運動本部

早坂会長も署名を呼びかけ/保険証復活・資格確認書の一斉送付求める

早坂会長も署名を呼びかけ/保険証復活・資格確認書の一斉送付求める

 ◆関東ブロック協議会・街頭宣伝

保団連関東ブロック協議会(以下、関ブロ)は、会議に参加した各協会の会長・理事長が921日の夕刻、新宿駅南口前で白衣の街頭宣伝を行い、道行く人たちに「保険証を復活させよう!」「医療危機、地域医療を守ろう!」と訴えた。

街頭で署名協力を呼びかける早坂会長

当協会の早坂美都会長が「マイナンバーカードには電子証明書の有効期限があり、マイナ保険証を持って医療機関を受診しても使えない場合がある。そういうことが起きないように世田谷区と渋谷区では、資格確認書の一斉送付を決めた。この方法を広めるために東京都知事、東京都内区市町村の自治体宛に資格確認書の送付を求める陳情書・要望書を提出した。署名にも取り組んでいるので、足を止めて協力してほしい」と訴えた。

宣伝では「保険証を使い続けたい」請願署名を折り込んだポケットティッシュを配布、立ち止まって署名に応じる人たちが多数に及んだ。また、「地域住民の医療を受ける権利を保障するために医療機関の維持存続への支援を求める」請願署名への協力もあった。

 

10月12()には、関ブロ主催の「地域から医療をなくすな!緊急決起集会〝経営危機打開のため、次期診療報酬の大幅引き上げを勝ち取ろう〟」を都市センターホテルで開催するので、ぜひ、ご参加いただきたい。

ここがポイント!! /「資格情報のお知らせ」のみ持参時の対応/9月末で国保保険証が期限切れ

ここがポイント!! /「資格情報のお知らせ」のみ持参時の対応/9月末で国保保険証が期限切れ

国民健康保険(以下、国保)の健康保険証の有効期限が本年9月末で終了し、10月からはマイナ保険証がある患者はマイナ保険証で、マイナ保険証がない患者は資格確認書で資格確認する仕組みになった。

既に有効期限を迎えていた他県では、「資格情報のお知らせ」だけを持参するなどのトラブルが報告されている。

◆来年3月まではオン資で資格確認

「資格情報のお知らせ」は、オンライン資格確認システム(以下、オン資)未導入の医療機関を受診した場合などでも資格確認ができるよう、マイナ保険証と一緒に持参するものだ。ただ、暫定的な措置として、来年3月までは、「資格情報のお知らせ」のみでも国保の患者はオン資を用いて資格確認できる。

オン資による資格確認の流れは、①メニュー画面の「保険証/処方箋で確認」をクリック、②「資格情報のお知らせ」にある保険者番号等を入力、③検索一覧から該当者を選択、④資格情報を入手―となる。

また、有効期限切れの健康保険証を持参した国保の患者の場合も、来年3月末までは同じ扱いである。

なお、社保の患者の場合は、健康保険証が使用できるのは最大で今年121日までである。

◆マイナ保険証を使う意義はどこに?

「資格情報のお知らせ」や有効期限切れの保険証でも資格確認できるのであれば、顔認証付きカードリーダー(以下、CR)を導入してまでマイナ保険証を使う必要があるのだろうか。

なりすまし❞が懸念される場合、オン資に表示される住所などの情報を用いて本人確認する方法が有効だ。マイナ保険証は暗証番号が使い回しされれば、なりすましを防ぐことは困難。また、CRは定期的な買い替えが必要だが、それに対する補助金はない。それならば、全患者に資格確認書を送付し、それを用いてオン資で資格確認する仕組みの方が、なりすまし防止に繋がり、コストの点で医療機関に有利である。

◆全ての国保患者に 「資格確認書」の交付を

協会は、現場の混乱を解決すべく、東京都と全区市町村に対し、全ての国保患者に資格確認書の交付を求める陳情や要望を行っている。資格確認を巡るトラブルなどでお困りの際は、迷わず、協会までご相談いただきたい(☎ 03―3205―2999)。

厚労省資料から歯科の現況を考える/患者の視点で考える 診療報酬の引き上げの必要性

厚労省資料から歯科の現況を考える/患者の視点で考える 診療報酬の引き上げの必要性

物価や人件費の高騰などの影響で多くの医療機関の経営は苦しい。次期診療報酬改定の大幅な引き上げが求められるが、患者の動向や疾病構造の変化に注目した要求も必要だろう。

ここでは、患者層や患者の視点から、次期改定の要求の方向性を考えてみる。

◆患者層からみるポイント

今年7月に厚生労働省が公表した「医療給付実態調査」(2023年度調査)から、全国のレセプト件数の年齢推移をみると、図1となる。レセプト件数のピークは、59歳、5054歳、7074歳であることが分かる。

また、男女の差にも特徴があり、10代までは男女差はほぼないが、20代以上になると女性患者が多い傾向がみえる。

 

 

 

 

 

◆患者は何で選ぶのか?

ところで、患者はどのような視点で歯科医院を選ぶのだろうか。厚労省の「2022年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査」(以下、特別調査)の結果によると、受診した歯科診療所を選んだ理由として、「自宅から近い(47.9%)」よりも割合が高い項目に、「信頼している歯科医師がいる(67.9%)」「歯科医師や職員の感じが良い(63.2%)」「定期的な管理をしてくれる(54.6%)」などがある。

つまり、信頼や好印象を得られる患者対応や、分かりやすい説明、適切な定期的管理などを患者は重要視しており、それが実現できるような診療報酬の在り方を求めていかなければならない。

◆患者が求める医療 十分提供できる体制を

患者は、親切・丁寧な治療を求めていることが分かる。しかし、物価や人件費の高騰で一人でも多くの患者を診療しようとすれば、一人当たりの診療時間が減ってしまう。患者が求める丁寧な診療を行うためには、診療報酬の大幅な引き上げが必要である。

協会は、「地域の医療機関を守るため、緊急財政措置と診療報酬の大幅な引き上げを求める医師・歯科医師要請署名」を集め、近く国会議員に要請を行う。ぜひ、署名にご協力をいただきたい。

「現場の声」をお寄せください-緊急要請署名のご案内-

物価や人件費の高騰で医療機関の経営は厳しくなっており、次期診療報酬改定で大幅な診療報酬の引き上げを実現しなければ医療現場は更に困窮します。
そこで、診療報酬の大幅引き上げを求める要請署名に取り組んでいます。先生方から多くの現場の声をいただき、直接、行政や国会に届けます。
つきましては、以下のGoogleフォームから詳細をご確認いただき、必要事項をご入力のうえ、「送信」をクリックしてください。

▼現場の声を届ける要請署名はこちらをクリック▼

大幅な診療報酬引き上げ必須/実調から見る歯科の実状

大幅な診療報酬引き上げ必須/実調から見る歯科の実状

診療報酬改定の争点の1つは国家予算の医療費への配分であるが、その重要な指標が「医療経済実態調査」である。協会は秋の臨時国会にあたり、診療報酬の引き上げなど歯科に係る要求を行うが、直近の調査結果から歯科の窮状を考える。

◆保険も自費も減少損益差額は約1割減

直近2022年度の個人立の歯科診療所における結果(最頻値)は表のとおりだ。収入の柱である医業収益は保険・自費共に前年度比で減少し、それを補うべく経費節減に努める傾向がうかがえる。特徴的なのは給与費と損益差額で、昨今の賃上げの流れを受けて給与費は上がったが、開設者の報酬および内部資金に相当する損益差額は前年度比で9.2%も減少している。まさに身を切った賃上げが行われている。

 

◆大幅引き上げなくして手取りは増えない

24年度診療報酬改定の歯科の改定率は+0.57%だった。医業収益からみて見劣りする引き上げ幅である。改定後の調査結果は今冬に公表されるが、この間協会のアンケート調査や金パラの値上がりなどを考慮すると、歯科の窮状は依然として続いていると思慮される。医業収益のほとんどは保険診療で支えられており、歯科医師および従業員の手取りを増やすことを考えれば、診療報酬の大幅引き上げは必須である。

