連載/遊歩道 第2回 「歯初診の施設基準に新たな研修項目が追加される」/東京歯科保険医協会副会長 坪田 有史

連載/遊歩道 第2回 「歯初診の施設基準に新たな研修項目が追加される」/東京歯科保険医協会副会長 坪田 有史

6月施行に向けて、2026年度歯科診療報酬改定(以下、改定)は、1月に個別改定項目の公表、2月に答申、3月に官報告示・関連通知の発出、4月改定と各ステップが着々と進み、その都度、協会は、会員に適時メールニュース、本紙などで情報を発信してきました。そして4月10日(金)に「文京シビックセンター」で第1回新点数説明会を開催します。今次改定の内容を分かりやすく解説しますので、ご参加のほどよろしくお願い申し上げます。
続いて第2回新点数説明会は、6月施行の直前となる5月21日(木)に保険請求時の注意点を中心に「なかのZEROホール」で、さらに5月27日(木)には在宅医療を中心に解説する第3回新点数説明会を同じく「なかのZEROホール」で開催します。

◆初・再診料の引き上げと「歯初診」届出の影響
今次改定は、臨床現場の不合理の多くが是正された改定であると私は評価しています。しかし、歯周病安定期治療(SPT)と歯周病重症化予防治療(P重防)が整理・統合されて歯周病継続支援治療になること、有床義歯で義管と歯リハ1との同日算定、歯科衛生士ならびに歯科技工士への評価、ベースアップ評価料の変更など、保険診療を行う上で、理解が必要な変更点が多くあります。今回、初診料と再診料の点数アップと歯科初診料注1の施設基準(以下、「歯初診」)の研修要件の追加について解説します。今次改定において、初診料と再診料は、「歯初診」の届出を行っていれば改定前の初診料267点が、6月の改定後には5点増点の272点に、再診料58点が1点増点の59点なります。「歯初診」が未届の場合、改定前の初診料240点が、6月からは5点増点の245点に、再診料44点が1点増点の45点になります。これら初・再診料の点数引き上げの理由は、物価高騰による医療機関の物件費増加への対応とされています。表に12年からの歯科(「歯初診」届出医療機関)と医科の初・再診料の変遷を示します。歯科と医科の基本診療料の差は、12年時は初診料52点の差だったのが今次改定で19点、再診料27点の差が今次改定で17点と少しずつですが、縮まっているのが分かります。
なお、「歯初診」の届出医療機関と未届の医療機関で初・再診料に小さくない点数の差が設定されたのは、18年度改定でした。なお当時、半年間の経過措置が設けられたため、18年10月1日から新たな点数で初・再診料の算定となりました。したがって、それ以前の多くの医療機関は、この経過措置の半年間で常勤歯科医師の院内感染防止対策(22年改定時に追加:標準予防策および新興感染症に対する対策)に関する研修を受講、届出を行い、その後に毎年行う定例報告(当時、7月報告)で研修名や受講年月日などを記載して、関東信越厚生局へ報告してきました。研修は4年に1回以上の受講と定められていますから、22年に2回目の研修を受講された会員が多いと推測されます。したがって、今年26年は多くの会員が3回目の研修を受講する必要があります。なお、25年に行った8月報告(24年改定より7月から8月に変更)は、今次改定で添付書類の省略などの簡素化を理由に廃止となりました。したがって、定例報告の必要はなくなりますが、4年に1回以上の研修の受講は、引き続き必要です。

◆研修項目追加の背景と今後の対応

今次改定で「歯初診」の研修の項目に薬物耐性に関する「抗菌薬の適正使用」が追加されました。世界中で話題になっている薬物耐性菌による死亡者数、さらに薬物耐性菌が関連した死亡者数の推計数はとても大きな問題といえます。我が国の歯科医療の現場で、抗菌薬が適正に使用されているとはいえない現状に対して、26年1月16日に厚生労働省から「抗微生物薬適正使用の手引き」第4版として歯科編が発行されました。このことが今次改定での「歯初診」の研修項目の追加の契機となったと推測されます。ぜひ、第4版・歯科編をご覧になり、直近の情報から歯科におけるAMR(薬剤耐性)対策への理解を深めていただきたいです。そのうえで、抗菌薬の不適正使用を是正し、すべての歯科医療従事者が薬物耐性菌の発生リスクの低減に努めることが重要であり、その取り組みこそが、未来の医療を守るための責務であると考えます。なお、新たに研修を受講される方は、協会で開催する26年度院内感染防止対策講習会(歯初診)をオンライン(Zoom)にて受講いただけるよう準備中です。講習会では「抗菌薬の適正使用」についても触れています。詳細が決定次第、新聞や協会ホームページでお知らせします。ぜひご利用ください。

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