朝日新聞の「指導・監査」めぐる報道に対し「申し入れ書」を提出/指導と監査を混同

朝日新聞の「指導・監査」めぐる報道に対し「申し入れ書」を提出/指導と監査を混同

5月11日(日)朝日新聞1面に「診療報酬 不正請求の疑い/厚労省、半数の調査放棄/対象、8000医療機関」との大見出しの記事が掲載され、さらに2面にはその関連記事として「厚生局 動かぬ監視役/診療報酬 不正請求情報 2年放置/被害拡大招く」との記事が掲載された。この記事掲載について協会では5月19日付で、政策委員会の中川勝洋委員長名による下記内容の「申し入れ書」を朝日新聞社報道局、担当記者あてに提出するとともに、関連メディアに対してもこれを届け、協会としての見解を提示した。

2014519

朝日新聞社 報道局 御中

特別報道部担当記者各位

申し入れ書

511日付朝日新聞に「厚労省、半数の調査放置」の報道がされた。

記事が取り上げている「調査」は、健康保険法73条にある「厚生労働大臣の指導」のことと思われる。同法で保険医に対し指導を受ける義務を課しているものの、それは「保険診療の取扱い、診療報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼」に行われているものであり、決して「不正請求がないか調査する」ことを目的としたものではない。

また、厚生局からの開示情報を受けた「診療報酬を不適切な請求をした疑いのある」とする選定数8000件の内訳は不明だが、その中には、集団的個別指導の対象である、いわゆる「高点数医療機関」が多く含まれている可能性がある。2011年の東京の個別指導件数内訳(実施理由ごとに分類)では「高点数」が50%を占めている。現在、この内訳は「不開示」となっており2012年度は不明であるが、おそらくその内訳は変わらないと思われる。

そもそも集団的個別指導とは前年度の1件当たりの保険点数が平均の1.2倍を超える保険医療機関を行政が一方的に高点数医療機関と位置付け行うもので、翌年度も平均の1.2倍を下回らない場合、個別指導の対象とするものである。診療行為は患者ごとに個別的に行われるものであり、1件当たりの平均保険点数が高いからと言って不正や不当があるとは言えない。患者ごとに受診頻度、年齢、治療内容によって変動するのが当然である。

こうしたことを踏まえると、「診療報酬を不適切に請求した疑いのある医療機関の半数を調査せず見逃していた」との表現には悪意があり、読者に大きな誤解を与えるものとなった。

また記事には「立ち合い」について、「『身内』の医師が介在すれば調査が甘くなる」「有資格者である指導医療官がいれば立会人はいらない」とした。個別指導は大変センシティブな問題であり、行政サイドだけの密室状態では威圧的な雰囲気での運営になる。過去には指導時に恫喝を受けた保険医が自ら命を落とす事例も出ている。立会人は指導の公共性・正当性を担保させる方法の1つである。行政指導である個別指導を警察の取り調べと同一視することは大きな誤りである。正確な調査による報道を行うことを申し入れるものである。

                                               東京歯科保険医協会

政策委員長 中川勝洋