協会は、歯科の窮状の打開を目指すべく、臨時国会において診療報酬の引き上げを求めて行政へ要請を行っていく。引き続き、協会活動へのご理解、ご協力をいただきたい。

あなたも、参加しませんか!!/もう限界 平和と社会保障を立て直せ!/9.25「いのちまもる総行動」

あなたも、参加しませんか!!/もう限界 平和と社会保障を立て直せ!/9.25「いのちまもる総行動」

◆守ろう!医療の現在・未来 動くのは今

評価が低くて分かりづらい診療報酬、次々に変わるルール、物価高騰や難しいスタッフ確保などの経営環境の悪化…。「このままで、自院の将来はどうなるのか」と思うのは、先生だけではありません。

手をこまねいて待っているだけでは、何も変わりません。私たちが声を上げて行動しなければ、誰が歯科医療の「現場」、「明日」そして「未来」を守るのでしょうか。一人の声は小さくても、仲間が集まれば大きなうねりになります。

この集会は、その第一歩となるものです。歯科だけでなく、医療や介護などで働く仲間とともに、私たちの手で切り開きましょう!多くの方々のご参加をお待ちしております。

昨年の総行動会場の日比谷野外音楽堂内

パレードの模様

<集会の概要>
  • 日時: 925日(木)午後1時~230分 *集会後はパレードを予定!!
  • 内容: 国会議員挨拶、医療分野などの参加者からのリレートークほか
  • 会場: 日比谷野外音楽堂(東京メトロ丸ノ内線・日比谷線・千代田線「霞ヶ関駅」 徒歩4分)
  • 対象: 医師・歯科医師・看護師・保育士・医療スタッフ・その他関係者
  • 参加団体: 全国保険医団体連合会ほか9団体
  • お申込み・お問い合わせ: 協会運動本部(TEL:03-3205-2999)

多くが9月末に有効期限/国保の健康保険証/全加入者に「資格確認書」を都・区市町村へ緊急要請

多くが9月末に有効期限/国保の健康保険証/全加入者に「資格確認書」を都・区市町村へ緊急要請

東京都における国民健康保険(以下、国保)の健康保険証は、概ね9月末に有効期限を迎える。その期限まで残り2カ月を切った。
後期高齢者とは異なり、渋谷区・世田谷区を除く国保では、マイナ保険証を登録した加入者に対しては「資格確認書」を発行しない方針である。マイナ保険証を登録したものの、現行の健康保険証を使い続ける患者は多く、混乱は必至だ。協会はこの事態を解決すべく、東京都および都内の全区市町村(世田谷区・渋谷区を除く)に資格確認書の一斉送付を求める要望を行った。
◆このまま進めば患者も自治体も混乱の渦中へ
マイナ保険証は、国民全体の約7割が登録しているが、患者の利用率は約3割で、多くが健康保険証を使い続けている。その理由は、「紛失リスクを恐れてマイナ保険証を持ちたくない」などの不安に根差すものと思われる。
マイナ保険証を登録した国保の患者が資格確認書を持つには、患者自らが区市町村に登録解除申請を行うか、要配慮者であればその申請を行う必要があり、これは患者には大きな負担となる。
負担増問題は、区市町村にもいえる。マイナ保険証の登録の有無によって資格確認書の送付対象を選定しなければならず、問い合わせや登録解除申請などの対応に忙殺される。また、マイナ保険証登録者に「資格情報のお知らせ」を郵送しているのであれば、コスト削減の観点では単体で使える「資格確認書」を一斉交付した方がよい。これは直ちに全都で行うべきである。
◆渋谷区・世田谷区の取り組みを都内全域で
協会が行った要望が陳情として扱われた場合、区市町村の議会は採択か不採択かを判断することになる。
ぜひ、議会の動向に注目をいただくとともに、引き続き協会活動へのご協力をいただきたい。

厚生労働省要請を実施/現場の診療行為と保険点数の乖離訴え CAD/CAMや口腔機能管理の要件緩和など要求

厚生労働省要請を実施/現場の診療行為と保険点数の乖離訴え CAD/CAMや口腔機能管理の要件緩和など要求

協会は73日、厚生労働省に対し、2026年度診療報酬改定に向けた要請を行った。

協会からは、加藤開、坪田有史、本橋昌宏各副会長、および川本弘、濱﨑啓吾両理事、事務局が参加。厚労省側は、保険局医療課の早乙女雅美主査(歯科医師)が対応した。

保険局医療課の早乙女雅美主査(歯科医師)

具体的には、①CAD/CAM冠・インレーの適用の判断は歯科医師の裁量とすること、②観血処置後の局所止血処置が可能な薬剤の歯科適用拡大、③口腔機能管理料および検査に係る評価をすること、④歯科衛生実地指導料の点数引き上げ、⑤CAD/CAMインレー形成加算(CADIn形)を個別点数として評価すること、アンレーの点数の新設、生活歯および失活歯の大臼歯の単冠を4/5冠の適用とすること、歯周病ハイリスク加算と総合医療管理加算の重複した摘要欄記載の省略などについて要請。また、CAD/CAM冠・インレーについては、第三大臼歯や後続永久歯のない永久歯代行歯、下顎分割抜歯後の歯冠修復への適用拡大などについて要請した。

その他、SPTP重防における要件の差の是正や、義歯修理時の未来院請求についての改善を求めた。また、学校歯科健診の結果に基づく歯科矯正相談料の算定要件については、「歯科矯正相談料の基本的な考え方」の取り扱いを巡って意見を交わした。

協会は厚労省に対し、歯科医療現場での診療行為と保険点数や制度設計の間にある乖離や、複雑な算定要件による混乱を伝え、実態に即した診療報酬改定を行うよう、強く求めていく。

後期高齢者の保険証/有効期限終了/8月は「資格確認書」の確認を忘れずに

後期高齢者の保険証/有効期限終了/8月は「資格確認書」の確認を忘れずに

7月末に後期高齢者が持つ健康保険証の有効期限を迎えるが、全ての後期高齢者に「資格確認書」が発行される(1)。そのため、これまで健康保険証を提示していた患者は、8月から資格確認書を窓口に提示することになる。

東京都の国民健康保険の加入者においては、概ね9月末に健康保険証の有効期間が終了する。なお、他県の患者の場合は、7月末で有効期限が切れている場合がある。

国民健康保険加入者は後期高齢者とは異なり、資格確認書が、①渋谷区・世田谷区の患者、②マイナ保険証の登録解除などをした患者、③マイナ保険証がない患者、に発行される(2)。

マイナ保険証の登録をしたものの、健康保険証を使用している患者は相当数いると考えられ、窓口での混乱が懸念される。例えば、マイナ保険証を所有している患者には「資格情報のお知らせ」が送付されるため、現行の健康保険証を提示している患者の場合、マイナ保険証の代わりに誤って「資格情報のお知らせ」のみ持参し、その都度資格情報を確認する手間が増えることも考えられる。

マイナ保険証を登録した場合、資格確認書を確実に入手するには、マイナ保険証を登録解除するしかない。協会は、患者向けのリーフレットを無料で配布しているので、ぜひご活用いただきたい。

なお、協会は昨年「これからの窓口対応 きほんのマニュアル」を作成。複雑化する窓口での資格確認時にお困りの際はご確認いただき、対応の一助としていただきたい。

※「登録解除リーフ」の注文➜https://forms.gle/KFLz6hTBH2jKAjYK8

※「これからの窓口対応 きほんのマニュアル」の注文https://www.tokyo-sk.com

議員要請/「歯科医療費の総枠拡大」と「保険証の存続」を/歯科の重要性・保険証発行停止の問題に理解を求める

議員要請/「歯科医療費の総枠拡大」と「保険証の存続」を/歯科の重要性・保険証発行停止の問題に理解を求める

物価高騰により、国民の生活と歯科医療機関の経営は苦しくなっている。患者の窓口負担軽減と歯科医療費の総枠拡大を求め、4月に引き続き521日に坪田有史会長、早坂美都副会長が国会議員へ要請を行った。

口腔が健康な患者の医療費や介護費は、そうでない患者よりも低いとの調査結果があるなど、歯科の役割の重要性を強調し、患者負担の軽減と歯科医療費の総枠拡大は国民の健康にも寄与すると説明した。議員らは「歯科は体の健康にとって大事である」など、協会の意見に理解を示した。

