歯科健診で2事業を盛り込む/2018年度厚労省歯科医療関連概算要求案を見る

歯科健診で2事業を盛り込む/2018年度厚労省歯科医療関連概算要求案を見る

厚生労働省は8月25日、「2018年度厚生労働省予算概算要求案」を自民党厚生労働部会で提示し、同31日に正式に公表した。高齢化の進展によって社会保障費の自然増分は6300億円に上っており、一般会計概算要求額は31兆4298億円で過去災害規模となった。これは、対前年度当初予算比2.4%増となっている。また、要求額が30兆円を超えたのは6年連続となっており、今後の財務省とのやり取りが注目される。

今回の概算要求案の中で、特に同省医政局歯科保健課所管の歯科医療関係の要求内容を紹介する。

◆歯科健診めぐり新規政策2事業を要求

「歯科保健医療の充実・強化」の一環として、健康寿命の延伸に向けた歯科口腔保健の推進を図るため、新規施策として①歯科健康診査推進事業:歯科健康診査推進等事業、検査方法等実証事業、②歯科医療機関による歯科口腔保健機能管理等研修事業―の2事業を盛り込んでいる。

◆地域の全歯科疾患患者を受け入れる拠点診療所整備を支援でも新規政策

また、「8020運動・口腔保健推進事業」では、継続事業として①口腔保健推進事業、②8020運動推進特別事業、③歯科口腔保健支援事業―の3事業を引き続き進める。

さらに、「歯科保健サービスの効果実証事業」「医療提供体制施設整備交付金」の2事業も引き続き推進する。後者は新規事業で、“地域拠点歯科診療所施設整備事業”を創設する予定だ。診療に困難を伴う障害者の患者などを含め、地域医療におけるすべての歯科疾患患者の受け入れを可能にする歯科の拠点診療所の施設整備への支援を行うことが柱となっている。

◆歯科医療の情報化をさらに推進の構え

一方、これまで継続している「歯科医療分野の情報化の推進」について、さらにテコ入れを行う。具体的には歯科情報の利活用と標準化推進普及事業として、標準化された歯科情報の普及に向け、歯科情報の利活用に関するモデル事業を行い、その有用性を実証しようというものだ。なお、同省では去る7月19日、「歯科情報の利活用及び標準化普及に関する検討会」を設置し、その初会合を開催しており、同検討会での今後の検討内余が反映される形になる。

◆歯科関連医療従事者の資質向上に向け新規2事業を計画

歯科医療にとって欠かせない歯科技工士。この歯科技工士養成施設に対して厚生労働省歯科保健課は重い腰を上げ、2018年度予算概算要求案の中で「歯科技工士養成施設活性化事業」を新規要求した。これは、歯科技工士養成施設に所属する学生が参画し、歯科技工士養成活性化会議の設置と学生確保推進コーディネーターを配置して、学生確保などの具体的な方策を協議・検証するために必要となる経費について、支援して行こうというもの。また、いま1つの新規政策として「災害派遣医療チーム要請支援事業(歯科分)」の新規要求も行っている。これは、DMATの活動終了後、被災地の医療機能が回復するまでの間の医療支援などを担う民間の医療チームに所属する歯科医師や歯科衛生士などの医療従事者の養成、養成研修に必要な経費を支援しようというもの。なお、新規2事業のほかに継続事業として①歯科衛生士に対する復職支援・離職防止等推進事業、②歯科医療関係者感染症予防講習会、③歯科技工士実習施設指導者等養成講習会、④予防・在宅歯科医療等対応教員養成講習会、⑤歯科補てつ物製作過程等の情報提供推進事業、⑥歯科医療の展開に向けた協議・検証事業―の6事業が、継続要求されている。

◆臨床研修関係

厚生労働省歯科保健課では、2018年度の「歯科医師臨床研修関係費」として継続事業として4事業を引き続き進める。具体的には、①歯科医師臨床研修費、②歯科医師臨床研修指導医講習会、③臨床研修活性化推進特別事業、④臨床研修病院募集情報システム事業経費(歯科分)―の4本となっている。

◆保険局所管事業は2本が柱

厚生労働省の2018年度予算概算要求案の中で、医政局歯科保健課とは別に、保険局内で扱っている歯科保健関連2事業が継続実施されるが、2事業とも大幅増額を要求している。2事業とも高齢者医療課の担当で、概要は、以下の通り。

≪健康寿命の延伸に向けた歯科口腔保健の推進≫

・後期高齢者医療の被保険者に関する歯科健診:後期高齢者医療広域連合が実施する高齢者の特性を踏まえた歯科健診について支援を行うもの。

≪高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進≫

・広域連合で地域の実情に応じて地域包括支援センター、保健センター、歯科診療所などを活用し、課題に応じた専門職、つまり歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士、保健師などが、対応の必要性が高い後期高齢者に対して実施する相談や訪問指導などについて支援を行う。具体的には、①口腔に関する相談・指導、②外出困難者への訪問歯科健診―となっている。

◆歯科医療でのへき地医療確保や安全確保は例年並み要求に

厚生労働省医政局歯科保健課が担当している「へき地歯科医療確保」「歯科医療安全の確保・向上」に関する3事業は、例年並みの規模が概算要求案に盛り込まれている。具体的には、①へき地歯科巡回診療者運営費、②離島歯科診療班派遣運営費、③歯科医療事故情報収集等事業―の3事業となっている。

◆厚労省医政局所管の補助対象事業

一方、歯科保健課が所属する医政局が所管している補助金を用いる事業も、例年並みの2事業が要求されている。具体的には、①医療提供体制推進事業費補助金によるもの:歯科医療安全管理体制推進特別事業、②医療施設等設備整備費補助金によるもの:へき地歯科医療関係の設備整備事業―の2事業となっている。

◆総合確保基金の柱は3本

厚生労働省の2016年度予算概算要求案から開始された「地域医療介護総合確保基金による医療・介護提供体制改革」、いわゆる「基金事業」の規模は2018年度の場合602億4400万円となっており、医政局歯科保健課では3事業を想定し、その実施に見合う財源の確保を目指す。3事業とその具体的な内容は以下の通り。

Ⅰ、病床の機能分化・連携

・地域医療支援病院やがん診療連携拠点病院等の患者に対する歯科保健医療の推進

Ⅱ、在宅医療(歯科・薬局を含む)の推進

・在宅歯科医療の実施に関する拠点・支援体制の整備。

・在宅歯科医療連携質と在宅医療連携拠点や地域包括支援センター等との連携の推進。

・在宅歯科医療を実施するための人材の確保支援など。

Ⅲ、医療従事者等の確保・養成

・医科・歯科連携に資する人材養成のための研修の実施など。