」を開催した。講師は昨年度に引き続き、池川裕子理事が務めた。「長らく通院していた患者が高齢により通院困難になったため歯科訪問診療する必要があった」など、これから歯科訪問診療を始めようとする会員を中心にオンライン参加を含め79名が参加した。

への訪問を想定し、講師が実際に使用している切削器具の紹介や歯科訪問診療料の基礎的な内容を解説。協会が昨年実施した「会員の意識と実態調査」の結果をもとに、診療情報提供料の算定方法などにも触れた。

終了後のアンケートでは「具体例が分かりやすかった」「保険請求に関して詳しく説明を受けられて良かった」との声が寄せられ、これから歯科訪問診療を始めようとしている会員に役立つ内容になったことがうかがえた。

なお、本講習会のダイジェスト版動画をデンタルブック内で配信中。

 ◆動画視聴はこちら(デンタルブック ログイン)

➜https://dentalbook.tokyo-sk.com/member/private/Member_index

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)8月1日号

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)8月1日号

こちらをクリック▶「東京歯科保険医新聞」2025年(令和7年)8月1日号

【1面】

 1.厚生労働省要請を実施/現場の診療行為保険点数の乖離訴え CAD/CAMや口腔機能管理の要件緩和など要求

 2.中医協/10月から医DXのマイナ保険証利用率さらに引き上げ

 3.多くが9月末に有効期限/国保の健康保険証 全加入者に「資格確認書」を 都・区市町村へ緊急要請

 4.要注意/施設基準などの“8月定例報告”829日までに提出を

 5.探針

 6.ニュースビュー

 

【2面】

 7.指導計画と指導実施状況が明らかに/生活保護の個別指導予定は6件 協会の開示請求 により詳細判明

 8.光ディスク等でのレセプト請求/猶予届出は8月末まで!

 9.歯科訪問診療講習会に79名参加/「具体例が分かりやすい」の声 ダイジェスト版動画配信中

10.医療機関等物価高騰緊急支援金(20254月~9月分)/Jグランツ申請は101日開始 書面申請は818日から 歯科診療所の支援金は7.8万円

11.生産性向上・職場環境整備等支援事業/支援金18万円を歯科診療所に支給 申請開始は84()予定

 

【3面】

12.保団連第3回代議員会開催/協会 早坂会長が「資格確認書の一斉送付」要求 施設基準改善執行部は「厚労省要請で訴えたい」

13.後期高齢者の保険証 有効期限終了/8月は「資格確認書」の確認を忘れずに

14.第53回定期総会記念講演/「歯科はマイナ保険証の必要性低い」続く混乱、記者がひも解く 市の窓口整備に22億円計画も

15.厚労省が異例の通知/期限切れの保険証でも診療可能

 

【4面】

16.経営・税務相談Q&A No.431/ご存じですか?「育児・介護休業法」の改正

17.第1回 ドクター・スタッフ講習会/「また会いたい」接遇の“5要素学ぶ

188月会員無料相談のご案内

192025年度第1回東京都歯科医師認知症対応力向上研修

20.東京都歯科衛生士会主催<東京都委託事業>歯周治療の基本研修会「ベーシックSRPコース」

 

【5面】

21.研究会・行事ご案内

22.「夏季休診案内」のご紹介

 

【6面】

23IT相談室/AIとは何か活用上の注意-最後は自分の責任で-

24.「保険でよい歯を」東京連絡会/オーラルフレイルで市民講演会

25.暑中お見舞い名刺広告

 

【7面】

26.新体制後初のメディア懇談会開催/診療報酬への「根本的な政策提言」を

27.通信員便りNo.152

28.理事会だより

29.協会活動日誌

30.共済部だより

31.会員優待

 

【8面】

32.「戦後80年 伝えたい記憶、戦時の記録」 私の戦前と戦中、そして戦後80年(渡辺吉明)、ビルマからの手紙(下田祐里江)、『B』(西田紘一)

33.神田川界隈(理事・濱崎啓吾/練馬区)

新体制後初のメディア懇談会開催/診療報酬への「根本的な政策提言」を/インフレ時代の診療報酬のあり方問う声

新体制後初のメディア懇談会開催/診療報酬への「根本的な政策提言」を/インフレ時代の診療報酬のあり方問う声

協会は711日、第2回メディア懇談会を開催した。議題は、①協会が実施した国会行動、②子ども医療費助成制度の状況、③次期診療報酬改定―などとし、67名のメディア側参加者と懇談した。 

(左から)小林顕部長、早坂美都会長

冒頭、新会長の早坂美都氏、広報・ホームページ部新部長の小林顕氏がそれぞれ挨拶。早坂会長は今後の取り組みについて、歯科医療改善に向けた国会議員や行政への働きかけの強化のほか、保険医の生活を守っていくことなどに力を入れていくと説明した。会長就任前まで広報・ホームページ部長として本懇談会に参加してきたこともあり、参加者からは新体制への期待の声が上がった。

マイナ保険証問題については、「世の中の雰囲気が変わったと思った」と協会や全国保険医団体連合会の活動を評価する声が上がった。また、協会が都内の自治体に資格確認書の一律配布を要請することなどを踏まえ、区市町村への積極的なアプローチの必要性についての意見が目立った。

会場の様子。ほか2名がオンライン参加した

さらに、施行まで1年を切った2026年度診療報酬改定に関しては、インフレ時代の診療報酬の在り方を問う参加者からの提言も。具体的には、建設業界では契約時の金額、条件などに対し、物価変動に合わせて調整するインフレスライド条項が運用されていることを例に、「『毎回、診療報酬を上げてほしい』と要望するのではなく、根本的な政策提言をすべき時代になっているのではないか」と、診療報酬の在り方そのものに言及する発言もあった。早坂会長は材料費、人件費などの高騰を引き合いに、「漫然と訴えていくのではなく、統計学も用いながら『医療機関がこれだけ大変な状態にある』という数値を示していくのは重要だと考える」とした。