また、坪田会長はマイナ保険証の利用率が低調であること、世田谷区と渋谷区の国保ではマイナ保険証の有無にかかわらず一律に資格確認書を発行する事態となったことを指摘。全国保険医団体連合会が行ったアンケートでは、約7割の医療機関が健康保険証の存続や併用を求めていると説明した。

その上で、協会には累計で1万筆を超える「現行の健康保険証を残してください」請願署名が届いたことを紹介し、従来の健康保険証の存続や当面はマイナ保険証の有無にかかわらず、全ての国民に資格確認書を発行すべきと訴えた。議員らからは、「健康保険証の問題は、深刻だと理解している」「これほど多くの署名が集まったのは驚いている」という声が聞かれた。

協会は、国会議員や行政との意見交換を通じ、現場の声を届けつつ、国民と歯科医療機関をめぐる諸問題を解決すべく、今後も要請を行っていく。引き続き、協会の諸活動へのご理解とご協力をいただきたい。

▼保険でより良い歯科医療を求める請願署名の紹介議員:円より子衆議院議員(国民)
▼健康保険証の存続を求める請願署名の紹介議員:酒井なつみ衆議院議員(立憲)、鈴木庸介衆議院議員(立憲)、松尾明弘衆議院議員(立憲)
▼要請に対応した議員:石田昌宏参議院議員(自民)
▼秘書などを通じて要望を伝えた議員:比嘉奈津美参議院議員(自民)、高木啓衆議院議員(自民)、大西洋平衆議院議員(自民)、山花郁夫衆議院議員(立憲)、塩村あやか参議院議員(立憲)

参院選に向け、推薦状をお渡ししました

協会は牧山ひろえ参議院議員(神奈川)へ7月20日(日)の参議院選挙に係る推薦状をお渡ししました。

歯科医療分野には様々な課題がありますが、その改善のためには、業界だけに留まることなく様々な方々に応援していただけるよう、幅広く活動を広げることが必要です。

東京歯科保険医協会として、日頃お世話になっている牧山議員との連携を深めることによって、より良い歯科医療の未来づくりを進めていきます。

参院選まであと数日ですが、1人でも多く、歯科医療分野にご理解をいただける方が当選されることを願っています。

 

188万筆  超保険証の存続で署名が集まる/世田谷区・渋谷区は「資格確認書」の一斉送付を決断

188万筆 超保険証の存続で署名が集まる/世田谷区・渋谷区は「資格確認書」の一斉送付を決断

保険証の存続を求める集会が4月および5月に行われた。424日の「保険証を返せ!医療機関の危機を打開せよ!」国会内集会は160名が、515日の「保険証を使い続けたい!」署名提出集会には420名が参加した。

参加者からの報告や発言で浮き彫りになったのは、マイナ保険証のトラブルは終息していないこと、また、「資格確認書」と「資格情報のお知らせ」をマイナ保険証の有無に応じて区別して発行する保険者側にも、大きな負担がかかっていることである。

オンライン資格確認システムの導入義務化により、多くの医療機関に金銭的な負担が生じているが、保険者からも「数億単位のコストがかかっている」という報告が上がっている。マイナ保険証に関するセキュリティや紛失リスクへの不安を抱えている患者もおり、健康保険証の存続を求める声が累計1885,594筆という署名筆数に如実に現れた。

◆現場の声で「資格確認書」を一斉送付

こうした中、概ね9月末で健康保険証の有効期限が切れる国保に大きな動きがあった。

世田谷区と渋谷区が、マイナ保険証の有無にかかわらず、「資格確認書」を全員に一斉送付することを決定した(下記図参照)。その決断の背景には、何よりもまず、区民の不安への配慮、75歳以上の後期高齢患者に資格確認書を一斉に配布していることとの整合性、また、問い合わせに対応する職員の業務負担増の問題への対応などがあるようだ。

結局のところ、健康保険証とマイナ保険証を併用する現在の仕組みが最も合理的といえる。協会は引き続き、健康保険証の存続を強く求めていく。

 

保険でより良い歯科医療を/署名提出への”4ステップ”  会員6,000人の「声」で要求実現を

保険でより良い歯科医療を/署名提出への4ステップ

◆「う蝕は減っている」といえるのか

歯科の現状を考える上で、「患者の口腔内がどうなっているのか」ということに焦点を当ててみる。概ね24歳まで、う蝕の有病率は年々減少傾向にあるが、3554歳にかけては有病率100%になる傾向は改善されていない(図1)。仕事や家事、育児などにより多忙となり、口腔のメインテナンスが後回しにされている可能性が高い。

また、高齢者の有病率増加は、8020の推進の結果、残存歯が多くなり、根面う蝕が増加していることがうかがえる。

◆家計が厳しいと患者は受診をやめる

物価上昇に賃金上昇が追い付いていないといわれて久しい。低所得者になるほど医科よりも歯科治療費を切り詰める傾向がある。経済的な理由による治療の中断は、他の調査でも示されている(表1)。この調査では、中断の理由として約7人に1人が「金銭的に余裕がなかった」ことをあげている。

患者は、家計が苦しくなると歯科治療の継続を諦め、医療機関においては患者数が一定程度減る可能性を示唆するものである。患者が歯科医院を受診しなければ、口腔の健康は守れない。

◆会員6,000人で取り組もう

協会は、患者の負担軽減と歯科医療費の総枠拡大などを求める「保険でより良い歯科医療の実現を求める」請願署名を集めて、本通常国会へ提出する活動を行っている(図2・3 参照)。

図3 署名用紙

署名用紙、返信用封筒をご希望の方は、お申し込みフォームまたは電話(運動本部:03-3205-2999)までご連絡ください。

OTC類似薬の見直しで起きる歯科の影響/痛み止め・軟膏・うがい液へ波及必至

類似薬の見直しで起きる歯科の影響/痛み止め・軟膏・うがい液へ波及必至

2025年度予算が3月31日に成立した。これに先立って行われた自公維の三党合意の内容には、社会保険料の負担引き下げを目的とした国民医療費の4兆円削減が含まれ、具体策の筆頭に「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し」が掲げられている。OTC類似薬をめぐる議論は国会でも始まったばかりだが、ここでは歯科への影響について考察する。

【意外と多い歯科でのOTC類似薬】

医薬品を大きく分けると、①医療用医薬品、②要指導医薬品や一般医薬品などのOTC医薬品―に分類される(図1)。違いの一つは、患者への提供方法であり、①は医師や歯科医師の処方、または処方箋の交付により患者へ薬が提供されるのに対し、②は、薬剤師や医薬関係者から提供された情報に基づき、処方箋なしに患者が薬局やドラッグストアなどで購入できる。

OTC類似薬の定義は明確にされていないが、OTC医薬品で販売されている成分を含んだ医療用医薬品を指すと考えられる。今回の見直しはOTC類似薬を保険から外し、ドラッグストアなどで一般医薬品などとして患者自らが購入することを目指している。歯科領域で考えると、消炎鎮痛剤、軟膏、うがい液などが保険給付外になる可能性を含んでいる。

【保険給付外で増える患者負担額】

OTC類似薬を保険給付外にすると、どの程度、患者の窓口負担が増えるのだろうか。ロキソプロフェンナトリウム60mg錠を頓服で5錠処方した場合を例に考えてみる。薬価は10.1円のため1 錠あたり1点、5錠では5点である。院内処方の場合、処方料42点、調剤料11点、および薬剤情報提供料4点も加わって合計は62点となる。患者の負担金は、3割負担では190円、2割負担で120円、1割負担では60円という試算になる。

一方、ロキソニンS(12錠)のメーカー小売価格は768円のため、5錠では320円である。3割負担の患者では130円分、2割負担で200円分、1割負担の患者では260円分増える試算になる。そのため、特に現役並みの所得がない1割負担または2割負担の高齢者において、より大きな負担増になる。また、子どもについても、東京都の場合は公費負担により通院時の自己負担は無料、または200円が上限となっているが、大人と同様に薬に関する自己負担が生じることになる。

