医療や社会保障制度を含め経産省若手が公式資料作成

医療や社会保障制度を含め経産省若手が公式資料作成

経済産業省の課長補佐等の若手と事務次官で構成する「次官・若手プロジェクト」は、このほど、同省の基幹審議会「産業構造審議会」に公式資料として「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」を提出した。その内容が業界、財界のみならず、医療、福祉、社会保障関係者の間でも注目されている。

この資料に対する意見はさまざまであるが、こと社会保障制度に関しては、若手世代か高齢者世代かといった議論よりも、国民が納得する形で、今後の社会保障費を客観的で冷静に試算し、その財源をどう工面し工夫するか、税制問題をどうするかなどが必要なのではないか。

◆人生100年型社会の医療費引合いに

この資料では、これまでに政府が策定してきた諸制度について、昭和の標準モデルを前提に作られているとし、「今後は、人生100年、二毛作三毛作が当りまえ」と指摘。さらに「手厚い年金や医療も、必ずしも高齢者を幸せにしていない」としている。

さらに日本の健康、医療、福祉について2016年までの資料をもとに各国の健康寿命を提示し、日本は74.9歳で、英国71.4歳、ドイツ71.3歳、米国69.1歳を抜いていることを紹介し、「健康に過ごせる老後は、どんどん伸びている」と強調している。しかし、この健康寿命による「長生きした後」については、「人生最後の1カ月に莫大な費用をかけてありとあらゆる延命治療が行われる」点に関しては、国民医療費の約2割が80歳以上の医療費であり、その多くが入院医療費であると指摘。「現状では病院以外で最後を迎えるという選択肢はほとんどない」とした上で、「終末期の自分」の選択を迫る。そしてそこで、米国の現状を引き合いに出し、「米国では、本人の意向を踏まえたケア提供により病院で亡くなる人が減少」と付言している。

◆日本の社会保障費に着目

一方、社会保障制度について、「際限なく医療・介護・年金等にどんどん富をつぎ込むことに、日本の社会はいつまで耐えられるのだろうか」とし、フローチャート上で「社会保障費はシーリング外の“当然増”経費」と念を押した上で、“古い価値観と固着化した輝かしい制度の束をどう変えていくか”と前置きし、以下のように図示している。

  • 医療保険↔死ぬまで最高水準の医療を本人の希望にかかわらず誰にでも・・・→延命治療は本人の意思に応じて
  • 年金・介護保険↔高齢者は国/現役世代に支えられるもの・・・→子どもや教育に最優先で成長投資

◆新たな社会保障増を試作

これらの検討の上に立ち、「一律に年齢で“高齢者=弱者”とみなす社会保障をやめ、働ける限り貢献する社会へ」移行する必要性を示唆し、社会保障制度は、年齢による一律の区分を廃止し、個人の意欲や健康状態、経済状態等に応じた負担と給付を行う制度にしてはどうかと提言している。