きき酒 いい酒 いい酒肴① 「とりあえずビール」からの卒業/自然発酵ビール“ランビック”

きき酒 いい酒 いい酒肴①

「とりあえずビール」からの卒業/自然発酵ビール“ランビック”

 

1日の診療が終わったあとの1杯…というと、やはり「とりあえずビール」ということになることがほとんどです。お酒を飲む日本人で、ここ何年もビールを飲んだことがない、という人はいないくらい、「最初の1杯」に定着しているのがビールかと思います。

ビールとは、何でしょう?簡単にいうと、麦からできる醸造酒。これが基本で、そこにホップ、イースト、水などが加えられていくのです。

きき酒師、ワインソムリエと、趣味で公認資格をとった私のところに「もっと知識を深めるため“ビアアドバイザー”の勉強はいかがですか」というお誘いがきたので、正直、あまり興味がなかったのですが、せっかくの機会なので、1日だけの講義とテイスティングに出席してみました。

ビールの起源は、メソポタミア文明のころにさかのぼります。そんな話を朝からほとんど休憩なしで聞き、午後からテイスティング。20種類ほどのビールが並べられ、まず驚いたのはその豊富な色と香り。最初にテイスティングして、「すっぱい!臭い!」強烈なインパクト。それが、野生酵母による自然発酵ビール〝ランビック〟との出会いでした。ベルギーのブリュッセルで作られたものだけに「ランビック」の呼称が認められています。意図的に古いホップを使っているそうで、チーズくさくて、酸っぱくて濁っていてカビのような埃のような香りすらします。日本のきれいなビールとはかけ離れていますが、はまると大変。とりつかれてしまう魅力があります。このビールに合うのは「ムール貝のランビック蒸し」。ムール貝には白ワインが定番だと思っていましたが、ビールで蒸されたムール貝は、磯の香りがたまらなく、同郷の酸っぱいビールによく合うのです。

かくして、猛勉強?の甲斐もあり、無事、ビアアドバイザーの試験に通り、私はお酒の資格三冠を達成しました。家の中は、地下収納庫に入りきれなくなった日本酒、ワイン、ビールが溢れかえる悲惨な状況になり、業務用ワインセラーを購入することになってしまいました。

ランビック写真350pix

(早坂美都/通信員/世田谷区)