【歯科医療情報観測】歯科情報の利活用 および標準化とは何か①/口腔診査情報標準コード仕様 厚労省標準規格に採用

―はじめに
 「標準化」とは「いつ誰が行っても同じ手順で無駄なく作業を行えるか」を示すことである。口腔状態の表現を標準化することにより、診療情報の交換ができるようにするのが目的である。
 東日本大震災(2011年3月)を契機に、歯科所見による身元確認が注目されるようになった。当時は、参照先の電子情報が不統一のために、現場での確認作業がなかなか進まなかった。大規模災害時において身元確認を正確かつ迅速に行うためには、歯科所見と情報技術の連携が必要となる。
 厚生労働省医政局歯科保健課事業の一つとして、かねてより歯科所見の標準化について議論されてきた。2021年3月26日に、厚生労働省が保健医療分野の適切な情報化を進めることを目的に制定している「口腔診査情報標準コード仕様」が「厚生労働省標準規格」に採用された。
 「口腔診査情報コード仕様」とは何なのか。その背景と経過には何かあるのか。それでは「医療情報」「標準化」の視点で今までの歯科治療を振りかえってみよう。

①オーダリングシステム(※1)の必要性が低かった。口頭指示で十分な施設規模および指示内容である。
②自己完結型の診療が多かった。自院内でほとんどの症例に対応できていた。
③診療録、レセプトは診療報酬請求のためだけで、情報の二次利用は行われていなかった。
④問診、インフォームドコンセントは口頭で済んでいた。

 これらに対し、現代の歯科医療は、以下の視点が重視される。

①他職種連携が一般的になり、確実で正確な情報連携、指示伝達が求められる。
②地域医療連携。介護や行政など他の機関と協働する地域医療連携が求められる。
③同意書、交付文書。患者自身が情報に触れて自己決定する時代。
④エビデンスに基づいた治療。EBM(※2)が求められる。

 今後、カルテ・レセプトの利活用に関する動きなどを見ると、医療界で共通言語を構築しなければならない時代となっていく可能性もある。
 このような歯科医療の変革の中で、「標準化」という概念が生まれた。次号では、標準化のために最初に行われたことについて述べていきたい。

※1 オーダリングシステム
 医師や看護師が行う検査や処方などの指示(オーダー)を電子的に管理する医療情報システム
※2 イービーエム(EBM)
 「Evidence-Based Medicine」の頭文字をとったもので、「(科学的)根拠に基づいた医療」と訳されている。ここでいう(科学的)根拠(=エビデンス)とは、これまでに行われてきた医療に対する研究成果を指す。

協会理事/広報・ホームページ部長 早坂 美都

(東京歯科保険医新聞2021年5月号3面掲載)