東日本大震災を契機に生じた賃金問題

№263:2011.4.1:489号

質問1

2011年3月11日に東日本大震災が起きたが、その日は万一に備え、診療時間終了前に従業員を帰宅させた。このような場合、従業員の賃金の取扱いはどうすべきいか。

従業員が本来働く時間より早く就業を終了させた場合、その事情が医院の判断による終了であった時は、休業手当を支払う必要が出てきます。大地震という天災によって従業員を早く帰宅させたとのことですが、医院の設備等に直接的な被害があって、一切の診療ができないような事情でない限り、医院の都合による休業とみなされます。休業手当は、賃金と同じ扱いになりますので、通常の給与と一緒に支払うことになります。休業手当の金額は、地震前の労働時間分の賃金と合わせ、平均賃金の6割以上となればよいことになります。

一方、従業員から「家族が心配なので早退したい」といったような事情で帰宅した場合は、退勤以降の時間は賃金の支払いの対象外となります。

質問2

当院では地震のあと、交通機関が麻痺したこともあり、診療はしなかったが、従業員には夜まで診療所に待機してもらい、余震が落ち着いてから帰宅させた。このような場合、待機していた時間帯の賃金はどのような扱いとなるか。

待機していた時間帯になんらかの業務(清掃等の軽微なものも含む)をさせていた場合は、通常通り賃金の支払い対象となります。しかし、単に待機場所の提供にとどめた場合は、賃金の支払い対象とならないと考えられます。

質問3

地震後の日に交通機関が運休となってしまい、勤務しない日があったが、このような場合の給料の扱いは。

通勤が困難な状況を考慮して従業員に自宅待機を命じた場合は、休業手当として平均賃金の6割以上を支払う必要があります。しかし、従業員側から出勤できないので休みたい、といったような申し出があった場合は休業手当の支払い対象となりません。この場合、欠勤の扱いとするか、有給休暇の扱いとするかはお互いがあらかじめきちんと合意したほうがよいでしょう。

質問4

震災後に行われた計画停電のため、休診せざるをえなかった。この場合の賃金の取扱いは。

計画停電の時間帯を休診とする場合は、休業手当の支払対象となりません。しかし、停電の時間帯以外の時間帯の休診については、休業手当の支払い対象となります。

※前記4題の質疑回答はあくまで一般的なものであり、実際の取扱いは個々の事例によります。ご不明な点は、協会経営・税務部、もしくはお近くの労働基準監督署でご確認ください。