【負担増による受診抑制の懸念】

歯科として懸念すべき点は、窓口負担の増加と患者の負担感の高まりによっておきる受診抑制である。歯科診療代は所得弾性値が高い。家計調査を基に総世帯の年間収入別の診療費をみると、医科は収入が減っても診療費がほぼ変わらないが、歯科の診療費は顕著に下がる(図2)。

そのため、OTC類似薬の保険給付外により窓口負担が上がれば、受診抑制が起きる可能性がある。これでは、国民の口腔の健康は守れない。

▼口腔の健康を守ることこそ歯科医師の役目

口腔の健康を守ることこそ、歯科医師の役目である。協会は、受診抑制や口腔状態の悪化に繋がる動きに大きな関心を持ち、行政や国会議員に適切な対応を求めていく。

来年7月まで全ての後期高齢者に資格確認書/アナログ・デジタル併用が1年延長

来年7月まで全ての後期高齢者に資格確認書/アナログ・デジタル併用が1年延長

◆保険証存続を求める要求  一歩前進か

4月3日に行われた社会保障審議会医療保険部会では、20257月末に有効期限が切れる後期高齢者の健康保険証への対応が検討された。マイナ保険証の利用率は2月時点で26.62%と低調で、85歳以上の利用率は特に低い。医療保険部会では、資格確認書の発行申請が区市町村窓口に殺到する恐れがあるため、マイナ保険証の有無に関わらず全ての後期高齢者に資格確認書を交付する運用を、267月まで継続することが了承された(図1)。

これにより、マイナ保険証がある後期高齢者は、来年7月まで登録解除申請をしなくても資格確認書が発行され、それを使えるようになる。協会は、アンケート調査などから医療現場の混乱を明らかにし、アナログとデジタルの併用を念頭に健康保険証の存続を求めてきたが、一歩前進したといえる。今後、有効期限が切れる国保や社保の加入者に対しても、同様の対応を求める必要がある。

◆電子証明書の更新件数今年は2.57倍に

2025年度に懸念されているのが、マイナンバーカードの電子証明書の更新件数の増加である。5年ごとに電子証明書の更新手続きが必要であるが、24年度は1,076万人だったものが、今年度は2,769万人と対象者が1,693万人も増加する。

電子証明書の更新手続き自体は簡便で、①有効期限の23カ月前に通知書が送付され、②マイナンバーカードなどを持って区市町村窓口に行って手続きをする。更新を忘れると、マイナ保険証は使用できなくなるが、資格確認書が発行される。マイナ保険証の猶予措置も設けられており、有効期限終了後も薬剤などの情報取得はできないが、最大で4カ月間は資格確認ができる。

したがって、更新に関する問い合わせが医療機関の窓口で増える可能性があり、事務負担増加が懸念される。それなら、少なくとも当面は全員に対してマイナ保険証の有無に関わらず資格確認書を発行すべきだが、発行するコストを考えれば、健康保険証を残してアナログとデジタルの併用を続けた方が患者も安心であろう。

協会は引き続き、健康保険証の発行終了に伴う問題点を明らかにし、今後も行政に要求していく。

マイナ保険証/スマホ搭載時期を検討  「●」などトラブル対策は進展なし

マイナ保険証/スマホ搭載時期を検討 「●」などトラブル対策は進展なし

4月3日に行われた社会保障審議会医療保険部会では、マイナ保険証のスマホ搭載や、次なる規格の顔認証付きカードリーダーについて検討された。しかし、協会などが行ったアンケート調査で明らかになった「が出る」「資格が無効と表示される」など、医療機関の負担増加につながっているトラブル対策への新たな提案はなかった。

◆スマホ搭載早ければ8月に

今年6月頃より、病院3施設、医科診療所4施設、歯科診療所2施設、薬局2施設程度でスマホ搭載の実証実験を行い、早ければ8月より運用を開始する。読み取りに必要な汎用カードリーダーも示された図1)

汎用カードリーダーの導入は医療機関の任意とされ、義務ではない。これまでのオンライン資格確認システムで起きた混乱を考えれば任意の導入は当然だが、導入済み・未導入の医療機関が混在する。厚労省は、初めて医療機関を受診する際はマイナ保険証も持参するよう呼びかける予定としているが、国民に十分周知できるかが重要である。

なお、今後は導入に対する補助が検討される予定だ。

◆次期カードリーダー現状のトラブル解決できず

さらに、20263月末から現在の顔認証付きカードリーダーが保守期限を随時迎えることを受け、次期顔認証付きカードリーダーの規格も検討された。新しい仕様を決めた後にメーカーを公募し、26年夏頃からの販売開始を見込んでいる図2

仕様をみると、汎用カードリーダーがなくてもスマホを読み取れる機能が加わっている。そのため、汎用カードリーダーを購入すべきか、または次期顔認証付きカードリーダーへの買い替えで対応すべきか、導入費用を負担する医療機関としては、判断に迷うところであろう。厚労省は、助成金もセットで提案するなど分かりやすく適切な提案をすべきである。

また、今回の提案では、「が出る」や「新しい資格情報が反映されず、無効と表示される」といった今現在、医療機関を悩ませているトラブルへの対応策は示されていない。新しい機器を検討することも良いが、まずは現行の顔認証付きカードリーダーで起きている問題に向き合うべきではないのか。

協会は引き続き、現場の声を集め、行政に届けていく。

「歯科医療費の総枠拡大を」国会議員へ要請/歯科の諸課題・保険証発行終了後の問題に理解求める

「歯科医療費の総枠拡大を」国会議員へ要請/歯科の諸課題・保険証発行終了後の問題に理解求める

物価高で国民の生活や歯科医療機関の経営は苦しくなっている。患者の窓口負担軽減と歯科医療費の総枠拡大を求め、416日に早坂美都副会長が国会議員へ要請を行い、健康保険証の発行終了後に起きている問題も訴えた。さらに、前厚生労働大臣の武見敬三参議院議員を表敬訪問した。

早坂副会長は、口腔が健康な患者の医療費や介護費は、健康でない患者よりも低いとの調査結果を紹介しつつ、高齢者のう蝕や歯周病の有病率は増加傾向であると説明。歯科は医科よりも経済的な理由で診療を中断する場合が多く、患者負担の軽減と歯科医療費の総枠拡大は国民の健康の観点からも重要であるとした。

また、マイナ保険証の利用率は昨年122日の健康保険証の発行終了後も低調であり、その背景には国民がマイナンバーカードの紛失などに不安を感じているからではないかと指摘。全国保険医団体連合会が実施したアンケートでも、医療機関の業務負担が増えているという結果が出ており、健康保険証の存続や併用を求める声が多いことなどを紹介した。

塩村あやか議員/左

川田龍平議員/左

田村まみ議員/左

牧山ひろえ議員/右

武見敬三議員/右

◆活発な意見交換を展開

要請では活発な意見交換が行われた。協会の提案に対して、国会議員からは「口腔の健康が全身の健康に寄与する話はよく聞いている」「マイナ保険証の利用率は低く、保険証の発行終了はもっと丁寧に進めるべきだった」と概ね賛同する意見があった。一方で、「医療職の人手不足が懸念される中、独居老人が激増する。医療提供体制の維持には、スマートウォッチなど、デジタルによる健康管理ができる仕組みは不可欠」「歯科予算の拡大は理解できるが、財源の捻出も重要。その点で、デジタル化による効率化は推進すべき」「マイナ保険証には医療費控除が簡単になるなどのメリットもある。デメリットが強調されすぎではないか」との指摘もあった。

協会は、国会議員や行政との意見交換を通じ、現場の声を届けつつ、歯科への理解を深めてもらうとともに、国民と歯科医療機関をめぐる諸課題を解決するべく要請を行っていく。引き続き、協会の諸活動へのご協力をいただきたい。

