消費税増税で歯科医療はどうなる③ 完

消費税増税で歯科医療はどうなる③ 完

「診療報酬で手当てされている…?~ホントかウソか~」

「社会保障・税一体改革大綱について」の中で、「消費税率の引上げを踏まえ検討すべき事項」として4点があり、医療機関の消費税損税については、「診療報酬等の医療保険制度において手当する」こととされた。これに沿って、中医協の中に「医療機関等における消費税負担に関する分科会」が設置され、昨年6月より開催されている。このうち昨年7月の第2回分科会には、1989年と1997年当時の診療報酬点数と2012年のそれとを比較した興味深い資料が配布された。

◆歯科診療報酬への消費税上乗せ分その後

これを見ると、確かに1989年にも97年にも点数が上乗せされているが、それは十数項目であり、しかもその後の改定で措置されたかはまったく分からなくなってしまった。例えば、印象採得(欠損補綴、連合印象)が、89年改定で165点(プラス5点)とされ、12年改定では228点とされたが、このうち消費税分が何点かは、今となっては分らない。89年のときのプラス5点が消費税分と考えた場合、20年以上前に手当てした点数で十分だと誰がいえるのか。根管充填(単根管)は、97年に68点(プラス1点)となったが、12年改定でも68点のままであり、その他の項目も据え置き、あるいはわずかな引き上げに留まっている。そればかりか、項目自体が削除されたものさえある。

もとより、消費税分を売上に上乗せして消費者に転嫁するかは各事業者に任せられている(転嫁するしないにかかわらず課税対象の財・サービスには消費税が含まれているが)。鉄道運賃の場合、消費税導入時に10㎞までの運賃には上乗せされなかった。診療報酬についていえば、その全項目にわたって上乗せする必要はなく、仕入に係る消費税分を補填しうる点数を算定頻度の高い項目に少し多めに上乗せすれば足りる。しかし、上記の通り消費税分が上乗せされた項目はわずかであり、しかも改定の度ごとに消費税分が上乗せされたわけではなく、消費税導入時からも前回の増税時からも相当の年月が経過していることを考えれば、決して十分とはいえない。むしろ損の部分の方が遙かに大きいことは明らかである。

◆診療報酬引き上げの根拠と消費税

そもそも、診療報酬点数に消費税分を上乗せするというのは、「社会保険診療は非課税」の政策目的に反している。しかも、それによって医療機関の損税は解消できなかった。

診療報酬点数に上乗せするというのは不確実なものであり、医療機関にとって何ら期待できるものでないことを最後に強調しておきたい。