経営・税務相談Q&A No.430「従業員の夏季休暇と、有給の計画的付与」
Q1 当院が設定した夏季休暇に、従業員の年次有給休暇をあててもいいのか。
A1 医院の指定する夏季休診を、従業員の年次有給休暇として対応することは一般的には違法となります。夏季休暇の設定は、福利厚生の一環として医療機関の判断で設定をするものです。一方、年次有給休暇は労働基準法により、取得は原則として従業員が自由にできるものとされています。このようなことから、医院側が定める夏季休診を従業員の年次有給休暇とすることはできません。ただし、計画的付与を活用すれば、夏季休暇に年次有給休暇をあてることが可能です。
Q2 年次有給休暇の計画的付与とは何か。
A2 個々の従業員の年次有給休暇の付与日数のうち5日を超える分については、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度のことをいいます。従業員が病気その他の個人的事由の際に取得ができるよう、5日間は個人が自由に取得できる日数として必ず残さなければなりません。また、導入には、労使協定を結ぶ必要があります。
年次有給休暇の計画的付与の方式には、①すべての従業員が同一の日に休暇を取る一斉付与方式、②従業員が交替で休暇を取る交替制付与方式、③年休付与計画表による個人が計画的に取得する個人別付与方式の3つがあります。お盆や年末年始に医院を休診するのであれば、一斉付与方式を活用します。
方式 | 内容・特徴 |
① 一斉付与方式 | すべての従業員に対し同一の日に休暇を付与。定休日を増やす場合などに有効。 |
② 交替制付与方式 | グループに分けるなどして交代で休暇を付与。定休日を増やすことが難しい場合に有効。 |
③ 個人別付与方式 | 個人別に付与。年休付与計画表により個人毎に年次有給休暇を指定。 |
Q3 労使協定はどのように取り交わすのか。
A3 計画的付与を実施する際には、あらかじめ全従業員を対象として労使協定を結びます。労使協定の内容は、計画年休の対象者、対象となる有給休暇の日数、計画年休付与の具体的な方式、年次有給休暇の付与日数が少ない人の対応方法、計画的付与日を変更する場合の対応方法、となっています。
労使協定は従業員の過半数の代表者と締結します。過半数の代表者は、雇用者側が指名できず、従業員の中で挙手や投票、話し合いなどによって選ぶ必要があります。一旦労使協定を締結した後には、内容の変更は容易にはできません。また、これまで以上に従業員の年次有給休暇の管理が重要になりますのでご注意ください。これらの労使協定のモデル例は、保団連発行の書籍「医院経営と雇用管理2022」の184~185ページに掲載しています。ご参照ください。なお、就業規則がある歯科医院では、就業規則にも記載が必要となります。
年次有給休暇の計画的付与は医院にとって、従業員の有給休暇の取得を積極的に行えるほか、有休取得日を管理できることでシフトが組みやすくなるというメリットもあります。協会では書籍「医院経営と雇用管理2022」を会員の先生に1冊無料で送付しております。ご希望の方は申込フォームからお申込みください。