高額療養費制度問題患者を守れ/「生きることを諦めることに」

高額療養費制度問題患者を守れ/「生きることを諦めることに」

「薬をやめたら、生きることを諦めることになる」「一生懸命に闘病し、生きようとしている人たちの望みを切り捨てるようなやり方だ」―。

3月13日、国会議事堂前に集まった患者らが、高額療養費制度の負担限度額引き上げの問題について強く訴えた。

この日、全国保険医団体連合会(保団連)が開いた国会前集会には約150人が集まり、医師・歯科医師のほか、患者や駆け付けた国会議員が声を上げた。

◆「貯金切り崩し、治療と生活」

がんで7年間闘病している水戸部裕子氏は、「治療のために働く時間を削り、しかも十分に働けない。そんな方はたくさんいます」と患者の苦労を明かし、「このままでは若い人たちが希望を失ってしまいます」と、負担限度額の引き上げに反対する意見を述べた。また、別の患者は「薬の副作用のために仕事を辞め、アルバイトをして貯金を切り崩しながら、治療と生活を成り立たせています」と話し、引き上げの白紙撤回を求めた。

また、国会議員からは「見送るということは復活があり得る。絶対に白紙撤回させていかなければならない」「多くの方から高額「療養費の問題についてお声をいただいている。皆さんと力を合わせて白紙撤回を求めていきたい」などの発言があった。

最後には保団連の森元主税副会長(当協会理事)を中心に、国会議事堂に向かって参加者でシュプレヒコールを行った。

◆高額療養費問題協会は首相らに要請書

高額療養費制度の上限額引き上げを巡っては、2025年度政府予算案に盛り込まれ、一時、258月から所得区分に応じて上限額が引き上げられることが決まっていた。しかし、患者団体などからの反発を受水戸部裕子氏け、37日に石破茂首相が引き上げ見送りの方針を発表した。

なお、この問題に関連して、協会は213日付けで石破首相、福岡資麿厚生労働大臣宛に要請書「高額療養費制度の見直しは『一部修正』ではなく撤回を」を提出していた。

東京の〝低い〟保険収益を改善へ/総枠拡大へ 現場の訴えを届けよう

東京の〝低い〟保険収益を改善へ/総枠拡大へ 現場の訴えを届けよう

2026年度診療報酬改定に向けた議論が、これから中央社会保険医療協議会(以下、中医協)で始まり、年末には改定率も決定される見込みだ。東京に目を向ければ、厳しい経営の医療機関が多い。昨年10月に実施した「会員の意識と実態調査」(以下、会員調査)の結果を基に、「ユニット1台当たりの保険収益」を比較したところ、半数近い会員が、厚生労働省が23年5月に実施した「第24回医療経済実態調査」(以下、実調)を下回っていた(下の)。次期改定に向けて、大幅なプラス改定を要望することが急務である。

半数強が実調を下回る―

図は、会員調査の調査項目である1カ月間の総点数の設問を基に作成。なお、回答は「5万点~10万点未満」のように幅を持たせた選択肢で調査しているため、各選択肢の下限値を用いて「年間万円以上」との形式で整理した。また、「5万点未満」(年間600万円未満)の選択肢は「年間300万円以上」とみなし、ユニット数において「6台以上」との回答は除いて計算した。

実調では、最頻値の保険収益は2,522万1,000円で平均ユニット数は3台と報告されているため、全国のユニット1台当たりの保険収益は8407,000円との試算となる。その結果、ユニット1台当たりの保険収益に関しては、半数超の会員が実調を下回る結果となった。

総枠拡大を争点に―

2024年度診療報酬改定後、中医協では医療DX推進体制整備加算の見直しなどが議論された。しかし、歯科医療現場の厳しい現状を反映した議論は行われていない。また、近年の物価高騰で医療機関の経営は以前にも増して厳しくなっており、患者においても生活防衛意識の高まりもある。

協会は、歯科医療費の総枠拡大を目指して2月より「保険でより良い歯科医療を求める請願署名」に取り組んでいる。要求は、①窓口割合の引き下げ、②歯科治療の範囲拡大、③歯科医療に係る予算の引き上げ―の3点だ。これは、医療機関と患者のどちらも納得できる内容である。

署名用紙は、「月刊保団連」2月号に同封して会員に配布したほか、希望者には追加の署名用紙や待合室に置くだけの「歯科署名セット」を無料配布している。スタッフも少ない労力で患者さんに署名を呼びかけることができる。ぜひ、ご協力・ご活用いただき、現場の訴えを行政に届けよう。

◆総枠拡大には何が必要なのか?会員調査から考える現制度の問題点◆

202410月に協会が実施した「会員の意識と実態調査」(以下、会員調査)における「ユニット1台当たりの保険収益」をみると、厚生労働省が実施した第24回医療経済実態調査(以下、実調)の数値より、低い値の集団と高い値の集団の2つに分かれているようにみえる。

そこで、ここでは両者の比較から、歯科の総枠拡大に向けたヒントを考えていきたい。

年齢や開業歴で保険収益に有意差はない―

まず、年代および開業歴と保険収益の関係をまとめたところ表1となった。会員調査では、「20歳代」など回答の選択肢に幅があるため、選択肢の下限値を用いて集計し、開業歴が「4年以下」については2年とみなすなどの処理を行っている。

年齢の平均をみると、ユニット1台当たりの保険収益が高い集団は55.6歳で、低い集団よりも5.2歳若かった。また、開業歴の平均については、保険収益が高い集団は16.5年で、低い集団よりも3.3年短かった。ただ、有意差は、年齢および開業歴のどちらも認められず、若い会員は保険収益が高いというわけではないようだ。

保険収益が高い診療所は人員体制が充実している―

患者数、労働時間および人員体制との関係をまとめてみると、表2になる。

ユニット1台当たりの保険収益が高い集団は患者数が多いが、人員体制においては常勤の歯科衛生士数が最も差が大きかった。保険収益が低い集団の平均人数は0.5人で、雇用していない、またはできていない歯科診療所が相当数あるのに対して、保険収益が高い集団の平均は1.2人と2倍以上多く、概ね一人以上は雇用している状況であった。

診療報酬の引き上げを行い、診療体制の充実が図られるようにすることが重要といえよう。

算定できる点数が多いと保険収益は高まる―

算定する点数の影響をまとめると表3となる。なお、参考として、ユニット1台当たりの保険収益には影響しないが、訪問診療においても同様の比較を行った。その結果、保険収益が高い集団は、低い集団と比べて概ねどの項目も多く点数を算定していた。

ただ、既存の歯科診療所の視点で考えると、導入のハードルには差がある。歯周病安定期治療(SPT)は特に追加の機材は必要なく、小児口腔機能管理料(小機能)は口腔内・口腔外を撮影できるカメラが必要なだけであり、初期投資の費用を考えると比較的導入はしやすい。一方、口腔機能管理料(口機能)は舌圧測定器などの測定機器が、訪問診療は切削器具に加えて訪問診療の時間を確保する必要があり、必ずしもハードルは低くない。

そのため、自院や患者の状況を分析して導入しやすいものから順次、取り入れること、そしてその推進を図るための施策の要求をすることが今後の重要なポイントといえよう。

複雑で実態に合わない不合理是正も重要な視点—

次に、SPTなどの算定が伸びない理由について考えたい。その理由は、厚労省が行った「令和4年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和5年度調査)の報告」をみれば明らかである(下の)。医学的な理由を除けば、算定の頻度が実態に合わないことや算定要件の複雑さが主な理由である。算定要件の複雑さを指摘する回答は、口機能や小機能でも一定数存在する。算定しないのではなく、算定要件が複雑で厳しいため算定しづらいのである。

この算定要件の不合理さを解決することは、今後の要求活動の重要な視点である。協会は、「保険でより良い歯科医療の実現」を求める請願署名を会員に配布し、ご協力をお願いしている。本署名は今の通常国会に提出する予定であり、ぜひご協力をお願いしたい。

追加の署名用紙や署名セットを希望される方は、協会へ電話(03-3205-2999)、またはWEBフォームからお申込みいただきたい。

なお、「会員の意識と実態調査」は現在、最終的なデータ集計を進めている。本記事内の数値、表記は途中集計データを基にして作成したことにご留意いただければ幸いである。

石破総理・福岡厚労大臣に向け/高額療養費制度の見直し撤回を 要請書提出

石破総理・福岡厚労大臣に向け/高額療養費制度の見直し撤回を 要請書提出

協会は、213日付けで石破茂内閣総理大臣、福岡資麿厚生労働大臣宛てに要請書「高額療養費制度の見直しは『一部修正』ではなく撤回を」を提出した。

政府は昨年1225日、患者が支払う医療費の自己負担限度額(高額療養費制度)を見直し、すべての所得区分において月額の負担上限額を引き上げることを閣議決定した。これを受けて、20258月から20278月にかけて、自己負担上限額を段階的に引き上げる見直しが25年度政府予算案に盛り込まれ、124日に召集された通常国会で審議され、3月4日に衆議院で可決している。

