きき酒 いい酒 いい酒肴⑩ロマネ・コンティの隣~グランドリユ

きき酒 いい酒 いい酒肴⑩

ロマネ・コンティの隣~グランドリユ

ロマネ・コンティというワインの名前を聞いたことがあると思います。ばらつきはありますが、一本100万円くらいする高級ワインです。ヴィンテージ(製造年)によっては、もっと高いものもあります。実は、ロマネ・コンティとは、畑の名前なのです。フランスブルゴーニュ地方のコートドニュイ地区にある、ヴォーヌ・ロマネ村のロマネ・コンティという特級畑からとれたブドウのみを使ったワインなのです。
名前は聞いたことあるけれど、飲んだことはない…大部分の方がそうだと思います。個人ではなかなか難しいので、ロマネ・コンティを飲む会を年に1度ほど、時期を決めて開催しているレストランがあります。味見してみたい、という場合は、1人10万~20万円くらいで、ロマネ・コンティとその仲間のようなワイン(ラターシュ、エシェゾー、モンラッシュなど)を7~9種類くらい飲むことができます。
ブルゴーニュのワインというのは、抜栓してから時間とともに、味わいが変わっていくのも特徴ですが、その変化を味わうのは、試飲会ではなかなか難しい。かといって、1人で1本なんて、とてもとても…。と思っていましたが、お隣の畑だったら、なんとか手が届きそうです。ロマネ村の地図を見ると、ロマネ・コンティとラターシュ(ここも特級畑です)に挟まれた「グランドリュ」というブドウ畑があります。ここのワインは、醸造家の名前をとって「ラマルシュ」といいます。ロマネ・コンティとの距離はあぜ道一本、約7mです。それは広大な畑の中のたった7mにすぎず、土地全体はつながっているのだから、そんなに変わらないでしょう、と勝手に思い、ラマルシュを購入し、自宅で開けてみました。
しかし、これは素人の考えで、ブルゴーニュの醸造家アンリ・ジェイエは、グランドリュについて次のように語っています。
…このクリマ(畑、区画)は、小さな道を挟んでロマネ・コンティに隣接している。しかし、この道は偶然に敷かれたものではなく、そこを境として地形学的に大きな違いがある…。

早坂先生3月号写真:ロマネ・コンティIMG_20140330_220919

 

 

 

 

 

 

 

確かに、地層の断面図を見ると、ジュラ紀における粘土石灰岩の表層の出方が違います。
細かいことをいい出すときりがないので、とにかくラマルシュを抜栓しました。抜栓直後、ものすごくいい香りがします。これは期待できる、と一口飲んでみましたが、なんだか、薄い?どうしたのだろう、と思いました。しかし、その40分くらいあと、不思議なことに、香りが変わってきたのです。香りのピークを2時間半の間に2回ほど感じられました。色は明るいガーネットのようで、少し酸味があって、ラズベリーのような芳香、喉こしは滑らかで、あまり渋みがなく…。言葉にするのは難しいですね。妖艶なワインは不思議と、香り、味を時間とともに変えていきました。これがブルゴーニュの魅力なのでしょう。
(早坂美都/通信員/ 世田谷区)