【政策委員長 談話】地域医療を守るため、プラス改定の実感を得られる改定内容を求める
次期診療報酬の改定率が発表され、プラス3・09%と、1996年度以来の3%超の改定となった。物価高騰や人件費上昇が続く中での3%を超えるプラス改定には一定の評価を示したい。
しかし、消費者物価指数(CPI)が2022年度以降、毎年約3%上昇し、他業種の賃上げが3~5%台に達している状況であり、診療報酬改定が2年に1度であることを考えれば、疲弊する歯科医院の経営を抜本的に改善するには程遠い。
歯科では、歯科材料費などの物価上昇、水道光熱費の高騰、委託技工料や外注費の増加などの影響を受けやすい。また、テナント料も増加しており、特に東京23区は医療経済実態調査で示されているように、より一層厳しい状況である。さらに、医療DXが急速に進み、機材導入費用やランニングコスト増が経営を圧迫している。このような厳しい経営環境の中でも、歯科医療水準を保つため、スタッフの雇用・定着のため、賃上げに取り組んでいる。医療経済実態調査を見ると、歯科衛生士は金額の伸び率が前年度比3・3%、歯科業務補助者は前年度比3・5%増となっている。一方、院長、歯科医師は1・2%~5・1%減となっており、自らの給与を削って人件費に充てている状況が示されている。
事実、閉院・廃業を理由とした当会の退会も、これまでは30件前後で推移していたが、2024年は54件、2025年は56件と増加している。このままでは、安心して受診できる歯科医療の継続が難しくなり、地域の歯科医療が成り立たなくなる可能性がある。
今回の改定率の水準は、歯科医療現場の実態よりも、財政抑制を優先した財務省の姿勢を汲んだものだと思われる。財務省は「経営努力」「効率化」を繰り返し求めるのみで、地域医療を守る姿勢が全く見られない。今後予測される金利変動や国際的な物価急騰などの「外部リスク」を経営努力だけで吸収させることには限界がある。一時しのぎの補正予算による手当ではなく、しっかりと診療報酬本体の改定で評価すべきである。
歯科医療の役割は、次期改定の議論でも示されているように、リハビリテーションや栄養、生活習慣病対策など全身疾患やQOL(生活の質)にも影響を及ぼす、国民の健康と生活の質を支える医療である。今後、具体的な改定内容が決定されていくが、将来にわたって歯科医療の役割を果たすためにも、より一層の評価と、現場の歯科医師がプラス改定の実感を得られる改定内容を求める。
2025年12月19日
東京歯科保険医協会
政策委員長 松島 良次



