きき酒いい酒いい酒肴No.24『春色のロゼ~梅や桃や桜のお花見をするように…』(機関紙2017年3月1日号/No.564号)

きき酒いい酒いい酒肴No.24『春色のロゼ~梅や桃や桜のお花見をするように…』(機関紙2017年3月1日号/No.564号)

日差しが少しずつ柔らかく暖かになってくると、春めいてきます。「春告草(はるつげぐさ)」と呼ばれる梅から桃に花の主役がかわってきます。


✿バラ色の…
戸外に目がむかうようになってくるこの季節。春色のロゼワインを楽しむのに良いころです。
ロゼワインとはピンク色のワインで、「ロゼ」というのはフランス語で「バラ色の」という意味です。白ワインのさっぱりした味と、赤ワインの渋みが合わさったような味で、飲みやすく、いろいろな料理に合います。春の花の色合いが豊富であるように、ロゼワインも白に近い淡いピンクから紅色に近いイチゴのような濃いピンクまで、多くの美しい色合いがあります。


✿赤と白のブレンドではない
ロゼワインは赤ワインと白ワインのブレンドではありません。赤ワインと同じような種類のブドウから作られます。しかし、赤ワインほど色素を出さないため、ピンク色になります。大きくわけて、3つの方法で作ります。

✿醸造法は3つ
1つ目はマセレーション法といって、途中まで赤ワインと同じように作る方法。まず、ブドウをつぶして、果実・皮・種をすべて発酵タンクに入れます。この後、赤ワインの場合は発酵を進めるのですが、ロゼを作る際には、発酵が開始し、果汁に色がついた段階で、果実・皮・種をすべてろ過して、そのあとに低温で発酵を進めます。この方法が最も一般的な方法といわれています。
2つ目は直接圧搾法といって、白ワインのように作る方法です。赤ワインで使われるブドウの果汁を絞り、あとは白ワインと同じように低温で発酵させます。
3つ目は混醸法といって、黒ブドウ(赤ワインをつくるブドウ)と白ブドウを混ぜて、白ワインと同じように作ります。
EUの規定によって、赤ワインと白ワインを混ぜてロゼとすることは、一般に禁じられていますが、その中で例外があります。フランスのシャンパーニュ地方に限っては、赤ワインと白ワインを混ぜる方法が許可されており、ロゼのシャンパンが作られています。少数ながら非発泡のロゼワインも生産されています。


✿ほどよいタンニンときれのいい酸味
赤ワインと白ワインのいいところを受け継いでいるロゼワインは、口中でほどよいタンニンと、きれのいい酸味が広がるので、食材の旨みを引き立ててくれます。イチゴやラズベリーなどの赤ベリー系の香り、ブラックベリーやプラムなど黒ベリー系の香りにしっかりとした酸味もあるので、肉料理にも合いますし、醤油ベースの和食にも意外なことに海老チリなどの中華にも合います。春の主役フキノトウなどの山菜のえぐみや香りにも合います。
ブドウの色素による美しい色合いが、桃のピンク、桜のうす紅、梅の移白(うつりじろ)移紅(うつりべに)のように見えるのです。ロゼといえば南フランスのプロヴァンズのイメージが強いようですが、日本の春にもぴったりなのです。
ぜひ、明るい春の日差しのもとで、梅や桃や桜のお花見をするように、美しいロゼワインを楽しんでみてください。
  (協会理事/早坂美都)