保団連第3回代議員会開催/協会 早坂会長が「資格確認書の一斉送付」要求/施設基準改善 執行部は「厚労省要請で訴えたい」

保団連第3回代議員会開催/協会 早坂会長が「資格確認書の一斉送付」要求/施設基準改善 執行部は「厚労省要請で訴えたい」

     早坂美都会長

全国保険医団体連合会(保団連)は6月29日、千代田区の都市センターホテルで2024~25年度第3回代議員会を開催し、全国の協会・医会から代議員や事務局が参加した。当協会からは、代議員として早坂美都会長のほか、加藤開、坪田有史、本橋昌宏の各副会長が代議員として参加した。
当日の討論では、全国から発言通告が145本寄せられた。協会からは、早坂会長が、「健康保険証存続とともに、資格確認書の一斉送付に取り組もう」と発言し、執行部は「国・自治体・保険者に対応を迫る働きかけを引き続き強めたい」と返答した。そのほか、①子ども医療費助成制度の拡充について、②オンライン資格確認システムのスマホ搭載に係る補助金全額を求める、③ベースアップ評価料ではなく診療報酬本体で賃上げを、④都内歯科診療所が直面する経営課題と解決に向けて、⑤実態調査の結果を踏まえた次期診療報酬改定への要望-の5本を文書で発言した。
フロア発言では、加藤副会長が「施設基準の細分化で会員は困っている。8月28日に保団連が行う厚労省要請で、施設基準の簡素化を訴えてほしい」と要望し保団連の考えを質した。執行部は「歯科の施設基準は、大規模な診療所ばかり潤うような改定となっている。また、技術と全く関係ないものが設けられている。これらを厚労省要請で訴えたい」と約束した。
その後、会務報告、24年度決算および監査報告を全会一致で可決し、「医療機関への緊急財政措置、期中改定を強く求める特別決議」を承認し、閉会した。

◆保団連特別決議はこちらから
 ➜hodanren.doc-net.or.jp/info/declaration/2025-06-29-2/

第53回定期総会記念講演/「歯科はマイナ保険証の必要性低い」 続く混乱、記者がひも解く/市の窓口整備に22億円計画も

第53回定期総会記念講演/「歯科はマイナ保険証の必要性低い」 続く混乱、記者がひも解く/市の窓口整備に22億円計画も

53回定期総会(616日)では、「マイナ保険証と保険証廃止~担当記者の2年間」をテーマに、東京新聞社会部編集委員の長久保宏美氏が記念講演を行った。

長久保宏美氏

長久保氏は、まずマイナ保険証の利用率について、20254月時点で全国平均は28.655%である一方、国家公務員共済全体の平均は29.57%、厚生労働省(第一)共済組合が33.0%、厚生労働省共済組合厚生労働本省本部が39.04%、総務省共済組合が33.52%と、国家公務員でも利用率が芳しくない状況を強調。また、東京都における電子処方箋の導入状況は24.7%(全国平均は29.3%)であり、歯科では東京が2%(全国は4%)と非常に低いことを指摘。医科、歯科の双方において、電子処方箋の普及が進んでいない実情を報告し、このまま導入が進まなければ、「政府が説明するようなマイナ保険証の利点を享受することはできない」とし、自らの考えを示した。

 

◆渋谷区・世田谷区 国保加入者全員に資格確認書送付

後期高齢者については、国会で野党議員の追及などもあり、267月まで暫定的に1年間延長して資格確認書を交付する措置が決まったと解説。さらに、渋谷区と世田谷区では、マイナ保険証の有無にかかわらず国保加入者全員に資格確認書を送付する対応を決めたことに言及し、両区長ともマイナ保険証を否定しているのではなく、制度の切り替え時期に受診トラブルがないようにとの配慮から、議会で承認を得たと説明した。その背景として、国保の標準システムの場合、マイナ保険証とのひも付けの有無確認の情報更新が1カ月に1回であるため、ひも付け解除手続き者の把握漏れなど、トラブルを防ぐための措置が必要であったことが挙げられた。

◆電子証明書の失効問題・更新手続きの混乱

マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書の有効期限が5年であり、25年度中に電子証明書の有効期限を迎え失効するケースが1,580万件、10年目のカード本体の更新を迎えて失効するのが1,200万件と予測されていることを説明。既に川崎市では電子証明書やカード本体の更新を希望する市民で窓口が大混雑となり、対応できない状況が発生した。このため、同市では窓口整備に22億円をかける計画があることを紹介した。

また、区市町村に代わり地方公共団体情報システム機構から発送されるお知らせの電子証明書更新当日の注意書き事項に、「健康保険証のサービスを利用できない場合があります」という文言がある点に触れ、「更新日は保険証として使えなくなる可能性がある」ことへの懸念を表明した。

◆「」表示問題「簡単には解決できない」

また、全国保険医団体連合会(保団連)の調査では、回答した医療機関の窓口の9割で何らかのトラブルがあり、一旦10割負担を患者に求めた事例が1,241件あることを挙げ、「資格情報のお知らせ」を単体で使おうとする患者も多いことが指摘された。さらに、技術的な問題として、戸籍の旧字、異体字などを扱う自治体系システムと医療系の中間サーバーの経由する運用では、文字コードの違いによる「」表示の問題があり、「これは簡単には解決できない」と述べた。

◆マイナ保険証の対応が廃業判断に影響

加えて、歯科では患者との関係性が構築されているケースも多く、「マイナ保険証による資格確認の必要性が低い」ことを指摘した。また、帝国データバンクの調査結果をもとに、歯科医院の倒産・廃業・解散件数は過去最多を記録しており、26年には1,000件を超えると予想されているなど、マイナ保険証対応のための出費が、高齢歯科医師の廃業への判断を早めている可能性も示唆した。

