知っておきたい雇用のルール①傷病手当金と所得補償保険の活用/機関紙2015年6月1日号(№543号)より

知っておきたい雇用のルール①傷病手当金と所得補償保険の活用/機関紙2015年6月1日号(№543号)より

 

質問① 当院は個人立で、最近常勤の従業員が五人に増えた。知人から「常勤が五人以上になったら社保に加入しなければいけない」という話を聞いた。具体的にはどういうことか。

回答① 個人立の場合、常勤従業員が5人以上となった場合、法令上、社会保険(健康保険と厚生年金保険)に加入させることとされています。また、医療法人の場合、従業員の人数に関わらず、理事長である先生も含め社保に加入するとされています。保険料は賃金の約27.4%相当額で、これを医療機関と従業員で折半します。このため、従業員の中には加入を嫌がる方もいます。単に「法律で決まっているから」という観点ではなく、例えば、厚生年金の加入で老後や障害を負った際の公的年金が増えるなどのメリットを説明し、理解を得られるよう努めてください。

 

質問② 健康保険(社保)に加入した場合、何がメリットなのか?(前問の続き) 

回答② 健康保険は国民健康保険(国保)との大きな違いとして、傷病手当金という給付があります。この給付は、従業員が業務外の病気やけがのために仕事を休んだ日が連続して3日以上あり、4日目以降の休業日に賃金の支払いがなかった場合に給付されるものです。給付額は賃金の2/3相当額で、支給期間は最長で1年6カ月です。また、健康保険の被保険者の保険料支払い期間が1年以上継続している場合、退職後も引き続き傷病手当金が受給できる場合もあるので、メリットは大きいといわれています。また、健康保険には出産手当金という給付もあります。出産予定日前42日(多胎妊娠の場合98日)、および出産後56日のいわゆる産前産後休業の期間については、賃金の支払いがなくても法令上問題ありませんが、出産手当金を受給してもらい、生活保障をすることができます。なお、その給付額は賃金の2/3相当額です。

 

質問③ 当院は個人立で常勤従業員が4人のため、健康保険に加入せず、国保に加入してもらっている。健康保険の傷病手当金に相当するような制度はないか。

回答③ 協会では「第2休業保障制度」(団体所得補償保険)という制度があります。これは加入者(先生や従業員が対象)が病気やケガで免責期間を超えて休業した場合に1年(原則)を限度に給付が出るものです。労働基準法上、業務外の病気やケガで休んだ場合、賃金の支払いがなくても問題はありません。しかし、こうした制度を活用することで、賃金の代わりに給付金を支払い、従業員の生活を保障することができます。たとえば、25歳~29歳までの歯科衛生士の場合、1口当たりの月額保険料は1000円で、月額補償は9万1000円となっています。また、医療機関が従業員全員をこの制度に加入させ、保険料を負担した場合は福利厚生費として経費処理ができる場合があります。ぜひ、顧問税理士ともご相談の上、ご検討ください。所定の給付要件など制度の詳細については協会までお気軽にお問合せください(TEL 03―3205―2999/経営管理部)。