賃上げ支援事業(15万円)の注意点―「満額ありき」の賃上げは要注意‼―

 


「15万円もらえるから、ベースアップ評価料を届出した」

「従業員に15万円を山分けして、特別ボーナスで支払おう」

このように考えている先生は、少し立ち止まって確認が必要です。
 
15万円の満額支給を前提に賃上げを行うと、6月以降もその水準を維持・向上する必要があるため、人件費が増加し、医院経営の負担が大きくなる可能性があります。
 
厚生労働省は、227日に本事業のリーフレットおよびQ&Aを公表しました。
主なポイントと注意点をまとめました。

1.ベースアップの実施期間
202511月末時点の賃金水準と比較し、202512月~20265月までの6か月間ベースアップを実施し、20266月以降もベースアップ後の額の維持・向上が必要とされています(※例外あり申請パターン(3))。
 
2.12月からベースアップできなかった場合
ほとんどの医療機関がこちらに当てはまりますが202512月からベースアップが実施できなかった場合、202512月~20263月の4か月分を一時金・特別手当として2026331日までにスタッフに支給する必要があります。
 
3.支援金の充当範囲
支援金は、202512月~20265月の賃金改善分に充当します。
対象となるのは、以下の費用です。
・基本給の引上げ
・毎月支払う手当の引上げ
・ベースアップに連動して増える賞与
・時間外手当の増加分
・法定福利費(事業主負担分)の増加分
 
4.特に注意が必要な点
支援金の給付を前提に賃上げを行うと、20266月以降もベースアップを維持・向上しなければなりません。6月以降支援金の有無は不明です。支援金がないと、人件費の増加が継続するため、特に小規模医療機関は医院経営を圧迫する可能性があります。
そのため、ベースアップ評価料の算定見込み、医院の人件費の状況を踏まえながら、12月~5月のベースアップ額を慎重に検討することが重要です。
 
【申請パターン】

(1)基本パターン


・賃金基準は25年11月分の給与
・ベースアップの割合(%)はいくらでもよい
・毎年、別の時期にベースアップをしていても、改めて12月からベースアップを行うこと
・支援金を充ててよいのは、25年12月~26年5月の黄色部分のみ。
・15万円より黄色部分が少ない場合は、黄色部分の金額を申請する。


(2)12月にベースアップを行えなかった場合


・4月から必ずベースアップを行う。
2512月~26年3月分を一時金として支給。支給期限は3月31日まで。
・支援金を充ててよいのは、2512月~26年5月の一時金部分+黄色部分のみ。
15万円より一時金+黄色部分が少ない場合は、一時金+黄色部分の合計額を申請する。
・6月以降は診療報酬改定による新たなベースアップ評価料を財源に4月の賃金水準を維持します。1か月の基準は3月以前と4月以降で同一でなくともよいですが、極端な配分はできません。

(3)25年12月の賃金水準が、3月31日時点の水準と比較して 2.0%を上回ってベースアップされている場合

・2%を上回るベースアップ分の25年12月~26年5月が支給対象となる。なお、2%を上回っている部分にベースアップ評価料による賃金改善分が含まれている場合は、当該部分を除いた部分が対象となる。
・支援金として充ててよいのは、25年12月~26年5月の黄色部分のみ。
・15万円より黄色部分が少ない場合は、黄色部分の金額を申請する。
・25年12月より更なるベースアップを行った場合は対象となる。

(4)26年6月改定で新たに届け出る場合(現在、スタッフが受付専従や勤務医のみ)
・上記①②の方法どちらかでの実施が必要。なお、現時点では②となる。

【申請例】


150,000円を申請するためには、150,000円÷6か月=25,000以上(医院合計)のベースアップが必須
ただし、ベア評価料の算定の金額(当該医院の場合は3/1~算定分)は減算。
A氏300,000円(2025年11月時点)➡320,000円(2025年12月~)(6.6%UP)
B氏200,000円(2025年11月時点)➡207,000円(2025年12月~)(3.5%UP)
 ※12月からスタッフにベースアップの支払ができていない場合は、25年12月~26年3月分を一時金((20,000円+7,000円)×4カ月=108,000円)として26年3月31日までに支給。4月からは給与で支払う。

[申請対象金額]
(20,000円+7,000円)×6か月分(2025年12月~2026年5月)=162,000円
   -ベア評価料-
初診10点×20回=2,000円 再診2点×100回=2,000円 合計4,000円
4,000円×3か月分(3~5月)=12,000円

[申請額]
162,000円-12,000円=150,000円
 ※2026年6月以降も、給与の維持もしくは改善をしなければならない。
➡6月以降のベースアップ分は、ベースアップ評価料算定分を減算するとすべて医院の持ち出しとなる。
1カ月のベースアップ 27,000円
1カ月のベア評価料算定 
初診31点×20回=6,200円 再診6点×100回=6,000円 合計12,200円
医院の持ち出し:27,000円―12,200円=14,800円/月

■お願い
15万円ありきで賃上げ額を決めるのではなく、初診・再診と連動するベースアップ評価料の算定見込みを踏まえ、医院がいくら持ち出しとなるか、医院経営への影響を考慮しベースアップ額を判断してください。