質疑では、マイナ保険証導入に関する国の費用対効果の問題などについて、デジタル化による医療費削減効果の試算がないことへの疑義や、電子証明書の失効に伴う更新手続きの負担増、重複診療の削減効果に対する疑問、個人情報の監視目的としての利用についてなど、多数の質問が挙がった。長久保氏は、まだ多くの不明点があるとしつつ、現状のトラブルが数年間続くと予測し、マイナ保険証問題が解決しない状態で、「資格確認書との併用が続くことで医療現場においての混乱はなくならないであろう」と述べた。

第53回定期総会記念講演の会場風景

PROFILE:長久保宏美(ながくぼ・ひろみ)

東京新聞編集局社会部編集委員/1961年、茨城県生まれ。1988年、中日新聞社入社。水戸支局、東京本社社会部、東京都庁キャップ、警察庁など担当後、宇都宮支局長、編集局デスク長を経て選挙調査室長。2018年から福島特別支局長。2020年から編集委員。「マイナ保険証」の問題など取材。

【IT相談室】 AIとは何か④/活用上の注意-最後は自分の責任で-

【IT相談室】 AIとは何か④/活用上の注意-最後は自分の責任で-

AIは、多くの分野に大きな影響をもたらす有益な技術革新です。非常に便利である反面、注意すべきこともありますので、今回はその点についてご説明します。

◆AIは嘘をつく

2024年末、アメリカの弁護士がAIで作成した架空の判例を訴訟資料として提出する事件がありました。AIはインターネット上の膨大な情報をこちらの指示通りにまとめる便利なものですが、間違った情報を提示することがあります。これはAIのハルシネーション(幻覚・妄想)と呼ばれ問題になっています。存在しない医学用語を作り出した例もあります。

◆AIは自信満々

「安定動作する最終安全版」「これなら大丈夫です」「完全防御バージョン」。これらは全て、当社でAIを利用してプログラミングを作った際の返答です。何度繰り返してもエラーがなくならないのですが、それでもAIは毎回このように答えます。

冒頭のようなAIによる架空の判例が問題になったことは初めてではなく、裁判所から警告が出されていたにもかかわらず、発生しました。その弁護士は、「AIに確認したところ、大丈夫だと回答があった」と弁明したそうです。

◆最終責任は自分で持つ

あるホームページにおける特定のページを要約して評価するようAIに指示したところ、回答がおかしいため確認すると、AIはそのページを読み込んでいなかったことがありました。AIの回答はそのまま信用できない面があります。特に、医療は人体・人命に直接関わる行為を含みますので、AIはあくまで参考程度に、最終的には自分で責任を持って確認する姿勢が重要です。

厚労省が異例の通知/期限切れの保険証でも診療可能

厚労省が異例の通知/期限切れの保険証でも診療可能

厚生労働省は627日、各地方厚生局など関係機関宛てに「健康保険証の有効期限切れに伴う暫定的な取扱いに関する疑義解釈」を通知した。202581日以降、263月末までは、期限が切れた健康保険証でも被保険者番号などを用いてオンライン資格確認システムで資格確認することを可能とし、安易に患者へ10割負担としないように求めた。

マイナ保険証の利用率が伸び悩む中、マイナ保険証の発行の有無に限らず、資格確認書が一斉発行されなければ現場の医療機関は混乱に陥ってしまうため、苦肉の策として、厚労省が通知したもの。

協会はこれまで、健康保険証の存続を求め続けてきたが、厚労省は2412月2日に新規発行を終了し、強行にマイナ保険証を推し進めてきた。しかし、その普及は進まず、「資格確認書」を発行せざるを得ない状況になった。さらに今回、〝有効期限切れの健康保険証でも問題ない〟との異例ともいえる内容の疑義解釈を通知した。やはり、健康保険証の存続が最も優れた解決策である。

◆疑義解釈より抜粋

(問)多数の自治体で国民健康保険の健康保険証が有効期限切れにより順次失効するが、「有効期限が切れた健康保険証を引き続き持参してしまう患者」や「健康保険証の切り替えに伴って通知された『資格情報のお知らせ』のみを持参する患者」に対しては、どのように受給資格の確認をするのか。

(答)(中略)患者に10割の負担を求めるのではなく、(中略)被保険者番号等によりオンライン資格確認システムに資格情報を照会するなどした上で、患者に対して3割等の一定の負担割合を求めてレセプト請求を行うこととする運用は、保険医療機関等の現場における実態を勘案すれば、暫定的な対応として差し支えないものと考える。

※全文はこちら➜https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/070702_006.pdf

指導計画と指導実施状況が明らかに/生活保護の個別指導予定は6件/協会の開示請求により詳細判明

指導計画と指導実施状況が明らかに/生活保護の個別指導予定は6件/協会の開示請求により詳細判明

協会は東京都に対し、生活保護法による2025年度指導計画、および2024年度個別指導の状況について開示請求を行った。

【個別指導の実施計画】

25年度内の個別指導は「6件程度」が計画されている。24年度までは指導日程が分かる資料が開示されていたが、25年度からは月ごとに「指導対象」と「指導実施期日」を決定することとなったため、これまでの様式の資料は作成されなくなった。

個別指導の対象となる医療機関には、指導日の1カ月前に指導通知、1週間前に患者通知(10名程度)が送付される。健康保険法の個別指導と同様、カルテ、歯科衛生士業務記録簿、歯科技工指示書や納品伝票、X線フィルムなどに加えて、対象患者の医療要否意見書および医療券(コピー可)が持参物とされている。

◆一般指導の実施計画

生活保護法の指定医療機関を対象とする一般指導は、約800件が予定されている。

その内訳は、6年に1度の指定更新の医療機関600件、24年度に生活保護法の新規指定を受けた医療機関200件。指導形式が昨年度と同様であれば、東京都福祉局のホームページに公開される動画を視聴し、アンケートに回答することになる。動画では、生活保護法の医療扶助における留意事項や事務の取り扱い、診療報酬請求上の留意事項などが解説されている。