その後、患者団体などの当事者の切実な訴えにより、長期の治療を受ける患者向けの「多数回該当」に限り、負担増を取りやめるという修正が行われることとなった。しかし、多数回該当の上限額だけを修正した場合、負担が軽くなるのはごく一部であり、患者を「線引き」することにもなる。そのため、高額療養費制度の見直しは、修正ではなく撤回すべきである。協会は、引き続き高額療養費制度の自己負担上限額を引き上げる見直しの全面撤回を引き続き求めていく。

◆高額療養費制度/引き上げ対象は全年代の全所得階層

現役世代の保険料負担軽減などを理由に、第一段階として20258月に高額療養費の自己負担限度額区分5階層の年収区分それぞれに対して定率の引上げを行い、第二段階として268月に13階層に細分化し上限額を引き上げ、さらに278月に引き上げるとしている。

今回の自己負担上限額引き上げはすべての年代、所得階層が対象とされており、文字通り高額療養費制度を利用する1,250万人全員にとって打撃となる。引き上げ額も、70歳未満の現役世代の年収650万円から770万円の階層では、最終的に1.7倍(278月から)、金額として月額約5万円の大幅な負担増である。

全国保険医団体連合会(保団連)が行ったアンケート結果に基づく要請や患者団体など当事者からの「治療中断を余儀なくされる」「必要な治療が受けられなくなる可能性がある」という切実な声により、長期の治療を受ける患者向けの「多数回該当」に限り、負担増を取りやめるという修正が行われることとなった。

そもそも重篤な疾患で治療を継続している患者にさらなる負担を強いて、財源を捻出するという手法そのものが社会保障の概念とは相容れないものであり、公的医療保険の仕組みを根幹から突き崩すものである。

さらなる負担増は行わず必要な医療をすべての国民が受けられるよう、高額療養費制度の自己負担上限額の引き上げの即時撤回を望む。

都内歯科診療所 厳しい経営明らかに/会員医業収益の最頻値が医療経済実態調査を下回る

都内歯科診療所 厳しい経営明らかに/会員医業収益の最頻値が医療経済実態調査を下回る

◆次世代のために求められる診療報酬引き上げ

協会が昨年10月に実施した「会員の意識と実態調査」(以下、会員調査)の結果、会員の多くを占める個人立の歯科診療所における医業収益の最頻値は、保険・自費ともに、厚生労働省が20235月に実施した「第24回医療経済実態調査」(以下、実調)の結果を下回っており、東京の歯科診療所の経営は厳しい状況であることが明らかになった。また、将来を担う若手歯科医師のために必要なことについては、約80%が「診療報酬の引き上げ」であると回答している。

今後、次期診療報酬改定の議論が行われ、年末には改定率が決定される見通しだが、技術料を中心とした大幅な診療報酬の引き上げが求められる。

◆東京は保険も自費も医業収益が低い

会員調査には、1,658件(回答率27.6%)の回答が寄せられたが、うち79.8%は個人立の歯科診療所であった。

個人立の歯科診療所における保険診療の年間売上は、図1の通りで、その最頻値は1,800万円~2,400万円(15.1%)であった。実調によると、22年度の保険診療収益の最頻値は約2,522万円と報告されている。調査時期が異なるため単純に比較できないが、24年度の診療報酬改定がプラス改定であったにも関わらず、実調よりも会員調査の最頻値の方が低かった。サンプルの違いはあるにしても、東京の歯科診療所の保険診療収益は全国的に見て低い状況にあると言えそうだ。

同様に、自費診療の年間売上の分布は図2の通りである。最頻値は100万円未満(22.7%)だが、実調では22年度の「その他診療収益」(自費診療収益など)の最頻値は約410万円となっている。会員調査の最頻値の方が低い傾向は変わらず、最頻値だけで見れば東京の自費診療収益も高いとは言えない。

このように、協会の会員調査は、明らかに東京の歯科診療所は経営が厳しいという現状を物語っている。

◆診療報酬引き上げ次世代のためにも必要

協会の会員調査では、若い世代の歯科医師が魅力を感じる職にするために必要なことを聞いているが、個人・法人立などを含む回答結果は図3となった。

最も多かったのは、「診療報酬の引き上げ」(79.6%)で、「経済的な負担軽減」が続いた。さらに、「診療報酬改善で重視すべき内容」についての問いでは、最も多い回答は「保険診療だけで経営が成り立つ点数設定」(65.7%)であり、診療報酬の改善を求める声が一番大きい。

◆総枠拡大の声を国会・行政へ/歯科署名にご協力を

現状を解決するには、診療報酬の大幅な引き上げが必要である。さらに、不合理な算定要件の是正、治療が必要な患者が自己負担を気にせずに歯科診療所に通院できる負担軽減策の実現も必要である。それらの実現には、現場の声を国会や行政に届ける必要がある。協会は、2月から「保険でより良い歯科医療の実現を」求める請願署名を「月刊保団連」2月号に同封して会員にお届けしている。ぜひ、協力をいただきたい。

また、署名用紙の追加、受付用の署名用紙回収箱を無料配布している。希望者は協会運動本部に電話(03-3205-2999)にてお申し込みいただきたい。

解説 :保険証の発行終了で起きる2025年問題とは/保険証の有効期限終了と更新手続きの留意点

解 説 : 保険証の発行終了で起きる2025年問題とは/保険証の有効期限終了と更新手続きの留意点

昨年122日、健康保険証の新規発行が終了となった。マイナ保険証の利用率が11月時点で18.52%しかない中での終了である。

これにより、現行の健康保険証の有効期限は最長25121 日までとなり、マイナ保険証がない患者には、今後「資格確認書」が発行されることとなる。マイナ保険証を持っている場合、基本的に「資格確認書」は発行されないため、「資格確認書」が必要であればマイナ保険証の登録解除が必要になる。

また、マイナンバーカードの電子証明書は5年ごとに更新が必要であり、25年度は更新時期を迎える患者が24年度の約2.6倍に増える。今回は、マイナ保険証の登録者が遭遇する25年の注意点を解説する。

最長1年は保険証使える不安なら解除リーフを現在の健康保険証は、24122日以降も有効期限が切れるまでは利用できる(図1)。よって、マイナ保険証に切り替えたくない場合は、保険者に対して登録解除の申請を行う。

協会は、保険者ごとの健康保険証の有効期限およびマイナ保険証の登録解除方法を解説した患者向けの「マイナ保険証解除リーフレット」を、会員に無料配布している。マイナ保険証に不安がある患者さんには、ぜひ窓口で配布していただきたい(ご注文は電話03―3205―2999まで)。

◆電子証明書の更新案内到着時の注意点

マイナンバーカードの電子証明書には有効期限があり、5年ごと(5回目の誕生日まで)に更新手続きが必要になる。25年度は更新を迎える人が2768万人おり、24年度の176万人の約2.6倍に増えるため、この問題は24年度以上に深刻化する。

更新手続きの流れは、有効期限の23カ月前をめどに対象者に案内が送付され、それに沿って区市町村窓口で手続きする仕組みとなっている。仮に更新手続きを忘れた場合、マイナ保険証は使用できなくなり代わりに資格確認書が発行される。さらに、猶予措置も設けられており、電子証明書の有効期限が切れた後でも、最大で4カ月間は薬剤などの情報取得はできないが、マイナ保険証での資格確認はできる(図2)。

全国民に資格確認書を自動発行すべきこのように、マイナ保険証の問題点の一つに、健康保険証と異なり自ら手続きが必要(申告制)な点があげられる。マイナ保険証で資格確認ができないトラブルの中には、更新手続き忘れが原因とみられるものもある。申告制であることは資格確認書も同様で、現状は「当面の間」申請なしにマイナ保険証がない患者に対して、資格確認書が自動発行されることになっている。申告制が前提であるマイナ保険証を原則とすることが、現場に混乱を生む一因といえる。

