未収金回収の法的措置支払督促と少額訴訟

№271:2011.12.1:498号

質問1

自費治療代金を支払ってもらえず催告しても応じてくれない患者がいる。法的措置を考えているがどのような方法が良いか。

一番、簡易に行えるのが「支払督促」と呼ばれるものです。この制度は、裁判所から債務者である患者に、金銭の支払を命じる督促状を送ってもらう制度です。申立は患者の住所地を管轄する簡易裁判所に行います。郵送でも構いませんので、裁判所に出頭せず行うことが可能です。患者には、裁判所から督促状が送られて来るので、心理的プレッシャーを与えることで支払いの可能性を高めることができます。督促状を受け取った患者から異議がなければ、早くて1ヶ月あまりで強制執行手続ができるようになるものです。支払督促の良い点は、請求金額に上限はなく、申立書に記載した理由に問題がなければ、支払督促を発令してくれることです。

質問2

少額訴訟制度というのを聞いたことがあるが、どのような制度か。

60万円以下の金銭支払に関する訴訟が対象となり、弁護士を立てることなく、自分自身で簡単に訴訟を行うことができます。原則として一回の審理で双方の口頭弁論を行い、その日のうちに判決が下されます。訴訟は患者の住所地を管轄する簡易裁判所で行います。裁判所内に定型の用紙が用意されているので、その用紙を利用して訴状を作成するのが一番簡単な方法です。裁判所は、訴状を受理すると、審理の日時を決定し、口頭弁論の期日の呼出状を双方に送ります。さらに、患者には自分の言い分や反論を表明する「答弁書」を提出するように依頼します。「答弁書」が裁判所へ提出されると、その写しが先生に送付されます。あとは、口頭弁論の期日まで、自分に有利な証拠などを揃えて待つことになります。判決で先生の訴えが認められれば、必ず仮執行宣言が付くので、患者には支払義務が正式に発生します。それに従わない場合には、強制執行が可能です。

質問3

支払督促、少額訴訟にデメリットはないか。

支払督促、少額訴訟ともに、原告が利用しやすい制度であることから、被告の権利をある程度保護する規定があります。それは、原告の希望に関わらず被告の判断で、通常訴訟に移行することができるというものです。通常訴訟となると、数回にわたり審議が行われることになります。当然、裁判所へ通う回数や時間等も増えます。場合によっては、弁護士を立てる必要もあります。これらを総合的に考え、請求の内容に間違いがなく、異議申し立てをされる可能性が少ないものについて、その利用を選択することが望ましいといえます。「治療に納得していない」「金額が違う」など、患者と争いになっている場合は、予め通常訴訟になる可能性を前提にしながら進めることが大切です。