現在、実施時期などは明らかになってはいないが、対象となる医療機関は忘れることなく、必ず対応していただきたい。

【2024年度の個別指導は4件実施】

24年度の生活保護法による個別指導は4件実施された。その内容は、歯周治療(歯周病検査やSRPSPT)、埋伏歯などの抜歯手術、歯冠修復および欠損補綴などとなっている。

指導で改善を求められた内容については、「改善状況報告書」などの提出が必要となる。また、過誤と指摘された請求額は、社会保険診療報酬支払基金を通じて支払われる診療報酬から控除される。

今回の開示請求により、2024年度の診療報酬の過誤調整額は200万円を超えたことが分かっている。

生活保護法の個別指導でも健康保険法の個別指導と同様に、保険診療のルールやカルテへの記載は重要となる。不安な先生や保険診療のルールを再度確認したい先生は、928日(日)に行われる新規開業医講習会に参加してほしい。また、828日㈭には、生活保護法の個別指導も含め、健康保険法の個別指導や集団的個別指導の解説を行う「社保研究会」を開催する(いずれも、トップページの「研究会・行事案内」コーナーを参照)。25年度の個別指導を知る研究会となるため、ぜひ参加いただきたい。

中医協  10月から/医DXのマイナ保険証利用率さらに引き上げ

10月から/医DXのマイナ保険証利用率さらに引き上げ

7月23日に行われた中医協総会で、医療DXに対応する体制を評価する「医療DX推進体制整備加算」(以下、医DX)が議題に上がり、マイナ保険証の利用率実績要件を10月から引き上げる厚生労働省の提案が承認された。また、電子カルテ情報共有サービスに関する経過措置を2026531日まで延長する案も承認された。

◆利用率実績の下限15%から段階的に30%へ引き上げ

DXは初診料に加算する点数で、電子処方箋等サービスの有無に応じて、マイナ保険証の利用率による「加算1.4」(45%)、「加算2.5」(30%)、「加算3.6」(15%)に分けられ、算定する点数が異なっていた。今回の提案では、電子処方箋の有無や3段階の枠組み、点数は変更せず、利用率実績のみ引き上げられた(表参照)。なお、都内のオンライン資格確認対応歯科医療機関に対する医DX届出歯科医療機関数の割合は、23.8%に留まっている(中医協資料より)。

◆電子カルテの要件は経過措置を延期

また、同加算の施設基準である「電子カルテ情報共有サービスが活用できる体制の確保」に関しては、体制整備に時間を要することが考慮され、9月末まで経過措置が設けられていた。

しかし、電子カルテ情報共有サービスの「医療法等の一部を改正する法律案」が未成立であることから、経過措置を2026531日まで延長することが承認され、厚労省は近く事項を通知すると発表した。

今回、医療機関における電子処方箋導入に当たる新目標が掲げられ、患者の医療情報を共有するための電子カルテを整備する全ての医療機関への導入を目指すことが重要だと位置付けられた。なお、歯科医療機関については、現場で求められる電子カルテ・電子処方箋の導入方針を検討していくとし、26年度中に具体的な対応方針を決定する見通しが示された。

多くが9月末に有効期限/国保の健康保険証/全加入者に「資格確認書」を都・区市町村へ緊急要請

多くが9月末に有効期限/国保の健康保険証/全加入者に「資格確認書」を都・区市町村へ緊急要請

東京都における国民健康保険(以下、国保)の健康保険証は、概ね9月末に有効期限を迎える。その期限まで残り2カ月を切った。
後期高齢者とは異なり、渋谷区・世田谷区を除く国保では、マイナ保険証を登録した加入者に対しては「資格確認書」を発行しない方針である。マイナ保険証を登録したものの、現行の健康保険証を使い続ける患者は多く、混乱は必至だ。協会はこの事態を解決すべく、東京都および都内の全区市町村(世田谷区・渋谷区を除く)に資格確認書の一斉送付を求める要望を行った。
◆このまま進めば患者も自治体も混乱の渦中へ
マイナ保険証は、国民全体の約7割が登録しているが、患者の利用率は約3割で、多くが健康保険証を使い続けている。その理由は、「紛失リスクを恐れてマイナ保険証を持ちたくない」などの不安に根差すものと思われる。
マイナ保険証を登録した国保の患者が資格確認書を持つには、患者自らが区市町村に登録解除申請を行うか、要配慮者であればその申請を行う必要があり、これは患者には大きな負担となる。
負担増問題は、区市町村にもいえる。マイナ保険証の登録の有無によって資格確認書の送付対象を選定しなければならず、問い合わせや登録解除申請などの対応に忙殺される。また、マイナ保険証登録者に「資格情報のお知らせ」を郵送しているのであれば、コスト削減の観点では単体で使える「資格確認書」を一斉交付した方がよい。これは直ちに全都で行うべきである。
◆渋谷区・世田谷区の取り組みを都内全域で
協会が行った要望が陳情として扱われた場合、区市町村の議会は採択か不採択かを判断することになる。
ぜひ、議会の動向に注目をいただくとともに、引き続き協会活動へのご協力をいただきたい。

戦後80年 伝えたい記憶、戦時の記録 ―上―

戦後80年 伝えたい記憶、戦時の記録 ―上―

1945年8月15日、先の大戦が終わり、今年80回目の夏を迎えた。戦前生まれの世代が高齢化していく中で、戦時経験が語り継がれる機会は少なくなっている。

残された時間でいかに後世に語り継いでいくか―。ここでは「上巻」として、会員ご本人や家族の戦争体験を投稿いただいた中から3点をご紹介する。「下巻」は改めてご紹介させていただく。

◆私の戦前と戦中、そして戦後80年 渡辺 吉明(90歳)

渡辺吉明氏(90歳)