協会は、国会議員や行政などへの要請において、資格確認方法の乱立による混乱を軽減する視点も含め、マイナ保険証の有無にかかわらず、全国民に自動的に資格確認書(カード型など)を発行することを求めている。

保険証の存続を求める署名1月末までに協会へ送付を25年には健康保険証の発行終了によるさまざまな問題が発生することが懸念されている。問題の解決には、まずは健康保険証を存続したうえで、生じたさまざまな問題点を一つひとつ解決し、国民の不安を解消することが肝要である。

協会は今年の通常国会で「現行の健康保険証を残してください」請願署名を提出する。お手元にある署名は、ぜひとも1月31日(金)までに協会へ送付していただきたい。

健康保険証の発行終了受け議員〝緊急要請〞/有効期限延長・全国民への資格確認書発行求める

健康保険証の発行終了受け議員〝緊急要請〞/有効期限延長・全国民への資格確認書発行求める

2024年122日の健康保険証の発行終了を受け、協会の坪田有史会長、早坂美都副会長は1218日、国会議員へ緊急要請を行った。

12月2日以降、健康保険証が使用できないと誤解する患者がいるなど、現場で混乱が生じている。協会は、「これからの窓口対応きほんのマニュアル」を本紙12月号に折り込み会員に配布したほか協会ホームページにも一般公開し、現場が混乱しないように対応してきた。

会員からの相談では、健康保険証以外に複数の資格確認方法が乱立することへの戸惑いが多い。また、マイナ保険証を持つ患者には紙の「資格情報のお知らせ」(一部、マイナ保険証を持たない患者にも送られる場合もあり)が、マイナ保険証が無い患者にはカード型などの「資格確認書」が発行される仕組みとなっており、なぜ二つに分けるのかという点も指摘されている。

そこで本要請においては、トラブルの問題だけではなく、混乱を解消する方法として、①現行の健康保険証を存続させること。少なくとも、健康保険証の有効期限(最長25121日)を延期させること、②患者および窓口業務の混乱解消のため、マイナ保険証がある患者に紙の「資格情報のお知らせ」を、マイナ保険証がない患者に「資格確認書」(カード型等)を送付する取り扱いを改め、マイナ保険証の有無にかかわらず「資格確認書」を送付すること、の2点を関係各国会議員に要請した。

◆活発な意見交換を行う

(写真右)武見敬三参議院議員(自民・東京)に要望書を手渡
す(左から)早坂美都副会長、坪田有史会長

懇談では、積極的な意見交換が行われた。協会の提案に対して、「『資格情報のお知らせ』と『資格確認書』を分ける必要性は乏しく、それならば今までのように健康保険証を残したまま、使いたい人がマイナ保険証を使える仕組みの方がよい」「健康保険証の発行停止を機に閉院した医療機関もあると聞いている。医療提供体制への悪影響が心配だ」と、概ね賛同する意見があった。

一方で、「過渡期である今、混乱が起きるのは致し方ない部分はある。将来、日本全体で医療従事者を含む働き手不足が懸念されており、医療DXの推進自体は必要ではないか」「期日を決めないと物事は進まない。その判断は難しいが、国民の不安払拭には医療提供側に問題が起きないことが必須である。顔認証付きカードリーダーの導入に時間がかかった要因を踏まえた検討が必要ではないか」という指摘もあった。

協会は、国会議員や行政との意見交換を通じて、現場の声を届けつつ、国民と歯科医療機関に混乱が生じないよう、必要な対策実施を求めていく。引き続き、協会の諸活動へのご理解とご協力をいただきたい。

なお、今回懇談が実現した参議院議員は以下の5氏(順不同。敬称略)

武見敬三参議院議員(自民・東京)、田村まみ参議院議員(国民・比例)、川田龍平参議院議員(立憲・比例)、)吉良よし子参議院議員(共産・東京) 、小池晃参議院議員(共産・比例)。

保存版【これからの窓口対応きほんのマニュアル】 新人スタッフでも安心! 保険証発行終了。どう対応すればいい?

保存版【これからの窓口対応きほんのマニュアル】 新人スタッフでも安心! 保険証発行終了。どう対応すればいい?

2024年12月2日、健康保険証の新規発行が終了しました。従来の健康保険証、資格確認書、マイナ保険証など…医療機関での「資格確認の方法」が多様化し、今後、窓口での混乱も懸念されます。

東京歯科保険医協会では、医療機関向けに「これからの窓口対応 きほんのマニュアル」を作成しました。協会に寄せられる質問や疑問についてイラストを用いてわかりやすく解説しています。プリントして診療所に貼ったり、窓口に置いたりして、ご活用ください。

また、資格確認の方法を簡易的に説明した「<ポケット版>これからの窓口対応 きほんのマニュアル」もあります。あわせてご覧ください。

マイナ保険証/ひも付け解除申請始まる

マイナ保険証/ひも付け解除申請始まる

10月28日からマイナ保険証の利用登録解除、つまり「ひも付け」の解除ができることとなった。

これまでマイナ保険証は、一度利用登録するとひも付け解除ができない仕組みであった。これに対して、登録が任意であるにもかかわらず解除ができないのは問題があるとの批判を受け、厚生労働省が解除できるように、システム改修を行ったもの。

解除申請は、各保険者で行う。国民健康保険の場合は区市町村、後期高齢者医療制度の場合は東京都後期高齢者医療広域連合、健康保険組合は各組合に連絡する。協会けんぽはマイナンバー専用ダイヤル(0570―015―369)に電話で問い合わせをする。

手続きは、窓口、インターネット、郵送で行えるが、保険者ごとに対応が異なるので確認が必要だ。また、申請から手続き完了までは「2カ月以上の期間を要する場合がある」(協会けんぽ)としている。解除申請には今のところ期限はなく、122日(月)以降も受け付けることとなっている。解除にあたり、申請者が有効な健康保険証、または資格確認書を持っていない場合は、資格確認書の交付を新たに受けることができる。

なお、登録解除を行うことで申請者はなんら不利益を被ることはない。ひも付けを行った時に付与されたマイナポイントも返還する必要はない。窓口で患者から相談を受けた時には、以上を参考に説明をしていただきたい。

マイナ保険証リーフレットをご覧になりたい方はここをクリック

なお、保団連は患者さん向けに上記リーフレット「マイナ保険証 つくらないとダ?メ」を作成した。ご入用の方は協会運動本部にご一報ください(☎ 03-3205-2999)。

マイナ保険証トラブル/半数の医療機関で保険証廃止後受付業務に懸念

マイナ保険証トラブル/半数の医療機関で保険証廃止後受付業務に懸念

協会は91724日に、5月以降に起きたマイナ保険証トラブルについての調査(第4弾)を会員に実施し、208件(回答率7.1%)の医療機関が回答した。オンライン資格確認でのトラブルや不具合の有無については、「あった」が140件(67.3%)で、第3弾調査と比較すると10%強増加している。

トラブルの具体的な内容( 図1) は、「名前の(黒丸)表示」が最も多く67.1%、次いで「カードリーダーの認証エラーなど」(55.7%)、「資格情報が無効である」(48.6%)と続いた。これらはマイナ保険証の利用率が上がると、より一層トラブルが増加することが懸念される。なお、トラブルがあった場合の対応としては、8割近い医療機関が「健康保険証による資格確認で対応した」と回答しており、依然として健康保険証が医療機関において、重要な役割を果たしているといえる。

また、受付業務(図2)は、「今も混乱しており、健康保険証廃止後は受付業務に忙殺されると思う」が51.0%、「診察の待ち時間が長くなると思う」が48.6%となった。

12月2日以降は現行の「健康保険証」「マイナ保険証」に加えて、「資格確認書」「資格情報のお知らせ」など、さまざまな方法での資格確認が医療機関の受付で求められ、資格確認ができない場合は患者に「被保険者資格申立書」を記載してもらう対応も必要となる。受付スタッフの人数が少ない歯科医療機関は業務負担が増え、患者を待たせることにもなる。「保険情報の反映のタイムラグに苦労している」という意見も散見され、既に「受付対応でマイナ保険証に関する説明で患者さんとトラブルになった」「板挟みになった」という相談が寄せられている。

