映画紹介⑭「サイド・エフェクト SideEffects」

映画紹介⑭「サイド・エフェクト SideEffects」

【2013年米国/スチィーブン・ソダーバーグ監督】

「眠ったまま殺す?」
「彼女は殺人犯?、それとも薬の被害者なの?」
 「本人は覚えてないのです」
「夢遊病はうつ薬の副作用です」
 この映画は「うつ病」の病態や処方される薬、副作用(Side  Effects)の夢遊病など、現代病「鬱」を映画を通して分かり易く教えてくれる作品です。
 映画は町全体を舐め回すカメラの空撮、ここが大事なところですが、カメラは大きな高いビルに向かって、ビルの1室、殺人現場に滑り込みます。
 オープニングは、ヒッチコックの映画「サイコ」の模倣ですが、この空撮はサイコ・サスペンス映画には多く取り入れられています。
 物語は事件の3ヶ月前。28歳の妻が心に毒の霧が立ち込めると表現する「うつ病」で病んでいます。
「社会復帰のパンフをもらったよ」
 出所した夫との生活が始まっても、駐車場内での自損事故、電車への飛び込み自殺未遂など「うつ病」による自傷や自殺行為が治まらず、夫の声かけにも、当人は眠りに落ちたままで歩き回る夢遊病状態という奇異な行動が頻発していました。
「抗うつ剤アブリクサでうつ状態改善し、新薬デラトレックで夢遊病を改善しましょう」
 ドクターのこの処方で妻の「うつ病」は快方に向かってきました。
「やっと眠れるようになって、夫婦の絆が戻った」と、ドクターは夫婦に感謝されます。
 しかし、引越しやパーティなどが重なり、「うつ」や夢遊病が再発するようになりました。
「やめろ!やめろ!やめろ!」
 ある夜、夫の制止も聞かず、夫の体を包丁でブス、ブスと突き刺して殺してしまいました。
「私は寝てて」
「起きたら彼が倒れてて」
「動かなかった」
「それしか覚えていません」
 妻はこのように証言し、TVに声名を発表しました。
「回復への希望を胸に、医師を訪れました」
「それが悲劇への道だとは、想像もしていませんでした」
 抗うつ剤販売会社は安全性や副作用の危険性を軽視していたのではと、事件の責任を問われます。
「彼女が薬の被害者だとすれば」
「あなたも訴えられることになる」
 主治医としての責任を負うたドクターは、女に処方した抗うつ剤について調査をしてみると、殺人事件の背後にある医師と製薬会社、投資会社の謀略にたどり着きます。
 頭の中が覗けるわけでないので、本当に精神を病んでいるのかどうかは分からない。
 患者に騙されるドクターの「やられたらやり返す」倍返しの痛快なラストは驚きです。
 ジュード・ロウ、「ドラゴン・タトゥーの女」の怪しいキュートなルーニー・マーラの魅力はこの映画を華やかにしてくれます。巨匠スチィーブン・ソダーバーグ監督の引退作品といわれています。
  (協会理事/竹田正史)