1941年、私が鶴巻国民学校(現・新宿区立鶴巻小学校)1年生になった年の128日、日本とアメリカの戦争が始まった。

この太平洋戦争開戦の翌春418日、現在も住む自宅周辺が米軍のB25爆撃機により空襲を受け、映画館などが燃えたことを鮮明に覚えている。近くの病院や早稲田大学の校舎にも被害が発生したことを後日知った。日本軍機の応戦は一切なく、当時は首都の制空権すら、まったく奪われていたようだ。

3年生になると、戦局の悪化と共に学童疎開が始まった。私は、父の郷里である熊本県天草郡宮地村切越にあった父の実弟の農家に縁故疎開することになった。父親と疎開する学童2名の行程は、東京・熊本間はEL(電気機関車)の直行列車に乗り車中一泊。熊本市内一泊。さらに、熊本から三角間はSL(蒸気機関車)列車で移動し、三角から天草へは九州商船での船旅となり、移動には二泊三日かかった。当時の天草は完全な離れ小島で、接岸設備がない島には商船から伝馬船に乗り換えて上陸した。

43年、小宮地国民学校に転入。戦時教育や一連の農作業の訓練を受けたが、あまり抵抗感はなかったと記憶している。ただ、天草島上空は、熊本方面に爆撃へ向かう米軍のB29爆撃機の空路であったため、登校しても空襲警報が鳴ると授業は中止、帰宅させられた。

45年815日敗戦。474月、天草郡の宮地新制中学校に入学。新制中学の教科書だった「あたらしい憲法のはなし」を学び、国民主権と戦争放棄に「若い血が沸き立ち」、私の戦後が始まった。ただ、私は戦前から相変わらず、家の前を走る都電ファンで、今でいう「鉄ちゃん」だった。

50年7月、疎開先より帰京。59年東京歯科大学卒業。89年、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)の時、被爆した広島電鉄(650形、現役)に初めて乗車。「運転席の裏には、〝被爆電車〟の説明板があり、原爆を風化させない地道な努力を感じました」「核兵器と人類は、絶対に共存はできません。核廃絶を訴えるのは当たり前」などの声を聞いた。私の趣味としての路面電車と反核への思いが結びついたのが、この広島での被爆電車との出会いだった。そして、被爆の実相を伝える〝語り部〟としての被爆電車に乗って、当時を追体験しながら親子で学ぶことを東京反核医師の会として企画し、原水禁世界大会での「動く分科会」実施を提案。02年に実現させ、24年に11回目を迎えている。

60年代には患者に誘われ、平和行進に参加して以来、「東京反核医師の会」の運動に役員として関わってきた。17年、「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のノーベル平和賞受賞を記念し、翌年11月に第28回「反核医師のつどい」を開催し、全国から194名が参加。「被爆の実相に立ち返り、核なき世界を目指す」ことを確認した。

被爆80年、私たち「東京反核医師の会」は、「日本政府に核兵器禁止条約の署名、批准を求める署名」に協力、賛同しています。

◆ビルマからの手紙 下田 祐里江(57歳)

生前の母は、毎年、桜の咲く頃に、長兄である叔父の供養のためと称して、腹違いの妹の叔母と靖国神社にお花見に出かけていた。その母も一昨年亡くなり、遺品整理をしていた時に、叔父からの軍事郵便はがきのコピーとビルマの土が入った袋が出てきた。叔父は召集令状を受け群馬からビルマに行き、そこで病死した。はがきの字は、教師になることを夢見ていた叔父らしく、とても達筆で、几帳面に整然とした文面であった。実母を3歳で亡くした末っ子の母を案じている内容と、「日本男児としてお国の為に頑張る」と、検閲を気にしている様子がうかがえた。ビルマで病気になり、具合が悪いことも書いてあり、心配させないようにと、明るい文章であったが、「故郷の群馬の利根川は氾濫していないか?」「皆は元気で仲良くしているか?長男なのに、実母の法要ができなくて申し訳ない」「利根川や赤城山を思い出し、やはり故郷は良い」と何度も書いてあった。

叔父の戦死通知書

戦死の通知書と遺骨の代わりの小さな石ころが一粒入った小さな木箱が実家に届けられた。当時、幼かった母は、気丈な祖父が、人目のつかない場所で、がっくりと肩を落とし泣いていた姿を見たと話してくれた。終戦の1年前のことである。もっと早く戦争が終わっていたらと、皆がそう思っていたに違いない。

私が歯学部に入学することが決まった時に、入学金を工面するため、母と一緒に群馬銀行に口座の解約をしに行った。その際、戦死した叔父のお墓(供養塔)にもお参りした。私の両親の世代は、物のない時代であり、青春時代に制約を受けて我慢を強いられてきた年代である。せめて晩年は我慢を強いらないようにと思い、母の希望通り在宅介護で見送った(こちらは、超大変だったが…)。母の出棺の際に、叔父のビルマからの手紙と土、私の歯科医師免許の写しも入れた。きっと、戦死した叔父に報告してくれているかな?

私は、自分が希望する歯科医師になれたことに感謝せずにはいられない。

 

◆『B』/西田 紘一(85歳)

西田紘一氏(85歳)

昭和15年生まれの私は、今年85歳になった。父は歯科医師で、私もその道に入り、60年が過ぎた。幼くして短い戦時下を経験した一人として、当時を振り返ってみた。

4歳の頃、最初に覚えたアルファベットは「B」だった。「B29」の「B」である。意味も分からず、大人たちの会話から拾い覚えたのだろう。焼夷弾の標的にされることを恐れ、灯火管制のもと、電灯を消す生活が日常だった。

私の生家は大阪府堺市の旧市街地にあり、一階が住居、二階が歯科医院の木造二階建てだったが、公共機関への延焼を防ぐため、強制疎開*1で取り壊された。戦火を逃れるように、およそ南へ18キロ離れた岸和田市久米田の里山に身を寄せた。そこから、堺大空襲*2の煙が遠くに上るのを見上げた記憶が残っている。

