「試用期間中の社会保険の扱い/本採用見送りの場合の対応は」/機関紙2014年5月1日(529号5面)より

四月に、いわゆるフルタイムの従業員を雇用した。試用期間を三ヶ月としているが、その期間は社会保険や労働保険に加入させなくてもよいか?

たとえ試用期間であっても、フルタイムの場合は社会保険、労働保険のいずれも加入が義務となります。ちなみに、雇用保険は週の所定労働時間が20時間以上の場合に被保険者となりますので、フルタイムのほかパートタイムの方でも加入となるケースもあります。


試用期間の間は残業代の対象外とした場合、問題があるだろうか?

試用期間中に法定労働時間を超える労働をした場合、残業代(2割5分以上の割増賃金)が発生します。なお、法定労働時間とは1日で8時間、1週間で40時間(従業員9人以下の歯科医院では44時間)とされています(いずれも休憩時間を除外して計算)。


3ヶ月の試用期間中に、有給休暇を与える必要はあるか?

有給休暇は、雇い入れ後6ヶ月を経過した時点で出勤日数が所定労働日の8割以上出勤した場合に与えることになります。雇い入れ6ヶ月未満で労災以外の傷病により出勤できなかったような場合、その日の賃金を支払わないことは差し支えありません。


3ヶ月の試用期間を設けているが、どうもこの従業員は当院には向かないようである。試用期間中であれば解雇しても問題ないか?

試用期間中であっても、雇い入れ後14日以上経過した場合は即時解雇ができません。通常の解雇と同様、30日以上前に解雇予告をするか、30日分以上の賃金(解雇予告手当)の支払いが必要です。また、雇い入れの期間にかかわらず、合理的な理由がなく、社会通念上、相当と認められない場合は解雇が無効となります(労働契約法第16条)。もっとも、一方的に雇用関係を解消する解雇という形ではなく、労使双方での話し合いも重要です。すなわち、医院の業務に向いていない点などを説明し、双方が合意して雇用関係を円満に解消する退職という形をとることが望ましいのではないでしょうか。


試用期間終了をもって本採用の見送り(解雇)をする場合、または従業員が辞める旨の申し出があった場合はどのような注意点があるか?

本採用を見送る(解雇する)場合は、正当な理由が必要です。例えば、業務上のミスや勤務態度の問題(無断欠勤、遅刻など)といった具体的な理由をあげ、事業主側としても再三注意したものの改善の見込みがないことなどを書面にして本人に通知するべきです。具体的には、試用期間が3ヶ月の場合、最初の2ヶ月が経過した時点で解雇理由を書面に記載し、1ヶ月後の試用期間満了を持って解雇する旨を通告するという方法が考えられます。また、従業員から退職の申し出があった場合、従業員側から退職願を提出してもらうことが必要です。