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白日夢~はくじつむ~

白 日 夢

2009年日本/ 原作:谷崎潤一郎

愛染恭子・いまおかしんじ監督

 

シネパトス

「電話が鳴っていますよ」

「はい、調布ヶ丘5丁目交番です」

「5丁目で空き巣被害だ」

 映画は、ぼーっとした若い妄想・空想癖の警察官が、同僚に注意されて、受話器を取るところから始まります。

 タイトルの「白日夢(はくじつむ)」は白昼夢、デイドリームともいわれ、目覚めている時に見る空想や妄想。現実から離れて何かをぼんやり考えている状態をさしています。

 精神分析入門でフロイトは白日夢は健康な人にも,病気の人にも見られる現象で、多くは思春期前期から成年期まで続き、大抵の人は、その後はなくなってしまう。これらの空想の内容は利己的な欲求、野心、権力欲あるいは性愛的な願望で、若い人々では野心が一番多く、女性のように自己の野心を恋の成就にかけている人々では、性愛的な空想が多くなり、男性での英雄的な行為やさまざまな成功願望はすべて女性の賛嘆と好意を求めるためだ、と述べています。

  1926年に谷崎潤一郎は歯科医院を舞台にした戯曲「白日夢」をつくりました。歯科医院で女性と並んで治療を受けた青年の意識内に潜む潜在欲望を描きました。

 麻酔の注射を打たれ、感覚が麻痺して行く中で、先生と隣りの女性患者の光景を見てしまいます。青年は妄想にかられ、女性患者を刺し殺してしまいます。

 「白日夢」は、1964年、81年、87年、さらに2009年に映像化されています。ここで紹介するのは2009年版のもので、谷崎潤一郎の原作をベースに、夢と現実の境を行き来する空想癖の青年警察官の白日夢を映像化しました。

「以前にどこかでお会いしたことが」

「ありましたっけ?」

「たぶんないと思います」

 実際に起きたことは、歯科衛生士から空き巣の被害届けを受けたこと、歯の治療に歯科医院に通っていることだけです。後はすべて警察官患者の空想が作り出した出来事です。

 先生と衛生士の間柄は。

 先生の奥さんはこのことを知っているのか。

 衛生士はこの奥さんから先生を奪おうとしているのではないか。

 彼女は奥さんを殺したいのかもしれない…。

と、治療台から周りを見ながら、空想の世界に囚われています。

「型どりをします」

「大きな口を開けてください」

 つじつまの合わない映像の連鎖、突然の飛躍など空想の映像化を試みている映画です。

 人間にはふたつの自分があって、一つは自分でも知っている自分だが、意識下に隠れていて、自分が知らない自分もある。この自分が自分を離れて動き出すと手がつけられなくなります。

 谷崎潤一郎は歯が悪く、何度も歯科医院に通ったのかもしれません。

シネパトス通路CF2487

※写真上は、2009年にこの映画を上映した銀座の旧三原橋にある「銀座シネパトス」の外観。同館は今月末をもって1967年の開館以来46年の歴史に幕を閉じる(写真下)。

(協会理事 竹田正史)