人的な犠牲も身近にあった。母の弟は東北帝大で冶金を学んだあと、出征した。しばらくして南方で戦死。葬儀の際に、堺市大道を行く私たちの葬列に、自転車を降りて頭を垂れられた人々の姿を今でも鮮明に覚えている。その後、母が中耳炎で亡くなり、さらに妹が栄養失調で命を落とした。サルファ剤もペニシリンも、ましてや食べ物もない時代だった。父と子の二人で寄り添って生きてきたが、その詳細な記憶は定かではない。ただ、まだ袖を通していない妹の小さなセーラー服が、きちんと畳まれて桐箪笥の奥に大切にしまわれていたことは、今でも忘れられない。

夏のある朝、隣組のおじさんが「今日の昼にHさん宅の庭に集まるように」と知らせに来た。玉音放送だった。子どもだった私には内容が正確に理解できず、近くの大人に尋ねた。「戦争終わったんや」との答えに、心がふっと軽くなった気がしたのを覚えている。「もうB29は飛んで来ないんだ」。

戦争は、生き残った父と私から、家や仕事場だけでなく、家族までも奪った。最大の被害者は父である。戦後育ちの私の苦労など、足元にも及ばない。

私は亡き父の年齢を超えたが、なおフリーランスの歯科医師として働ける場をいただいている。ありがたいことであり、墓終いで近くなった我が家の墓に、毎月手を合わせ、感謝の言葉を捧げている。

あれから80年、戦争や争いが未だ絶えない現代ではあるが、世界中の人々が穏やかな心を大切に、楽しく生きる日々が来ることを願うことしきりである。

  *1=建物疎開や学童疎開がある。空襲による被害を受け、民家から周囲の公共建造物への延焼を防ぐために建物を壊したのが建物疎開だった。

  *2=1945710日にあったこの空襲で、1,860人が亡くなった。(堺市ホームページより)

厚生労働省要請を実施/現場の診療行為と保険点数の乖離訴え CAD/CAMや口腔機能管理の要件緩和など要求

厚生労働省要請を実施/現場の診療行為と保険点数の乖離訴え CAD/CAMや口腔機能管理の要件緩和など要求

協会は73日、厚生労働省に対し、2026年度診療報酬改定に向けた要請を行った。

協会からは、加藤開、坪田有史、本橋昌宏各副会長、および川本弘、濱﨑啓吾両理事、事務局が参加。厚労省側は、保険局医療課の早乙女雅美主査(歯科医師)が対応した。

保険局医療課の早乙女雅美主査(歯科医師)

具体的には、①CAD/CAM冠・インレーの適用の判断は歯科医師の裁量とすること、②観血処置後の局所止血処置が可能な薬剤の歯科適用拡大、③口腔機能管理料および検査に係る評価をすること、④歯科衛生実地指導料の点数引き上げ、⑤CAD/CAMインレー形成加算(CADIn形)を個別点数として評価すること、アンレーの点数の新設、生活歯および失活歯の大臼歯の単冠を4/5冠の適用とすること、歯周病ハイリスク加算と総合医療管理加算の重複した摘要欄記載の省略などについて要請。また、CAD/CAM冠・インレーについては、第三大臼歯や後続永久歯のない永久歯代行歯、下顎分割抜歯後の歯冠修復への適用拡大などについて要請した。

その他、SPTP重防における要件の差の是正や、義歯修理時の未来院請求についての改善を求めた。また、学校歯科健診の結果に基づく歯科矯正相談料の算定要件については、「歯科矯正相談料の基本的な考え方」の取り扱いを巡って意見を交わした。

協会は厚労省に対し、歯科医療現場での診療行為と保険点数や制度設計の間にある乖離や、複雑な算定要件による混乱を伝え、実態に即した診療報酬改定を行うよう、強く求めていく。

光ディスク等でのレセプト請求/猶予届出は8月末まで!

光ディスク等でのレセプト請求/猶予届出は8月末まで!

東京都国民健康保険団体連合会(以下、国保連合会)、および社会保険診療報酬支払基金(以下、支払基金)は現在、光ディスクでレセプト請求を行っている医療機関に対し、その継続には「様式第1号(光ディスク等を用いた請求に係る猶予届出書兼オンライン請求への移行計画書)」の提出が必要なことなどを明記した案内書を送付している。

10月以降も光ディスクなどを用いた請求を継続する場合には、831日までにポータルサイトで回答するか、書面で様式を提出する必要がある。書面で提出する場合は、国保連合会と支払基金にそれぞれに送付する必要があるため注意してほしい。また、昨年提出した猶予届の理由を確認することが必要だ。厚生労働省は業務効率化のため、医療機関の状況を考慮せず、オンライン化を急いでいる。

理不尽と思われる理由での差し戻しなど、対応に困った際にはぜひ協会(☎03-3205-2999)にご相談いただきたい。

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[国保連合会ホームページ]

 ➜https://www.tokyo-kokuhoren.or.jp/insurance/online_billing_todokede.html

[支払基金ホームページ]

 ➜https://www.ssk.or.jp/seikyushiharai/iryokikan/rezept_03.html

[様式ダウンロード(厚労省ホームページ)]

 ➜https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190624_00001.html

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【郵送・FAX送付先】

①支払基金本部

 〒105-0004 東京都港区新橋2丁目1番3号

 社会保険診療報酬支払基金事業統括部事業サポート課 行

 ※支払基金は郵送のみ受け付けています。

 ※封筒の表面に朱字で「移行計画書在中」とご記載ください。

②国保連合会

 FAX番号:0362380097

 〒102-0072 東京都千代田区飯田橋3丁目5番1号

 東京区政会館11階 東京都国民健康保険団体連合会 行

 ※郵送の際は「オンライン請求届出書類在中」とご記載ください。

後期高齢者の保険証/有効期限終了/8月は「資格確認書」の確認を忘れずに

後期高齢者の保険証/有効期限終了/8月は「資格確認書」の確認を忘れずに

7月末に後期高齢者が持つ健康保険証の有効期限を迎えるが、全ての後期高齢者に「資格確認書」が発行される(1)。そのため、これまで健康保険証を提示していた患者は、8月から資格確認書を窓口に提示することになる。

