政策委員長談話 「今こそ、診療報酬のプラス改定を求める」

政策委員長談話

今こそ、診療報酬のプラス改定を求める

安保国会が終わったことで、安倍内閣は経済に注力する。アメリカの利上げ・中国経済の不透明感・新興国の景気低迷が国内に及ぼす影響を避けるため、補正予算や2016年度予算で国内景気の維持を図ることが推測される。補正予算は3~4兆円、2016年度予算は100兆円に迫る規模との報道がされている。

このような中、日経新聞は社説(9月1日付朝刊)で「医療費を含む社会保障費に思い切ってメスを入れなければ、予算の膨張は止められない」「そのためにも政府は診療報酬をマイナス改定とする選択肢を真剣に探るべきだ」と述べ、経済立て直しに向けた診療報酬のマイナス改定を提起した。1000兆円を超える国の債務が積み重なる中、その原因を社会保障費の増大に求める意見である。安倍内閣登場後、「アベノミクス」による第2の矢として地方創生や国土強靭化の名で財政出動し、関連予算は10%以上増大している。また、防衛省予算、国債利子の支払いも増え続けており、債務の増加の原因は社会保障費だけではないことは明らかである。そもそも2014年4月の消費税率引き上げは、社会保障費の増加に対する手当との理屈であった。日経の社説はその前提を無視する発言であり、社会保障費削減の政財界の意向を後押しするものだ。

2014年4月の診療報酬改定は、歯科で0.99%の引き上げとされたが、そのほとんどは消費税率の引き上げに対応するものであり、実質マイナス改定であった。手当てされた対応分では賄いきれず結果、損税の拡大に繋がり、経営の改善に繋がるものとはなっていない。一方、安保法案の終盤に2017年度からの消費税率10%への引き上げに伴う軽減税率の報道がされた。なぜこの時期なのか、マイナンバーを用いた還付方式そのものに疑問の声が強まった。増税される2%分は社会保障の充実に使うとの当初の説明である。麻生財務大臣の答弁はそれを無視するかのようにプライマリーバランスのため、国民に負担を求めることに終始した。このままでは社会保障充実を名目に税率が際限なく引き上げられてしまう。

協会が5月に行ったアンケート調査の歯科医業経営への質問に、以前と比べ「苦しくなった」との回答は53.3%と過半数を超え、また、収入も前年に比べ「減収した」が44.8%「変わらない」が30.5%となっており、東京の歯科診療所の経営が厳しいことが改めて明らかとなった。

東京の多くの歯科診療所は、不安定な経営基盤の中、患者さんのため安心・安全な歯科医療提供体制を何とか維持している。しかしマイナス改定では経営基盤がますます不安定となり、廃業する歯科診療所が増加し、必要な歯科医療の提供にも支障が生じることは明白である。

協会では、マイナス改定の動きに抗議するとともに、「診療報酬のプラス改定を求める歯科医師要請署名」に取り組み、2016年度診療報酬改定での基本技術料の大幅な引き上げを求めていく。

2015年9月25日

東京歯科保険医協会

政策委員長 中川勝洋