談話「生活を脅かす介護保険利用者の負担割合引き上げに反対する」

談話「生活を脅かす介護保険利用者の負担割合引き上げに反対する」

 介護保険制度は、介護が必要な高齢者とその家族を社会全体で支え合い、利用者の生活や尊厳を守るために作られた制度であり、安定的に支援を受けられることが重要である。

 20251111日の財政制度分科会で議論された介護保険利用者の負担割合の見直し(2割~3割負担増)は、利用者に経済的負担を強いるものとなり、必要な介護サービスの利用控えを招くのは明らかだ。特に歯科受診は所得や自己負担額の影響を受けやすい。受診が減ることで口腔機能の低下を招き、食事量の減少による低栄養やフレイル、感染症の増加につながる恐れがあり、全身疾患に悪影響を及ぼす可能性がある。

 介護サービスは入浴や食事など、生活に溶け込んでいるものが多く、経済的な理由で妨げることは結果として介護度の進行、生活の質(QOL)の低下、さらには医療・介護費全体の増大につながり、むしろ社会的なコストを押し上げる恐れが極めて強い。

 介護は社会全体で支えあう必要があり、負担割合の引き上げという利用者へのしわ寄せではなく、予防の取り組みへの支援や継続的に介護サービスが受けられる仕組みの強化が必要である。誰もが安心して介護サービスを受けられる体制を守るため、生活を脅かす介護保険利用者の負担割合引き上げに反対する。

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東京歯科保険医協会
地域医療部長 池川 裕子