東京都の国民健康保険の加入者においては、概ね9月末に健康保険証の有効期間が終了する。なお、他県の患者の場合は、7月末で有効期限が切れている場合がある。

国民健康保険加入者は後期高齢者とは異なり、資格確認書が、①渋谷区・世田谷区の患者、②マイナ保険証の登録解除などをした患者、③マイナ保険証がない患者、に発行される(2)。

マイナ保険証の登録をしたものの、健康保険証を使用している患者は相当数いると考えられ、窓口での混乱が懸念される。例えば、マイナ保険証を所有している患者には「資格情報のお知らせ」が送付されるため、現行の健康保険証を提示している患者の場合、マイナ保険証の代わりに誤って「資格情報のお知らせ」のみ持参し、その都度資格情報を確認する手間が増えることも考えられる。

マイナ保険証を登録した場合、資格確認書を確実に入手するには、マイナ保険証を登録解除するしかない。協会は、患者向けのリーフレットを無料で配布しているので、ぜひご活用いただきたい。

なお、協会は昨年「これからの窓口対応 きほんのマニュアル」を作成。複雑化する窓口での資格確認時にお困りの際はご確認いただき、対応の一助としていただきたい。

※「登録解除リーフ」の注文➜https://forms.gle/KFLz6hTBH2jKAjYK8

※「これからの窓口対応 きほんのマニュアル」の注文https://www.tokyo-sk.com

8月定例報告について

関東信越厚生局より「歯科診療所に係る定例報告等について」通知されています。

  • 施設基準の届出を行った保険医療機関は、毎年8月1日現在で届出書の記載事項について地方厚生(支)局長へ報告を行うこととされています。つきましては、下記報告の流れに沿って報告書の提出をお願いいたします。
  • 報告書等については、厚生局該当ページよりダウンロードしていただき、必要事項をご記載の上、プリントアウトしたものを保険医療機関が所在する都県を管轄する事務所宛に1部ご郵送をお願いいたします。
  • 提出期限は令和7年8月29日(金)になります。

関東信越厚生局の「歯科診療所に係る定例報告等について」より抜粋。詳細は該当ページをご確認ください。

各医療機関の施設基準届出状況の確認はこちらから→保険医療機関・保険薬局の施設基準の届出受理状況及び保険外併用療養費医療機関一覧
直近の施設基準届出状況はこちらから→保険医療機関、保険薬局、訪問看護ステーションの施設基準等の届出受理状況(直近届出分)

★令和7年6月1日時点の施設基準届出状況の確認はこちらから→13届出受理医療機関名簿(歯科)東京r0707

監事の藤野健正氏が勇退/引き続き協会「顧問」として会務協力

監事の藤野健正氏が勇退/引き続き協会「顧問」として会務協力

(左から)坪田有史氏、藤野健正氏

監事の藤野健正氏が、今総会を機に退任を表明した。藤野氏は1981年11月に協会会員となり01年6月に理事、11年6月に副会長、15年6月から再度理事を務め、19年6月から監事に。今後は協会顧問として、これまでの経験を活かしていただくことになった。

【IT相談室】 AIとは何か③/そのメリットは

【IT相談室】AIとは何か③/そのメリットは

AIの利用方法として、マウスピース矯正のようにAIが組み込まれたシステムを利用する方法と、AIサービスをご自分で利用する方法があります。

今回は、主にAIサービスをご自分で利用する場合におけるAIのメリットをご説明します。

◆AIは実現してくれる

例えば、予防歯科のパンフレットを作る時、これまでであれば原稿をまとめ、印刷会社やデザイナーに依頼します。AIを利用する際には、ラフ画像や指示を「ChatGPT」などのLLM(large language model/大規模言語モデル)に入力すれば、パンフレットの原稿が作成できます。できあがった原稿を印刷会社に送って、パンフレットを作成します。また、いくつかのキーワードを用意すれば、医院のブログも作成できます。上手に活用すれば、ホームページの更新頻度が上げられるかも知れません。Microsoft社の「Microsoft365 Copilot」というサービスでは、AIがPowerpointプレゼンテーションを作成する機能もあります。

◆AIはすぐやってくれる

パンフレットを印刷会社に依頼したり、ブログをスタッフに依頼すると、仕上がりまでに時間がかかります。AIは数分という単位で仕上げてくれます。修正を何度でも素早く対応してくれます。スタッフに仕事を依頼する時のような説得も不要です。

◆AIはいつでも助けてくれる

誤字脱字の校正などの簡単な作業から、医院の年間の事業計画のまとめや経営課題の解決まで、AIは幅広い知識で、いつでも、いつまでも相談でき、具体的なアウトプットをしてくれるアシスタントです。言葉で指示が出せること、少しずつ修正しながら仕上げていけることが最大のメリットです。

このように大変便利なAIですが、活用の上で注意すべき点があります。次回は、その点についてご説明します。

保険請求のルールも取り上げ/2025年度新規個別指導の計画概要を解説/新規開業医習会で「知りたいことが理解できた」

保険請求のルールも取り上げ/2025年度新規個別指導の計画概要を解説/新規開業医習会で「知りたいことが理解できた」

協会は525日、ワイム貸会議室高田馬場で新規開業医講習会を開催し、27名が参加した。今年度初の当講習会では、関東信越厚生局から開示して間もない2025年度新規個別指導計画について、指導の実施月や注意点を解説したほか、協会に寄せられた相談事例を基に、保険医として把握すべき内容を説明した。

