東日本大震災に伴う就業条件変更や見舞金等と税務

№264:2011.5.1:490号

質問1

東日本大震災後の患者減もあり、時給制のアルバイト従業員の勤務日数をこれまでの週4日から週2日に変更したい。法的問題はないか。

週4日勤務という労働条件を2日に変更する場合、労働時間が減少しますのでおのずと賃金額も減少します。このほか、年次有給休暇の付与日数も減少するなど、労働者側にとってかなりの不利益が生じます。こうした労働条件の不利益変更では、労使双方がきちんと合意しなければなりません。合意は口頭でも特に問題はありませんが、後々のトラブルを防ぐためにも合意書を取り交わしたほうがよいでしょう。

質問2

震災後、医院経営が思わしくないので、今年の夏の賞与について支給を見合わせたいと考えているが問題ないか。今春に採用したばかりの従業員の求人広告には、「賞与は年2回(夏・冬)」と記載したので、従業員から「約束が違う」と言われると考えられるのだが。

賞与の支給要件は労働契約書や就業規則で事業主(診療所)側が規定するものです。したがって労働契約書や就業規則で漠然と「賞与/年2回/7月・12月」といった記載をしていた場合は、支払う義務があるといえるでしょう。したがって、業績や勤務態度によって調整できるように「業績の著しい低下その他のやむを得ない事由がある場合には、支給しないことがある」といった“但し書き”を設けておくことが必要です。もし、そうした記載がない場合は、早い時期に就業規則などを改定することをお勧めします。

質問3

震災で診療所の建物にひびが入ったので修繕工事を行った。その工事費用は税務上、経費扱いになるか。また、これを機会に被災していない設備も補強工事を行いたいと考えている。この場合の工事費用はどうか。

建物などの資産が被災したことにより被災前の効用を維持するために行った工事の費用は、修繕費と考えられるので経費に計上できます(被災した資産の評価損を計上した場合を除きます)。一方、被災していない診療所の資産について耐震性を高める工事を行った場合は、その資産の使用可能期間の延長や価額の増加をもたらすため資本的支出に該当し、その工事金額は新たな減価償却資産の取得価額となります。

質問4

従業員の父母の家屋が被災したので、一定の見舞金を支給した。この見舞金は給与として源泉徴収等を行う必要があるか。

災害等の見舞金や香典などについては、その金額が社会通念上相当と認められるものであれば、課税の対象とはなりませんし、労働法上の「賃金」にも該当しないため労働保険や社会保険料の算定対象にも含まれません。また、源泉徴収を行う必要もありません。