政策委員長談話 「立憲民主主義を否定する安全保障関連法案は廃案とすべき」

政策委員長談話

『立憲民主主義を否定する安全保障関連法案は廃案とすべき』

安全保障関連法案が7月15日、衆議院の安全保障特別委員会強行採決され、翌7月16日に衆議院本会議で与党および次世代の党の賛成で可決された。委員会採決後、安倍晋三首相は「国民に丁寧にわかりやすく説明していきたい」と発言しているが、60日ルールを踏まえた採決強行に対して多くの人が危惧を抱いたと思われる。その後の世論調査を見ると内閣支持率は急低下し40%を割り込み、不支持率は50%を超えている。戦後70年、歴代内閣と国会が積み上げてきた1972年、自民党内閣での「集団的自衛権は認められない」との憲法解釈を2014年に閣議決定で変更し、解釈改憲への道筋をつけたが、その根拠といえば1959年、自衛隊の存在に対する「砂川判決」での「個別的自衛権は現行憲法のもとでも認められる」を拡大解釈するもので、どこにも集団的自衛権の文言は存在しない。このようなご都合主義的な説明に対して多くの憲法学者、元内閣法制局長官がこの法案は「違憲」であり「立憲民主主義」を否定するものとの声をあげている。国民主権を旨とする憲法は、国家権力の乱用を縛るためにあり、憲法に違反する法律を創ることは、民主主義の政治体制を否定することに繋がる。戦後70年を迎え、時代の変化に伴い見直すべきあるいは追加すべき項が存在するとも思われるが、十分な議論を経て国民に判断を求めるべきであり、絶対多数を持った一内閣の解釈で実質的な改憲を行うことは一党独裁と同じである。

わが国を取り巻く安全保障環境は、中国・北朝鮮・ロシアとの関係で大きな問題を抱えていることも事実だが、安倍首相の答弁にある「危機に備える政治の責任」「備えあれば憂いなし」は当然だが「危機の想定は」無限に可能であり、備えの範囲も限りがない。

戦時中に生まれ、戦後の混乱期を体験した者としては、周辺事態に加え重要事態にも対応するためとして行うさまざまな「備」は、昭和初期、欧米列強に対抗するためとして国防費の増大、国民生活予算の削減、国債の増発に突き進んだ歴史からみて、大政翼賛的な今の政治状況が続くとやがて防衛予算の増大、社会保障予算の削減に繋がるおそれがある。

社会保障の一翼を担い、国民の命・健康に寄与する歯科医師としても国民主権の基礎である憲法に反する本法案は廃案とし、国民が納得できる政策論議をすべきである。

2015年7月24日

東京歯科保険医協会政策委員長 中川勝洋