参加者は、7月以降に新規個別指導を受ける予定の開業医や勤務医、今後新規開業を予定している勤務医のほか、「改めて保険請求やカルテ記載を確認したい」というベテラン開業医も散見された。

講習会では、今年度の指導計画を踏まえ、持参物や指導で指摘されやすい項目を中心に、多くの保険医が悩むカルテ記載や保険と自費の混合診療の考え方、歯周治療と補綴の流れなどを解説した。また、協会にも電話相談が多い、Ceや根Cの管理とF局、CAD/CAM冠の適用なども解説し、日常の保険請求でも覚えておきたいルールについても説明した。

終了後のアンケートでは「知りたかったことがよく理解できた」「指導時の注意点が分かった」などの声が寄せられ好評だった。

◆次回は9月(▼研究会・行事のご案内はコチラ

今年度の新規個別指導は、7月の指導を皮切りとして、年6回・264件の実施が計画されている。次回の当講習会は928日(日)開催で、これから新規個別指導を受ける会員や改めてルールを学び直したい会員のサポートを行う。新規個別指導を控えている先生だけでなく、ぜひ、保険ルールやカルテ記載を学び直せる場としても活用いただくよう、勤務医からベテランを含む、多くの先生のご参加をお待ちしている。

第3回施設基準講習会を開催/外安全1・外感染2・口管強など研修要件対応/新規に届出を行う会員を対象

第3回施設基準講習会を開催/外安全1・外感染2・口管強など研修要件対応/新規に届出を行う会員を対象

繁田雅弘氏

坂下英明氏

馬場安彦氏

森元主税氏

 

 

 

 

協会は622日、ワイム貸会議室高田馬場で、診療報酬改定後に追加された研修内容を含む「第3回施設基準のための講習会」を開催した。講師は、繁田雅弘氏(東京慈恵会医科大学名誉教授)、坂下英明氏(明海大学名誉教授)、馬場安彦氏(当会副会長)、森元主税氏(当会理事)の各氏が務めた。

本講習会は、歯科点数表の初診料の注1に係る施設基準(歯初診)、歯科外来診療医療安全対策加算1(外安全1)、歯科外来診療感染対策加算2(外感染2)、口腔管理体制強化加算(口管強)、在宅療養支援歯科診療所(歯援診)12の研修要件に対応した内容であり、新たに施設基準の届出を行う会員を対象としている。

当日は、「歯初診・外安全1・外感染2対応コース」には20名、「歯初診・外安全1・外感染2、口管強、歯援診対応コース」には40名が参加した。

◆次回は11月以降に開催

なお、次回開催は11月以降の予定で、詳細は、機関紙または協会ホームページ、デンタルブックニュースで案内する。新規で施設基準の届出を検討している会員は、ぜひご参加いただきたい。

▼研究会・行事のご案内はコチラ

退任のご挨拶/8年間の感謝  東京歯科保険医協会前会長  坪田 有史

退任のご挨拶/8年間の感謝 東京歯科保険医協会前会長 坪田 有史

2012年1月に本会に入会させていただき、136月に理事、156月に副会長、176月に会長を拝命しました。会長職を務めさせていただいた8年間、会員の先生方、事務局の方々には大変お世話になりました。会長という責任のある立場で、会員そして患者、国民の視点を常に第一に考えるように心がけてきました。

8年間、さまざまな経験をさせていただき、充実した時間を過ごせたことに心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

新会長所信表明/歯科医療を正しく理解してもらうべき時代

新会長所信表明/歯科医療を正しく理解してもらうべき時代

◆世界に誇る国民皆保険制度を次世代へ

このたび、第53回総会におきまして、東京歯科保険医協会第6代会長に就任いたしました。誠に光栄に存じますとともに、その責務の重大さに身の引き締まる思いでございます。今後は一層の覚悟をもって職責を果たしてまいります。

「保険で安心して、きちんとした診療ができるようにしよう」―これは、1973年に当協会を設立された初代会長・小林昌平先生から受け継がれてきた、協会の根幹をなす理念です。私は、第2代会長・大多和彦二先生の時代に入会し、第3代会長・中川勝洋先生には新規開業時にご指導をいただきました。その後、第4代会長松島良次先生、第5代会長坪田有史先生のもとで理事、副会長と務めさせていただき、協会活動の現場を間近に見てまいりました。

今回、会長に立候補した背景には、いくつかの強い思いがあります。

まず1つ目に、歯科医療は国政と密接に関わっているということ。診療報酬の改定は国家予算に直結し、国会議員への要請活動や厚労省・都への働きかけは、医療を守るために欠かせない活動です。

2つ目に、保険医の先生方の生活を守るという視点も重要です。当協会が提供する休業保障制度や保険医年金、グループ生命保険は非常に優れた制度であり、もっと多くの会員に知っていただきたいと考えています。

3つ目に、メディアとの連携強化も課題です。広報活動を通じて、歯科医師の実情や課題を社会に広く伝えていくため、メディア関係者との関係性を一層深めていきたいと思います。

最後に4つ目として、事務局の働き方改革にも引き続き取り組み、負担軽減と業務の効率化を図ってまいります。

我々の目指す歯科医療は、「人生の最期の日まで自分の口でおいしく食べられること」、すなわち健康長寿社会の実現に貢献することです。近年、口腔環境が全身疾患に及ぼす影響が広く知られるようになり、歯科の重要性が再認識されています。まさに、歯科医療を正しく理解してもらうべき時代です。

一方で、少子高齢化と医療費増加により、1961年に始まった国民皆保険制度がいま、大きな岐路に立たされています。この世界に誇る制度を次世代に引き継ぐためにも、医療の質の向上を目指し、誰もが安心して医療を受けられる環境を守らねばなりません。

「食べることは生きること」、国民の皆さまが安心して歯科医療を受けられる社会をめざし、会員の皆さまと力を合わせて協会活動を一層推進してまいります。今後ともご指導・ご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

東京歯科保険医協会

6代会長  早坂美都

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