本年10月現在、都内の歯科医療機関でのマイナ保険証の利用率は17.16%と全国で44番目の低水準。本調査に寄せられたトラブルは、まだ氷山の一角の可能性もある。

歯科技工所アンケートで窮状明らかに/歯科技工士 5年後に半数が「辞めている」「わからない」

歯科技工所アンケートで窮状明らかに/歯科技工士 5年後に半数が「辞めている」「わからない」

全国で歯科技工士養成学校の募集停止が相次いでおり、歯科技工を担う人材不足が懸念されている。将来、国内での歯科技工物の製作が危ぶまれる状況にあり、各マスメディアからも大きく注目されている。協会は独自に、2020年、23年と都内の歯科技工所にアンケート調査を実施し、技工士・技工所の就労環境や診療報酬の改善を求める要請やメディアへの発信資料として活用してきた。

このほど、取り組みをさらに強化するため、保団連(全国保険医団体連合会)が中心となり、全国で調査を実施。東京都内では、技工所1千531施設にアンケート用紙を送付し、138施設の回答が寄せられた(回収率9.0%)。

▼結果はこちら
2024年 歯科技工所アンケート結果(東京都)


まず、開設者の年齢は50代、開業年数は30年~39年が最多。開業形態は63.8%が個人開業で、うち1人技工士の技工所が60.9%、事務員も含め従業員数3名以下の事業所が79.7%と小規模な事業所が中心であった。30.4%の開設者が週の労働時間が71時間以上、65.2%が週休1日以下、38.4%が可処分所得300万円以内と回答しており、厳しい就労状況が明らかになった。
次に、24年度診療報酬改定で多くの補綴物の点数が引き上げられたが、技工物を値上げした割合は20%前後であり、多くの技工所が引き上げ分を価格に反映できていない現状がうかがえた。保険の補綴物の値上げ希望金額については、現行の約2倍を希望する回答が目立った。また、33.3%の技工所が「歯科医院からの再製作依頼が技工業務で最も負担と感じている」と回答した。
後継者については、84.8%が「いない」とし、自分自身の5年後については、21.7%が「歯科技工士を辞めている」、26.8%が「わからない」と回答。今後の技工士不足が非常に危ぶまれる結果となった。

技工士不足の解消のために改善が必要だと思うことについて、89.9%が「技工料金の全体的な値上げ」を挙げており、歯科界が一丸となって診療報酬の大幅引き上げを要求することの重要性が示唆された(図参照)。今回の調査結果は協会ホームページに掲載しているので、ぜひ、ご覧いただきたい。全国版の調査結果は、保団連から来年2月頃に公表される予定である。

坪田会長ら 当選議員を表敬訪問 歯科医療への理解求める/健康保険証 発行終了「できる状況にない」

坪田会長ら 当選議員を表敬訪問 歯科医療への理解求める/健康保険証 発行終了「できる状況にない」

11月13日に坪田有史会長、早坂美都副会長が、10月27日に投開票が行われた衆議院議員選挙で当選した東京選出の議員10名と歯科医師の議員2名を表敬訪問した。面会に応じた各議員は「ご期待にそえるようまい進したい」と抱負を語った(左の写真は、今回当選を果たした国民民主党の円より子衆議院議員への要請時のひとコマ)。

 

◆健康保険証の発行終了問題国会での議論を求める

坪田会長は、まず祝辞を贈るとともに、歯科の現状を説明。保団連(全国保険医団体連合会)の調査において、70.1%がオンライン資格確認のトラブルがあったと回答した結果を紹介した。協会には、「『資格情報のお知らせ』『目視確認モード』とは何か」などの相談が多く寄せられていることや、マイナ保険証が使えない、または顔認証や暗証番号認証ができないトラブルへの対応方法が周知されていない問題も指摘。そのうえで、「122日に健康保険証の発行を終了できる状況ではない。立憲民主党は発行終了を延期する法案を衆議院に提出したが、国会で十分議論されることを期待する」と訴えた。

◆歯科問題で交流深める

歯科医師の佐原若子議員(比例・東北)、長谷川嘉一議員(比例・北関東)とは、歯科医療の問題で意見交換。直前まで院長として診療していた佐原議員は「口腔は全身の健康と関連があるが、歯科の点数は低い。医療機器の導入や文書を作成しないと算定できない縛りも多い」と実体験を交え、歯科の低診療報酬の問題などを指摘した。

長谷川議員は「以前は海外技工物の問題が取り沙汰された。歯科技工の現状が気になる」と語った。坪田会長は、協会が歯科技工所アンケートを実施し、保団連の呼びかけで全国調査も行われたことを踏まえ、「厚生労働省は補綴物の点数を引き上げるなどしたが、歯科技工所の状況は依然として厳しい」と伝え、議員も認識を深めた。

◆健康保険証の存続署名1月末までにご返送を

11月28日から1221日まで臨時国会があり、来年1月からは通常国会が開催される。「現行の健康保険証を残してください」請願署名は各国会で提出予定であり、来年131日までに協会へ送付いただきたい。

また、歯科医療の充実を求める署名も今後実施を予定している。協会は引き続き現場の声を国会議員や行政に伝えていく。

衆院選に向け、2名に推薦状をお渡ししました

衆院選に向け、2名に推薦状をお渡ししました

若宮健嗣衆議院議員(東京5区)、宮本徹衆議院議員(東京20区)へ、1027()の衆議院議員総選挙に係る推薦状をお渡ししました。

若宮健嗣 議員(東京5区)

宮本徹 議員(東京20区)

 

歯科医療分野には様々な課題がありますが、その改善のためには、業界だけに留まることなく様々な方々に応援していただけるよう、幅広く活動を広げることが必要です。

東京歯科保険医協会として、日頃お世話になっている若宮議員および宮本議員との連携を深めることによって、より良い歯科医療の未来づくりを進めていきます。

衆議院選当日まであと数日ですが、1人でも多く、歯科医療分野にご理解を頂ける先生方が当選されることを願っています。

パブコメでも保険証発行終了に反対/マイナ保険証利用率は12.43%

パブコメでも保険証発行終了に反対/マイナ保険証利用率は12.43%

パブコメでも保険証発行終了に反対/マイナ保険証利用率は12.43%

厚生労働省は、8月のマイナ保険証の利用率が12.43%であったと発表した。つまり、9割弱の人がマイナ保険証を使っていないことになる。健康保険証の新規発行が終了する122日が迫る中、利用率は低迷したままである。

8月30日には、去る524日〜623日に同省が行った健康保険証の新規発行に関するパブリックコメント募集の集計結果が発表された。合計53,028件の意見が出され、賛否の内訳は明らかになっていないが、反対との意見が大半であったようである。

◆どうなる新規発行終了後現場で広がる疑問や不安

協会に寄せられる相談でも、マイナ保険証に関連するものが増えている。内容は「マイナ保険証を持参する患者の場合、受診の都度提示を求める必要があるのか」といった疑問や「訪問診療の患者の資格確認には健康保険証を使っているが、健康保険証が使えなくなったら対応できるのか」という不安など、さまざまだ。

なお、健康保険証が廃止になった場合の変更点については、機関紙、F-nex、ホームページ、デンタルブックメールニュースで、改めて取り上げさせていただく。

健康保険証の廃止に伴う変更点は多岐にわたる。特に、マイナ保険証で資格確認ができないトラブルが生じた場合や訪問診療時には、スマホなどでマイナポータルの資格確認画面を提示してもらう、または高齢者などの要配慮者の場合は申告して資格確認書を発行してもらうなど、患者の理解と協力が必要な場面もある。であれば、今の健康保険証を残す形の方が良いのではないだろうか。

◆やります!!  健康保険証の存続署名

協会は、改めて健康保険証の存続を求める署名に取り組む。月刊「保団連」10月号に下記署名用紙ほか書式一式を同封してお送りしているので、ぜひ、ご協力をいただきたい。