Midnight in Paris~ミッドナイト・イン・パリ~

Midnight in Paris

~ミッドナイト・イン・パリ~

2011年米国・スペイン合作/ウディ・アレン監督

 

「本当に信じられないよ」

「パリに来ているなんて」

「何度も来ているじゃない」

「見える?うっとりするほど美しい雨のパリ」

「1920年代を想像してみてよ」

「芸術家たちが、雨のパリ で…」

「何でいちいち雨なの?」

「濡れるだけじゃない」

「僕たち、結婚したら」

「パリに住もうよ」

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 この映画はエッフェル塔、サンジェルマン・ドゥ・プレー、ルクサンブルグ公園、セーヌ河畔、凱旋門、シャンゼリーゼ通り、コンコルド広場そしてヴェルサイユ宮殿など、美しいパリの街々をさながら観光客がめぐるように、魅惑的なスライドショーで始まります。

 主人公の男は、物欲や俗物的趣向に取りつかれ、夢や希望を喪失した現実や恋人に失望し、自分のことをマンネリ映画の脚本書きと卑下している男、ウッディ・アレン自身がタイムスリップものの体裁を取りながら、彼の憧れの「1920年代パリ」と現実の間を行き来します。目が覚めると夢遊病者のように自分のベッドの中に舞い戻っている…。という設定です。

 1920年代のパリは、アメリカの作家ヘミングウェイや作曲家コール・ポーターらが暮らし、ピカソ、ダリ、マチス、ゴーギャン、モジリアニー、ゴッホ、アンリー・ルソーなど新人画家が新しい表現を模索している場所でした。

 モンターニュ・サント・ジュヌヴィエーヴ通りの教会の時計台の鐘が午前零時を告げると、魔法がかかったようにオレンジ色のクラッシック高級車・プジョーが細いカーブの坂道の路地に現れ、「アレ、アレ」と「1920年代のパリ」の世界に男をいざないます。

 ジャン・コクトー主催の社交クラブで、スコット・ジェラルド夫妻、ピアノを弾くコール・ポーター、ヘミングウェイと遭遇し、魅惑的な時間を過ごします。

 毎晩零時、「1920年代のパリ」に繰り出し、やがて、パブロフ・ピカソの恋人、アドリアーナの魅力の<RUBY CHAR=”虜”,”とりこ”>になってしまいます。

 惹かれ合っていく2人。セーヌ河畔をアドリアーナと2人で散歩する夢のような夢を見ます。

 映画では、登場する人物は本物そっくりの俳優を使い、この時代のアール・デコの風物や芸術をさりげなく写し出しています。アドリアーナに扮するマリオン・コティヤールは映画「ピアフ」や「ナイン」などでお馴染みのその美しさは際立ち、多くの観客を魅了してしまいます。

 1920年代の芸術をあらかじめ知っていると面白みはさらに深まり、あまり知らなくても、なにか新鮮な知識をウッディ・アレンの夢の世界からくみ取ることができます。

 2011年、第84回アカデミー賞で脚本賞を受賞し、これまでのウッディ・アレンの作品の中でも高い評価を受けました。この映画は、抑圧された夢の映像化という原則をあらためて教えてもらえる作品です。 (竹田正史/協会理事)